2018-05-10
1stアルバム『ハーレム野郎』からすでに全開だった怖くないパンクバンド、ニューロティカのスタンス

今週末、5月12日の名古屋CLUB QUATTRO公演を皮切りに『Way to 2000 ニューロティカ結成34周年記念ワンマンツアー』がスタート。9月にはフラワーカンパニーズ、人間椅子、グループ魂、氣志團らとのツーマン公演も控えており、さすがに通算ライヴ本数2000回目のカウントダウンに入っただけあって、ニューロティカの周りがいつになく賑やかだ。記念すべき2000回は10月20日のZEPP TOKYO。ロックの聖地のひとつ、新宿ロフトへの出演回数が200回を超えているレジェンドバンドにまた新たな伝説が加わることになるわけだが、ここで改めてニューロティカというバンドの特徴を、1stフルアルバムから探ってみよう。
■まもなくライヴ本数が2000回!
本コラムでは折に触れて何度も言っているのだが、解散や復活でファンが盛り上がる気持ちは分からないでもないし、解散にも復活にも表に出せないさまざまな理由があるのだろうから無下に批判できるものではないが、本来、注目され、称えられるべきは長期にわたってコンスタントに活動しているバンドのほうだと思う。とはいえ、解散こそしてないが、何年もライヴをしてない…というのは言語道断。ベスト盤やセルフカバーの多さが目に付く…というのも(事情を察することができる場合も多いが)少し割り引かせてほしいところで、少なくともロックバンドを自称するなら定期的なライヴ活動とオリジナル曲制作で勝負してほしいものだ。その観点から見ると、THE ALFEEやスターダストレビュー、そしてBUCK-TICK辺りがもっともバンドらしい活動をしていると言えるし、B’zやGLAYがそれに続くであろう。
インディーズに目を転じると、結成以来、休むことなく活動を続けている“ライヴハウスの帝王”Gargoyleがいるし、何と言っても今年10月に2000回目(!)のライヴを予定しているニューロティカのことを忘れてはいけない。上記THE ALFEEの2600本超というのが日本のバンドのコンサートの最多記録で(現在も更新中!)、それには及ばないものの、THE ALFEEとニューロティカとでは活動歴におおよそ10年の差があるので(THE ALFEEのほうが先輩)、そう考えるとニューロティカの本数もかなりのものだ。“日本のロックの中心に君臨するライヴバンド”のキャッチフレーズは大袈裟でも何でもない。BUCK-TICKの敦っちゃん(=櫻井敦司)もすごいが、ニューロティカのあっちゃん(=イノウエアツシ)もすごいのだ。
■怖くない、笑えるパンクバンド
ニューロティカのすごさは単に活動歴が長く、尋常じゃない本数のライヴをやっているだけではない。バンドとしてのキャパシティーの広さ──いや、懐の深さと言ったほうがいいだろうか。それがあったからこそ、彼らは長きにわたって活動ができているのだと思う。結成は1984年。同じ年に初ライヴを行なっている。当時、日本の音楽シーンの主流は歌謡曲であったものの、ザ・スターリンがアルバム『STOP JAP』でメジャーデビューしたのが1982年で、その後、伝説的なパンクオムニバス『GREAT PUNK HITS』(1983年)、『ハードコア不法集会』(1984年)が発売されており、アンダーグラウンドではパンクが盛り上がっていた頃。ニューロティカのサウンドがパンクロックになっていったのも自然なことだったと思われる。
ただ、当時のパンクと言えば、ザ・スターリンの遠藤ミチロウの超過激なパフォーマンスであったり、ハードコア勢の暴力的なステージであったり、一般リスナーは近付きがたい存在であったことは確かだが、ニューロティカはそうじゃなかった。怖くないパンクバンド。怖くないどころか、笑えるパンクバンドだったと言ってもいい。今はコミカルなMCで楽しませてくれるロックバンドも珍しくはないが、少なくとも当時のパンクシーンにおいては完全に珍種だったのは間違いない。THE BLUE HEARTS やLAUGHIN' NOSEらとも一緒にイベントに出たり対バンしたこともあったと聞くので、さぞかし浮いていたんだろうなと思ってしまうのだが、(浮くには浮いていたんだろうが)そのメロディーとサウンドはパンクであったりR&Rであったりしたこともあってか、意外にも(?)オーディエンスはウエルカムだったようだ。最初は敬遠気味だった鋲打ち革ジャンのパンクが自然と身体を揺らすような光景が各地で見られたという。
