2013-01-20
【浅井健一】ソロでも人間が炸裂する部分が欲しいんだ
3年半振りのアルバム『PIL』は、豪快さと繊細さがポップに彩られた作品だ。なお、本作を携えてのツアーでは、加藤隆志(Gu&Cho)、渡辺圭一(Ba&Cho)、茂木欣一(Dr&Cho)らとBLANKEY JET CITYの曲も演奏するという。
──昨年10月25日、東京・新代田FEVERにて、加藤隆志(Gu/東京スカパラダイスオーケストラ、LOSALIOS)、茂木欣一(Dr/東京スカパラダイスオーケストラ、FISHMANS)と渡辺圭一(Ba/HEATWAVE)というラインナップでライヴをやられましたよね。その模様が本作『PIL』の初回特典映像になっていますが、レコーディングもこの顔ぶれで?
「全然違う。5曲は俺ひとりで作って、『LOVE LIVE LOVE』とか3曲が欣ちゃんと圭一と俺の3人。あとはシンペイとマーリンていうアメリカ人のベーシストと俺で作った。」
──シンペイさんは以前のソロユニットでのメンバーの?
「そう。マーリンはSHERBETSの福士(久美子)さんがやってるTHE HiPPYってバンドを手伝ってるカリフォルニアからやって来てる男。」
──このソロの構想はいつ頃から?
「実は2011年の1月ぐらいから、すごい時間掛けて入念に作り続けてて、細部まで自分の感覚が行き届いている。今までのソロの中で最も時間がかかってる。これからはSHERBETSとソロと、ふたつやっていこうかなと思ってる。」
──おや、それはどうして?
「区切りを付けなくてもいいじゃん? 自然に付くけどね。」
──曲を作っていて自然に区切りが付くものですか?
「だいたい。これをSHERBETSでやったらこんな感じになるなと想像が付く。最近はプロトゥールスで作るのが気に入ってて。面白いんだよね。結構そればっかりやってるね、最近は。本当の意味でのソロだよね。」
──それもあってこの新作ができたんですね?
「2年前から作ってるアルバムが完成したんで。いつまでも閉まっておきたくないんで、このタイミングで発表した。」
──全部プロトゥールスというわけではないのはなぜですか?
「ひとりで作ったのが結構あるけど、アルバム全体を見た時に全部がそれだと、ちょっと何か物足らないんだよね。人間が炸裂してる部分もアルバムの中に欲しかったんで。後でやった。」
──やはり、レコーディングメンバーが変わると曲の世界観も変化するんじゃないかと思いますが、それぞれどんな感じでした?
「欣ちゃんの時は、やっぱりさすがだなぁと思ったね。一流だなと思った。世界レベルだね。もちろん、圭一のベースもすごい。昔から良かったんだけど、昔は俺が未熟な点もあったんで。昔は不明だったところが明確になって、圭一もすごい良く感じるし。シンペイも、みんなに知られてないだけで実はすごいドラマーなんだよ。」
──話が前後しますが、茂木欣一さんが参加した経緯は?
「欣ちゃんたちとやったのは、2011年12月に『茂木欣一ショーVol.3』があって、それに誘われて初めてライヴを一緒にやったの。レコーディングでは、最初のソロシングル『危険すぎる』で叩いてもらったことがあるんだけど、そのライヴですごい良いなあと思って。その時に欣ちゃんのリクエストでBLANKEY JET CITYの『SWEET DAYS』をやったんだけど、その時に加藤チャーハン(加藤隆志)がサイドギターで。CDではギターが何本も入ってるじゃん? でも、BJCでやる時はライヴはギター1本なんで、弾けなかったフレーズを欣ちゃんたちとやることによってCDに近い感じで表現できて、これは今までなかったなあと思って嬉しかったんだよね。だから、次のツアーでも何曲かBJCの曲をやろうかなと思ってる。」
──初回特典映像でも「SWEET DAYS」「危険すぎる」が入っていますね。
「聴こえ方が新しいよね。初ライヴだったから至らんところもあるけど、みんなの気迫があるよ。」
──『茂木欣一ショー』では、柏原 譲(Polaris、OTOUTA)さんがベースでしたよね。
「そうだったね。譲くんのベースも好きなんだけど、So many tearsに俺が入ったみたいな感じになるのはどうかなと思ったのと、圭一は暴れてくれるんで。周りで暴れてくれると俺もやりやすい。ツアーは俺も楽しみなんだけど、欣ちゃんたちは忙しいから、これ終わったら次はいつできるか分からない。だから、貴重なツアーになるんじゃないかな。」
──ライヴでは新曲もたっぷり聴けそうですね。
「全部は無理でしょう。『エーデルワイス』のコーラスとか複雑だから。」
──レコーディングでは自分でコーラスも?
「そうだよ。ハモが自分でできるようになったのが、自分の中では大きいんだよ。今までできなかったから。深沼(元昭)くんと一緒にやり始めて、深沼くんは普通にハモるんだよ。どうやってるのか見ていてだんだん分かってきて。プロトゥールスだとリズムが正確だからハモりやすいんだよね。それでライヴでもできるようになってきたんだよね。」
──深沼さんは4thアルバム『Sphinx Rose』にも参加してましたね。
「今回はエンジニアと、曲を作る時の基礎になるループを作ってもらった。彼は音楽を論理的に分かってるんで。俺は分かってないから、俺にないところを彼が補ってくれるから、いいんだよね。」
──ところで、“PIL”というタイトルは、ジョン・ライドンが結成したPUBLIC IMAGE LIMITEDを連想しますが?
「そうじゃなくて、“Pocky in Leatherboots”。“PIL”という響きがいいなと思って。パクったと思われるかなと思ったけど、知らん人もいるからいいやと思ったら、みんな知ってた(笑)。」
──折しも、BJCのドキュメント映画『VANISING POINT』が公開されますね。
「映画の感想は言わないことにしてるんだよね。BJCは大好きだったし、先入観を持たずに観てほしいから。ただひとつ言えるのは、照ちゃん(照井利幸/Ba)も達也(中村達也/Dr)も、すごいふたりと俺はバンドをやってたんだなと改めて思った。俺は自分のこと、全然子供だなって感じがした。俺が一番未熟だったのかなって。それぐらいかな、言えるのは。」
取材:今井智子
(OKMusic)
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