2012-08-20

【BRAHMAN】言葉に対してより真剣になってきてる

 約1年振りのニューシングル「露命」は、昨年3.11以降の激動する日本の現状を真正面から見据え、鋭い言葉とダイナミックなサウンドを叩き付ける最高の一枚だ。その真意と核心をTOSHI-LOW(Vo)が熱く語る。

──最高ですよ。3曲ともほんとに素晴しい。

またまた。これが取材の一発目なんだから、そういうところから入っちゃうと後が困るんで、やめてそういうの。

──いやマジですってば(笑)。いつ頃作った曲ですか?

最近ですよ。曲はずーっと作っていて、断片はいっぱいあるんだけど、それをグッとまとめたのが5月ぐらい。『鼎の問』はもうあって『ARABAKI ROCK FEST.12』でもやってる。『警醒』は、俺がいない時に3人で作ってた曲。

──だから、あの曲はメンバーのヴォーカルがメインになってるんですね。

割り振りは俺が後から考えたんだけど。もはや自分がいるからBRAHMANという感じでもないなと思ってるので、歌い出しが俺じゃないというメロディーと詞を考えて、みんなの声の特性に当てはめてみたら、“俺が歌わなくてもいいな”と。

──この曲を歌ってるライヴ映像を見ましたけど、TOSHI-LOWさん、曲が始まったらいきなり客席に飛び込んでる。“俺は歌わなくてもいいから”って、ほんとに楽しそうに(笑)。

USハードコアで、そういう感じあるじゃん? ダダダン!って始まったらいきなりいっちゃって、なんだか分かんないけど“ウワー!”みたいな。そういう感じ、俺は大事だと思ってるんで。今はシロウトがエセ評論家みたいに何でもネットで言える時代だけど、そんなチープな言葉で表現されるすごさなんてたかが知れてて、“グワーッときた”や“なんだかワカランけどすごい”とか、そういう感じ方を俺は信じてるから。

──それは僕もリスナーとしての核にはありますよ。

そうなると、ライターのレベルも上がっていかなきゃいけないから。プレッシャーになっていいんじゃない? 音を言葉に変えるのはすごく大変なことで、そこらへんにある文章のほとんどはそれができてないからね。

──まいったな…(笑)。でも、その通りだと思います。

言葉って本当に大事。特に音楽に乗せる言葉というのは…俺自身もナメてた部分があるんじゃないかなと思うし、もっと言葉を正確に深く知らなきゃいけないって自分も感じるから。前より大変だけど、すごくやり甲斐がある。

──「露命」はまさにそういう曲でしょう。

言葉に対してより真剣になってきてるから、語呂だけいいとか、見栄だけいいとか、そういう言葉に反応しなくなってきてるんで。音に乗らなかったら、音楽の場合は意味がないじゃないですか。だけど小手先で韻を踏んでいくとか、そういうものではまったくなくなってきてる。だから、大変だけど、的は決まってる気はする。

──「露命」は“露のようにはかない命”という意味ですけど、ここではどんな思いを込めて使ってます?

…基本的に俺は詞の説明はしないじゃない? ここまで言っといてアレだけど(笑)

──うん、でも分かりますよ。これはちゃんと聴けばちゃんと伝わる言葉だと思うので。

難しい言葉をトリッキーに使ってるわけじゃなくて、読んでもらえれば、まさか反対の意味にはとられないだろうと。あとは己で深く感じてもらえれば、言葉のすごさが分かってくれるかなと。それで少しでも響き合うものがあれば嬉しいなと思う。

──この歌詞のポイントは“露命をつなぐ”と“禍福はあざなえる縄の如し”というふたつの表現にあると思います。あとはほんと、それぞれ読み取ってもらえれば。

また雨冠かよ、ってね(笑)。この人、漢字コンプレックスなの?みたいなさ(笑)。そこは、できれば自分のオリジナリティーというか、自分自身の言葉として言えるものが欲しいから。だって、これが“スーパーノヴァ”とかだったら恥ずかしいでしょ?

──BRAHMANの新曲「スーパーノヴァ」!!(笑) そんなの出たら、申し訳ないけど笑いますよ。

ひっくり返るでしょ(笑)。それで4つ打ちから始まるとかさ。

──ないない!(笑) でも、ほんとこの「露命」と前シングル「霹靂」で、BRAHMANはそのオリジナリティーを急激に高めたと思ってますよ。日本語詞ではっきり意味を伝えることも、なんで今までやらなかったんだろう?と思うくらいにハマッてるし。

真剣にやってると言いつつも、そこまで真剣にやってなかったんじゃないかな?って、今思うと言えるかもしれない。自分の限界を勝手に決めてたような気がする。3.11より前の自分は。

──ああ…やっぱり。

生きてることに一生懸命じゃなかったなと思うんですよ。生きてることの意味を探すことに…いや、言い訳を探すことに一生懸命であって、生きてる本質に対して一生懸命にやっていたか?というと、俺は自分自身で疑問点があるというか。

──かつてはただの怒りや激情だったものが、より大きなものに変化していると思うんですよ。今回の3曲とも、明らかに震災後の原発に関わる出来事がテーマに含まれていると思うんですけど、ただ怒ってるだけではないというか。うまく言えないけど…。

遠くから眺めたら、今まで書いてきたものとあんまり変わってない気がする。でも、ずっと自分自身に問い質しながらやってきたけど、自分の人生を大きく考えると社会もそこに入るわけで、自分自身を問うように社会を問えるんじゃないか?と思うようになったから。いきなり“社会が悪い、政治が悪い”と言ってるわけじゃなくて、自分自身を中心に、それを取り囲んでいる全てのものに対して言うべきことを言うということ。だから、昔書いてる詞と今書いてる詞と、一番初めの突き刺し方は同じ。まず自分を突き刺して…前はそこだけで終わってたけど、今は、自分も含めた社会も突き刺せるようになってきたというか、そういうことだと思うよ。

取材:宮本英夫

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