2013-11-20

【SpecialThanks】やっと、けがれのないバンドサウンドにできた

 SpecialThanksの最新作『MOVE ON』が完成! 今の4人のメンバーになってから初めての音源となるミニアルバムに、最新ワンマンライヴから11曲を収録したDVD付き。彼らの現在地が映し出されたポジティブな今作に至るまでをMisaki(Vo&Gu)に訊いた。

──前にお会いしたのはマキシシングル「Campanula e.p.」の時で、メンバーが脱退して3ピースの状態でしたけど、そこからHeisuke さん(Gu)が加入した経緯を教えてもらえますか?

「最初は、いい人が現れれば…ぐらいな感じでまったりしていて、探す行動もしていなかったんですけど、それを見かねてKOGAさん(レーベルオーナー)が募集をかけてくれて。何名か来てくれた中のひとりがHeisukeくんだったんです」

──何かビビビっとくるものがあったのですか?

「最初に喫茶店で会った時は、暗い人かな?って思ったんです。全身黒づくめだったし(笑)。でも、ギターが上手そうな雰囲気があったから、「Campanula e.p.」を渡して、これに好きなアレンジを乗せてきてほしいって課題を出したんです。そうして、あとで送られてきたものを聴いたらすごく気分が高まって、その日に新しい曲が4曲もできたんです。それで、この人だ!って直感で思って、すぐにスタジオに入ろうと。で、やっぱりいいなって思って、決定しました。」

──それくらい刺激を与えてくれるアレンジだったと。

「そうなんですよ。もっと曲を作りたい! この人が入ればカッコ良い曲ができる!って思った。」

──音楽的なところから惹かれたみたいですけど、キャラ的にも今は溶け込んでいますか?

「溶け込んでると思います。ドラムのJunpeiくんに似てるよね、って話をしていたんですよ。」

──要するにみんな真面目で一見すると暗いのかな?(笑) 初対面で“ちーっす!”みたいにくる人はダメだったのかもしれないですね。

「そう思います(笑)。」

──『MOVE ON』の収録曲は、今のメンバーになってから作ったものなのですか?

「はい。「Campanula e.p.」のツアーが終わってから曲は作っていなかったんです。ひと息ついたっていうことで、作ろうともしていなかった。でも、Heiちゃんのギターを聴いて、バーって出てきたんですよね」

──Misakiさん的に考えていた方向性はあったのですか?

「3ピースをやってみて、歌のメロディーが活きるなって思ったんです。でも、私では弾けないけど、イメージの中にはあるギターのフレーズがあるから、歌をそのままにして新しいギターを入れたら、もっと楽しめるんじゃないのかなって。」

──歌詞は生々しくなっていると思ったのですが。「After FIVE」なんて、OLもやっているMisakiさんならではだし。

「実際は私は6時上がりですけど(笑)。自分のこともですけど、愛知でバンドやってる先輩方は、仕事を終わらせてライヴをやるのが当たり前で、それを見てカッコ良いなって思って育ってきたんで、そういう思いも込めて書いています。」

──《「夢」を生きる言い訳にだけはしないでよね》(和訳)って歌詞があるじゃないですか。それはMisakiさん自身が、言い訳せずに生きているからこそ歌えるんじゃないですか?

「うーん、そうなれてるといいですけど…何かに気付いてほしいっていう思い? バンドだけをやってるのが逃げとかではないし、私が働きながらバンドをやってるのが偉いっていうのじゃないんですけど、そういう考えの人がもしいるならやめてほしいなって。聴けば、本人は分かると思うんですよ。」

──バンドに限らず言えることですよね、これって。

「そう。簡単に言うと、楽な道を選ばないでねって。」

──さらに「Getting On」には、《老後》とか《白寿》っていう言葉も出てきて、驚かされました。

「それはリアルに私が考えていることに一番近いです。」

──まだ若いのに!

「歌詞の中にもありますけど《今の私は一度きりの使いきり》ってことを、よく思うんです。そうすると、老後のほうに考えがつながっていくんですよ(笑)。」

──こうやって、必ずドキッとさせる歌詞を織り交ぜていますよね。曲自体はポップなのに。

「歌詞を読んでほしい気持ちはあります、すごく。ギャップは大事にしていますね。暗い歌詞には明るいメロディーっていう。」

──でも、雲を掴むような夢を持たずに、楽しい老後のために現実的になるって、すごく世代感が出ていると思います。

「あぁ、そうなんですよ。今はちょっと辛い思いをしても、若いからみじめに見えないじゃないですか。でも、老後にお金も仕事もなかったら、本当に辛いなって考えちゃって。だから、若いうちに頑張っておこうって(笑)。」

──かつてのロックやパンクの思想だと、若さが全てだったり、実際に若くして亡くなった人も多いけれども…。

「でも、そういう考え方になれたらカッコ良いと思いますよ。20代で死ぬとか、大暴れするとか、バンドだけやるとか。でも、なれない自分はいます。ついつい真面目に考えてしまう。」

──なるほどね。そうして前半は歌詞でも曲でも飛ばしつつ、後半はじっくりと聴かせる流れになっていますね。

「4曲目の「OVER AGAIN」は完成した時に泣きました。いい曲だなぁって思って、感動して(笑)。昔からひとりで作る曲は静かな曲が多いんですけど、でもそれをバンドで上手く再現できなくて。自分で言うのもなんですけど、家で弾き語りで作るといい曲ばっかりなんですけど、バンドにしちゃうと崩れることが多かったんです。上手く表現しきれなくって。でも、やっと今のメンバーで、生まれたまま、けがれのないままでバンドサウンドにできたんです。それで、より感動が高まったっていう。」

──何でできなかったんでしょうね?

「何でですかね? 私もメンバーも若かったんだと思います。」

──じゃあこれからは、生まれたてよりも、さらに輝いた状態にバンドで持っていけるようにしたいですね。

「そう、そうなんです! そうなっていくんだろうなって思えているから、今のメンバーでずっと一緒にやっていきたい!」

取材:高橋美穂

(OKMusic)


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