2014-09-22

OVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUND、そこにまた、新しいものが生まれるんじゃないか?

結成から10年目で見えてきた新たな景色。最新作『FOLLOW THE DREAM』に込めた心地良さと楽しさ、その裏側にある悲しみの情景について語る、TOSHI-LOW(Vo&AG)の言葉はこれまで以上に力強く、やさしいものだった。

──(表紙が高橋優と片平里菜の、本誌VOL.119を渡して)前号はこんな感じだったんですけども。

おっ。

──ふたりともTOSHI-LOWさんとすごい関係あるんですよね(笑)。そう言えば、片平里菜さんのアルバム(『amazing sky』)の特典映像をちらっと観たんですけど、TOSHI-LOWさん、里菜さんに歌い方のことを言ってましたよね。ちょっと、正確には聴き取れなかったんですけど。

あぁ、あれはね…「amazing sky」という曲の、“スカーイ”という部分を伸ばして歌ってるところだと思うんだけど、 “空”が思い浮かぶような言葉をどうやって発するか?ということ。自分が吐いた言葉が相手に映像として伝わらないと意味ないよ、という話をしたの。

──あぁ、なるほど。

声がよくて歌が上手い人って、逆になっちゃうんだよね。俺なんかは歌が下手だし、これしかないから、届けるために何をするか?と思ってきたんだけど。例えば、すごい高い声が出るという技術が先行しちゃうと、それは結局ピアノで同じ音が鳴ってるのと一緒じゃない? それと言葉が鳴るのとでは全然違うんだよ、という話を、たぶんしたんだと思うけど。俺が言ってるのは、そこを伸ばし切るとか、ピッチを正確にすることじゃないんだよ、それはできてると思うよって。…偉そうだよね、自分ができてないくせに。

──あはは。そういうものですかね。

人には言えるんだよね(笑)。キャバクラに行って、キャバ嬢に説教してるオヤジみたいだよ。

──そんなことはないですけど(笑)。最近のBRAHMANとOAUって、そうやって片平里菜さんや高橋優くんの曲に参加したり、すごくフレキシブルな活動になってきてますよね。

俺はほら、インディーとメジャーの間みたいな、中途半端なところにいるからさ。インディーの中で意志を持って、ずっとやり続ける人もいる。でも、高橋優とか片平里菜のように、メジャーフィールドで伝えてもらったほうが早いこともあるじゃない? それはすごく大事なんじゃないかなと思う。だから、もっともっと売れてほしいなと思うよね。

──それで、OAUの今回のニューアルバムなんですけど…。

どうでした?

──いいです。すごくいい。

…俺もそう思ってます(笑)。自分の耳がおかしいのかな?と思ってたんだけど。自分だけが舞い上がっちゃって、いいと思い込んでるのかな?とか。

──本当に気持ち良いです。心と体の凝りが、揉みほぐされる気がします。

俺もレコーディングしてる段階からそう思ってて、これはすごく心地良いなと。歌ってても心地良いんですよ。

──今まで一番、楽しいという感情を素直に感じられる作品だと思いますよ。

その楽しさの後ろに、人生の哀愁があるわけじゃない。大事なのはそこで、俺たちはもう人生の折り返し地点をすぎてるわけだから、楽しくても、どこまでも悲しさは付きまとう。それが20代の時だったら、悲しさというか、虚無感や焦燥感が強く出ていたわけで、BRAHMANだったら『A FORLORN HOPE』(2001年発表の2ndアルバム)の時期みたいな、全ては一瞬で燃え尽きて終わってしまうんじゃないか?みたいな。あの時はあれで良かったんだと思うし、あの時に今の余裕感が出ていたら、逆に終わっちゃったかもしれない。

──あぁ、そうかも。

だから、今の年齢でこれは、自分でもすごくいいんじゃないかと思う。あと、これはオッサンの域を超えて、おじいちゃんの年になるまで遊べる道具なんですよ。アコースティックというのは。ロックもできるんだろうけど、やっぱり無理あるよね。分かんないけど。ザ・チーフタンズとか、ああいうおじいちゃんたちのバンド、いいじゃない?

──いいですね。個人的には「朝焼けの歌」にヤラれました。これは本当にいい曲。

いいよね。俺、自分の曲で初めて、号泣したからね。

──えっ。

シャッフルで音楽を聴きながら、ライヴ前にランニングしてたら、たまたま「朝焼けの歌」が流れてきて…その時まだタイトルは付いてなかったんだけど、ぶわーっと涙が出てきて動けなくなって。というのは、ランニングしてた場所が大船渡のフリークスの近くで、津波で更地になった場所なんだけど。近くに津波で曲がっちゃった時計が残してあって、そこで「朝焼けの歌」が聴こえてきた瞬間に…自分の作った歌で号泣したのは初めてだね。どうしようもなくて。

──あぁ…それはすごい話。

たぶん、歌ってる言葉と同じ情景が見えたからじゃないかな。この歌を初めてどこかのライヴでやった時も、初めてなのに泣いてる人がいたし、みんな同じ映像がポンと浮かぶんだろうね。それは絶望的な情景かもしれないけど、何もないんだけど、そこにまた新しいものが生まれるんじゃないか?という期待があって終わるという。

──ですね。

俺は結局、BRAHMANでもOAUでも、同じようなことを書いてきたんじゃないかと、今となれば思うんだけど。エッジの立ち方がどっちを向いてるかの違いだけで、絶望のままバン!と終わらせることもあるけど、それがあまりに絶望的だと、逆に終わったあとに次を期待する気持ちもずっとあったし。そこまでいかないと、分かんないんですよ。人間の深さは。そういう意味では、振り切った生き方をしてきて良かったなと思います。

──ライヴ、楽しみにしてますよ。9月13日と14日に行なわれる『New Acoustic Camp』も、今年で区切りの5年目ですし。

『New Acoustic Camp』とOAUは、切り離せなくなってきてるよね。OAUでやってることが、『New Acoustic Camp』の思想だと思ってるし。

──それがどんどん見えてきた?

見えてきたね。自分たちの遊び場を自分たちで作っていく、ただそれだけ。すげぇシンプルな話だよ。バンドもそうじゃない? シンプルなことに対してギミックやハッタリはいらなくて、“楽しい”という言葉を発するために努力するだけ。だって楽しいことって、苦労とは思わないじゃない。“好きこそものの上手なれ”というのは、本当に正しいなと思う。好きなことを見つけられた大人はすごい幸せですよ。

取材:宮本英夫

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