2013-01-20

【[Champagne]】遠くまで本当の意味で“届く”ような曲が作りたい

 3rdアルバム『Schwarzenegger』のツアーは全カ所完売を達成するなど、活動の規模を拡げ続ける[Champagne]の新曲が完成! 現状に満足せず高みを目ざす彼らの姿勢を体現する今作への思いを川上洋平(Vo&Gu)に語ってもらった。

──今回のシングルを作った当時はどんな状況でしたか?

「曲を作ったのは、2012年の夏前後ですね。2012年って、[Champagne]にとってデビューして3年目だったんですよ。で、お客さんもだんだん増えてきたり、成長したなってなんとなく実感した年でもあったんですよね。そういうことを、とあるフェスでメインステージに出た時にもちょっと実感してたんですけど…。そのフェスの大トリのバンドさんを、お客さんはたぶん朝から夜まで待ち焦がれていて、しかも熱気がすごくて、それを観てたら悔しくて悔しくて。そのバンドさんは、もちろんリスペクトしている人たちなんですけどね。でも、ウチらまだ全然小っちゃいなって。一瞬だけだけど満足しちゃってた自分らに、まだまだこんなんじゃいかんなっていう悔しさがすごくあったんです。」

──前回のツアーは全カ所ソールドアウトしていたり、活動の規模は着実に飛躍していますけど、目指すところはまだまだ、と…。

「そう。(歌詞カードを指差して)例えば、《彷徨って 途方に暮れたって また明日には 新しい方角へ》とかは、まさにその経験が表れてるというか。[Champagne]ってバンドはアホで(笑)、“世界一になりたい”って言い続けていて。それって、最初から負け戦じゃないかって笑われやすい目標ですよね。でも、それが僕は一番カッコ良いと思ってるし、周りからバカにされたり、笑われるようなヤツしか書けないような歌詞になってるんじゃないかなとも思ってるんですよ。要は、C地点っていう目標があれば、B地点は別にどこでもよくて。自分の中の目標にとにかく向かっていけば、いろんなことはあっても明日になれば忘れているからっていう、結構ポジティブな意味で書いたんですけどね。」

──《貫いて 誰に何を言われようとも》とか、《傷付きながら 己の歌刻んでいく》とか。[Champagne]のリアルな心情に重ねられる歌詞であり、同じような心情を抱いているリスナーの背中を押すような歌詞になるんじゃないかとも思います。

「だと嬉しいですけどね。[Champagne]の曲は、どう捉えてもらうかは本当に自由で良いんです。ただ、『For Freedom』とかもそうでしたけど、結局同じようなことを歌い続けてる気はするんですよ。さっき話したような悔しさとかで自分は突き進んでいくんだろうな、それ以外に自分を動かすものってあんまりないんだなって。で、『starrrrrrr』もそうですけど、テーマみたいなものって結局、“夢”というか。“夢を叶えようよ”なんて言うと恥ずかしくなっちゃいますけど、それをどうカッコ良く、良い感じで伝えられるかを考えるとこういうスタイルになるんです。」

──今のお話での、今回の曲を作るきっかけになった経験から、サウンド面ではどんな表現を模索されたのでしょう?

「簡単に言うと、リズムがかなり変わりました。4つ打ちで、リズムパターンが分かりやすくなりましたね。[Champagne]は、ライヴハウスクラスのハコは絶対の自信があったんです。でも、野外フェスとかで遠くのほうで観ている人たちには、リズムパターンが複雑すぎるから伝わりにくいんですよね。そこへどれだけ届かせるかってことを考えると、リズムパターンはシンプルなほうが良いなって。それと同時に、これも僕たちがずっと自信を持ってきた“メロディー”の部分をもっと前面に押し出そう、と。もっともっと遠くの人たちに本当の意味で“届く”ような曲が作りたくて、メロディーをまず一番に聴かせようって考えてました。」

──よりメロディーの魅力を押し出したっていうところでは、「涙がこぼれそう」も“まさに”ですよね。ギターはかなりラウドに鳴っていながら、メロディーがとにかくグッときます。

「ありがとうございます! 『涙がこぼれそう』の音は、かなりグランジィな感じですね。『starrrrrrr』はテレキャスターなんですけど、こっちはジャズマスターを初めて使って。『涙がこぼれそう』は曲も歌詞も結構かわいい感じなんで、音はちょっとワルくいこうということでいろいろ悩んで(笑)、グランジの伝家の宝刀“ジャズマス”を試した瞬間に“これしかないな!”と。あのジャキッ!とか、ガーッ!って音が良いんですよね!」

──“伝わりやすさ”をより意識しつつ、そういうアイデアをふんだんに盛り込んでいるのも[Champagne]らしいと思います。

「たぶん、天の邪鬼なんですよ。普通のバンドだとだいたいリズムパターンが1個で続いて、曲が3分半ぐらいで終わるところを、[Champagne]は1曲の中で飽きないようにするにはどうするかを考えるから、詰め込みすぎちゃうんです(笑)。途中で急にジャズとか、メタルとか、変なリズムパターンを入れたり。そういう天の邪鬼的な部分は失わないで、より遠くまで届く音楽を作って、自分たちの“殻”を大きくしていきたいですね。」

──そういう仕掛け的な部分だと、「starrrrrrr」はイントロも面白いですよね。SEから、鋭いギターへの展開が。

「炭酸ですね、あのSEは。今回はGEROCKのゲロルシュタイナーというドイツ産天然炭酸水とのコラボなんで、炭酸水の音を入れてくださいっていうテーマがあって。で、イントロは、あの“サーッ!”っていう炭酸の音からアコギが寂しく入ってくるイメージが頭の中にあったので、炭酸水を“5人目のメンバー”ってぐらいの勢いで迎え入れました(笑)。あと、イントロのギターはギブソンのすっごい古いアコギを使っていてめっちゃ気合い入ったんですけど…。そのギターを録る時に、ローディーさんが小指の爪ぐらいの大きさのピックを持ってきたんですよ。もう製造されてないピックらしくて“大事に使ってね!”って言われたんですけど、めっちゃ細くて固くて、全然弾けなくて。でも、録ってみたら全っ然音が違うんですよ! なんで、一生懸命弾いたら、日本にもう数枚しかないピックの2本を割ってしまいました(笑)。」

──気合いの入った音色、ぜひ聴いてもらいたいですね!(笑)

取材:道明利友

(OKMusic)


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