2012-06-20

【小林太郎】自分に与えられたものを素直に出すことが一番大事

 “里程標”という本来の意味の他に、“重要な時点”という意味も持つ言葉をタイトルに掲げた作品で小林太郎がメジャー進出を果たす。分岐点であり、スタート地点でもある本作が、どんな想いを持って作り上げられたのかに肉迫!

───新レーベル“STANDING THERE, ROCKS”の第一弾アーティストとして1st EP『MILESTONE』でメジャーデビューを果たすわけですが、ソロ活動の後にバンド体制となって、今回再びソロという。なぜソロでやろうと?

高校でバンドをやり始めたのが人前で音楽をやるようになった一番最初なんで、俺の中ではバンド、ソロ、バンド、ソロっていう感じなんですよ。でも、ずっと悩みつつやってたところがあったんですね。漠然となんですけど、“いいものを作らないといけない”って。その“いいもの”を作るための方法としてソロがいいのか、バンドがいいのか分からなくて、その答えが見えないままソロもバンドもがむしゃらにやってたんです。ただ、ありがたいことにいろんなことが経験できたんで、自分と向き合って“なぜ音楽を作るのか?”ということに答えを出したいと思った…それが1年ぐらい前ですかね。そこで何がきっかけっていうわけじゃないですけど、“いい音楽は誰にでも作れる”って思えた…そもそもロックは誰でもできるものだし、何かを意識してやるものでもないなって。一番は“いいものを作る”じゃなくて、自分がもともと持っているものを出すだけだなと。

──そもそも太郎くんの考える“いいもの”というのは?

それをずーっと考えてたんですよね。“いいもの”が何なのか分かってなかったし、そのために何をしないといけないのか分かっていなかった。音楽というものをデカく解釈しすぎていたというか…それで自分も迷っていたわけだし。でも、“自分を表現すればいいじゃないか”ってことに辿り付いたから、今は“強い音楽”を作りたいなって。自分の努力で培ったものじゃなくて、“いい声だね”や“メロディーがいいね”と言ってもらえる才能っていうのは与えられたもののような気がするし、自分だけに与えられた自分なりの才能があると思っているので、それをそのままいろんな人に聴いてもらう…そこで好き嫌いがあるのは当然ですけど、自分に与えられたものを素直に出すことが一番大事で、それが漠然と考えていた“いい音楽”であって、今考えている“強い音楽”なんですよ。バラードでも、ロックでも、ソフトな音楽でも、中身が強いものを聴きたいし、作るならそういうものを作りたい。だから、自分に与えられたものをそのまんま表現して“強い音楽”にするってところで、もう一回ソロでやろうと思ったんです。それで作ったのが今回のアルバムなので、今までの2枚と比べるとすごく進歩してるというか、進化しているというか、一番強く“これが小林太郎です!”って個性が出せていると思いますね。やり切った感があります。精神的な部分も含めていろんな歯車がガチッと合わさったタイミングで作ったアルバムなので…歯車がハマってしまえば、あとは動き出すだけじゃないですか。だから、ここからだなって思っているので、内心はすごくワクワクしてます。

──では、「鴉」はバンドでもやられていましたけど、それ以外の収録曲は新しく作ったものになるのですか?

『鴉』は高校2年ぐらいの時にサビを思い付いたんですけど、サビ以外は作らなかったんですね。それはなぜかと言うと、まだ当時の自分では作れないと思って作り置きしてたんです。で、なんとなくかたちにできたのがソロの2枚目を出したぐらいの時で、あとは全体的にギュッとまとめるだけだった。そういう意味では、バンドでやっている時もまだギュッとできていなかったんですけど、ようやく今回のアルバムを作るタイミングで曲にできたという。その『鴉』以外は新しく作った曲なので、歯車が噛み合ったタイミングで書いた…自分でしていた支え棒を自分で取っ払って、そこからあふれ出したものがかたちになった曲なので、すごく自分としても新鮮だし、自分らしいって思える曲になったと思いますね。

──何が一番変わったと思います?

考えなくなったことですね(笑)。それこそ『鴉』は曲名もそうだし、歌詞の中にも《俺は鴉になる》というフレーズがあって、そこに何か意味を見つけないといけないと思ってたんですよ。だからって意味が見つけられるわけもなく、ずっと迷っていたんですけど。でも、今回のタイミングではそのまま出す…“どういうものがいいのかな”とか何も考えず、無意識で曲のイメージに合うようなものを出してみようって。それは音でも、フレーズでも。なので、作り終わったものを聴くと自分でも新鮮で、“こんな歌詞を書いていたのか!”って(笑)。『泳遠』に《身体中に注射針が 刺さって抜けない》ってフレーズがあるんですけど、“なんで注射針なの?”って訊かれても“痛そうだからかな”ぐらいの考えでしか書いてなかったんですよ。でも、注射って体内に何かを入れるものじゃないですか。それが何かっていうところで意味深だし、それが空気だと命が危ない。で、注射針が刺さっていること自体が痛いから、刺さっているというのは良くない状態だと思うんで、日頃の自分に対してなのか、世の中に対してなのか分からないですけど、その負の感情を自分で処理するという意味で“注射針が抜けていく”っていう表現なのかな…って、今は冷静に言えますけど(笑)、最初はそんな深く考えて書いてないという。そういう意味では、自分なりの作り方というところでも吹っ切れたような気がしますね。

──そうやって自分と直結しているせいか、過去の2枚には初期衝動的な衝撃だったり、ヒリヒリとした質感があったわけですが、今回は音楽的な経験値もプラスされてそういう部分が抑えられたとはいえ、すごく熱量が増していると思いました。

そうなんですよね。もしかしたら、前の作品というのはプレッシャーじゃないですけど、“いいものを作らないといけない”という気持ちが尖った部分に出たのかなって、ちょっと思ったりしますね。そんな前の作品と比べても、今回のアルバムは自分というエネルギーや熱量が音楽に反映できたなって。自分でも何かエネルギーが出始めた、ひとつ目だなって思ってます。

──だからこそ“MILESTONE”というタイトルを掲げたわけですね。

そうですね。俺の中では“ちゃんと歩き始めた一枚目”という意味なんですけど…今までに2枚出してるし、それが良くなかったわけじゃなくて、ここまでくるのにえらく大変だったぞということで(笑)。まぁ、どこでも一歩目だと思うんですけど、ちゃんと前にもかたちがあって、後ろにもかたちがあって、そこを歩いていくだけなんだろうなってことで、このタイトルを付けました。

取材:土内 昇

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