2011-10-20

GOING UNDER GROUND、映画の主題歌だけど自分の作品として出したかった

 新曲「愛なんて」は映画『ハラがコレなんで』の主題歌であり、映画を観て書き下ろしたというバラードナンバー。現在のゴーイングのバンド感が出た「Madonna」や「東京」の再録「東京2011」をカップリングに据える本作について、松本素生(Vo&Gu)に語ってもらった。

──「愛なんて」は映画『ハラがコレなんで』の主題歌で、映画を観てから書き下ろされたとのことですが。

いろんなものを抱えながら、みんな暮らしているじゃないですか。嫌なことだったり、悪いことが起こっても、それを受け入れて前に進んでいく人たちの美しい姿が描かれていたんですよ。当たり前すぎて地味なことなんだけど、それをすごいエネルギーで肯定的に描いているというところに感動しましたね。

──その気持ちを楽曲に落とし込もうと?

そうなんですけど、これが結構、紆余曲折がありまして。今の俺たちは映画のためだけに曲を書き下ろすっていうマインドではなくて…『稲川くん』っていうアルバムを4人になって初めて出したわけですけど、何かのためじゃなくて、自分が歌いたい歌しか出したくないっていうマインドになっていたんですよ。タイアップってそこが難しいじゃないですか。だから、ちゃんと石井裕也監督と会って話して、そこで結構アツいものを交換し合ったから、“じゃあ、やってみようかな”って。

──監督からのオーダーもありました?

監督の中で“この場面で終わって、このタイミングでキャストの仲 里依紗さんと中村 蒼さんが出てくるから、このタイミングで曲が入るんです”って細かいところまでビジョンが出来上がっていたんですよ。そのタイミングで入るんだったら、いきなりバーン!ってのはないだろうってのもあったし…でも、結構、大変でしたね。映画の主題歌だけど自分の作品として出したかったから、なかなか曲ができなかったし、そこに輪をかけて震災があって、“音楽なんか作っても意味がない”っていうモードにもなったし。でも、3回目に観た時に、最初の“時代はいつでも雄弁で退屈だ”というフレーズが出てきたんですよ。震災があって自分の中で音楽を作る意味を全部失って、まっさらになったところで出てきたメロディーと言葉がこれだったから、自分でも“なるほど、これか!”って思いましたね。そういう意味では、自分のために歌ったのかもしれない。

──アレンジも歌をピアノとストリングが押し出して、それをバンドサウンドで支えるようなシンプルなものですよね。

もう余計なことは何もしなくていいっていう感じですよね。バンドはどうでもいいっていうか、絶対にバンドサウンドにしないといけないっていうわけじゃないし。だから、アレンジも“ここで入りたい”と思ったら入るってことだけしかやってないです。余計なものが必要なかったっていうのもあるかな。弾き語りでも十分な曲だから。なんとなくみんなと合わせていた時に、ドラムが入ってきて“あっ、そのドラムの入り方いいね”っていう感じで、歌が流れていくようにやっただけですね。

──まさにそんな感じですね。弾き語りということでは、「愛なんて Electric ver.」というエレキギターでの弾き語りバージョンも収録されていますが。

これは実験ですね。こういうバージョンをうちの事務所の社長が聴いてみたいって言うんで、やってみたんですよ。今回のカップリングは自由にやったほうがいいっていうのが、俺らの中にはあって…なんでかと言うと、映画の主題歌っていうことでもあるから、“映画のシングル”ってならないためにも、カップリングは自由にやって両極端に振れていたほうがいいと思ったんです。それで、このバージョンが入ったんですよ。で、“だったら、俺、『東京』を今の4人だけでやりたいんだけど”って(笑)

──「東京」のリレコーディングは、そういうノリだったんですね(笑)。でも、なぜ「東京」だったのですか?

もう一回やりたいってのは、ずっと思ってたんですよ。バンドにとって本質の曲なんですけど、シングルにしなかったっていう負い目があって。あと、俺、弾き語りだろうが何だろうが、ずっとこの曲を歌っているんですよね。俺にとって魂みたいな曲だから、それを今の4人だけの音で録り直したいって思ったんです。これをアルバムに入れると意味合いが変わってくるから、やるなら今しかないなって。あと、これは後から知ったんですけど、石井監督はこの曲を聴いて“このバンドだったら俺のこと絶対に分かってくれる”って思ったらしいです(笑)

──では、2曲目の「Madonna」は?

丈さん(ドラムの河野丈洋の愛称)がデモを作ってきたんですけど、最近アイツ、こういう曲を書くんですよね。パワーポップみたいな。で、歌詞は嫁さんのことなのかなって(笑)。『愛なんて』と『東京』だけだと“この組み合わせには意味があるんですか?”みたいになるから、軽めのものを入れたいと思って、この曲を仕上げました。

──「愛なんて」と違い、バンド感が前面に出ていますよね。

前のゴーイングの中期から後期って、結構いじくり回してたんですけど、今の自分たちのモードはそういうんじゃなくて、曲を聴いた時の印象で“あっ、こんな音が鳴ってる”とかで入れてるだけなんですよ。いい曲だったら、なおさら悩まないですね。何もしないんで(笑)

──映画主題歌のシングルですけど、ゴーイングらしいものになったようですね。

芯がブレなくなったというのが、自分の中の手応えとしてありますね。やっぱり、映画の主題歌っていうところで、最初はものすごく怖かったんですよ。意外と気ぃ使ぃだから(笑)、映画に寄りすぎたりして、“あぁ失敗した”って思ったら嫌だなって。もちろん、“やりません”という選択肢もあったんだけど、映画っていうか、石井監督の作品を観た時に“めっちゃいい! だったら、俺もめっちゃいい曲を作る!”って思って、“めっちゃいい曲できたじゃん!”って思えるものができた…もうね、楽曲を駒みたいに使いたくないんですよ。そんなふうに使った経験があるから、バンドが終わる時までずっと歌える曲を作りたいと思っているんで。発注を受けながら、自分が納得するものを作る。バンドマンだからやりたくないことはやりたくないし、そこでブレないものを作る…まぁ、当たり前のことなんですけど。その第一歩ですね。あと、4人で『東京』をやったっていうのも大きいかな。間違ってないなって。

取材:石田博嗣

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