■様式美にとらわれない “何でもあり”の精神
ニューロティカはコラボレーションにも積極的だ。これもまた少なくとも1980年代結成のパンクバンドには珍しい。対バンは2003年の『俺達いつでもロックバカツアー』で、GELUGUGU、175R、大槻ケンヂ率いる電車、NOT REBAOUNDらと行なっているように世代もジャンルも関係なく共演しているが、ニューロティカのすごいのはそのお相手がアーティスト、ミュージシャンに限らないところだ。2001年には、何と野村沙知代(故人)とジョイントライヴを決行。2011年には当時スキャンダラスな話題を振りまいていたグラドル、小向美奈子とスプリットアルバム『おつかれサマータイム』を制作している。2012年に初音ミクをフィーチャリングした『ミクロティカ』も画期的だ。『ミク★パンク 創世編』(2012年)という作品もあるので、初音ミクと日本のパンクロックとのセッション自体は珍しいものではないが、ニューロティカ自身が選曲したものを新たにミックスし直したというのは、同世代のバンドには見られない熱の入れようだったように思う。
ジャケットでも2000年の7thアルバム『絶対絶命のピンチ!!』は『キン肉マン』の作者、ゆでたまご氏が手掛けたり、2008年のカバーアルバム『PUNCH!PUNCH!PUNCH!』ではピエロメイクのまちゃまちゃを起用したりと、所謂パンクの様式美にとらわれていないところがある。“何でもあり”の精神が発揮されているのだが、それこそがニューロティカ流のパンクなのだろう。
■コントを取り入れた画期的な作品
そのニューロティカのバンドの特徴は、1989年にキャプテンレコードから発売された初のフルアルバム『ハーレム野郎』からすでにうかがえる。この時点ではさすがにコラボレーションにまでは及んでいないが、バンドとしての懐の深さ、笑えるパンクバンドであることははっきりと見てとれる。M1「…to be HARLEM」の前に入るSEからしてこうである。バイクのイグニッション、エキゾーストから心地良い加速音が続く。ここまではいい。ところが、それが急ブレーキからクラッシュ。想像するに結構大破しているような気がするような音が入って、イントロが始まるのだ。“…to be HARLEM(ハーレムになれ)”という題名の楽曲が大クラッシュで始まる。これはどんな自虐だろうか。
M2「夏・NANCY・16才」はコントで始まる。“みのさん?”で始まる設定がどんな番組のパロディーか知っている人も少なくなっただろうが、おおよそパンクバンドのメンバーがやっているとは思えない掛け合いを聴かせる。何でもこのボケと突っ込みを聴いてお笑いコンビ、ダイノジの大地洋輔はそのタイミングを覚えたという逸話もあるほどだ。のっけから“お笑い”連発。これらは真面目な歌詞に対する照れ隠しだったと、のちにイノウエアツシ(Vo)は述懐している。その行為自体は1980年代らしい相対化ではあるが、パンクでやったのはかなり新しかったし、今も他に比類なき革新性であったと思う。ちなみにコントはM8「Fuchin’ Boys〜ガンツタレナガシノ術〜」前にもある。
■“青春パンク”の始祖にして 多様な音楽性
さて、これで楽曲そのものがコミックソング調であったらその後のニューロティカの評価も変わったのだろうが、そのサウンドはパンクをベースにした硬質なものばかりである。ブラストが多い性急なビートにソリッドなギターサウンドは今聴いても十分にカッコ良いし、これもまた日本のパンクロックの礎のひとつであろう。
メロディーのキャッチーさも強調すべきものだ。あっちゃんの原点はフォークソング。松山千春好きを公言しており、中島みゆき、さだまさしも好きだという。M1「…to be HARLEM」、M2「夏・NANCY・16才」の他、M4「悲しきハートブレイカー」やM9「DANCE DE NEW ROTEeKA」が2000年代前半の“青春パンク”を先取りしていた印象がするのは、あっちゃんのバックボーンに関係していることは間違いない。
それだけじゃない。所謂“青春パンク”に止まることなく(『ハーレム野郎』の頃にそんなジャンル分けはなかったが)、多様な音楽性、先人へのオマージュを意欲的に取り入れているのも本作の大きな特徴だろう。間奏で転調してリズムがラテン系になるM2「夏・NANCY・16才」の他、M5「シェリーは祭りが大好き」では日本の祭り囃子、M7「LET’S FUCK 1989」では鹿威しからの琴の音色(本物じゃないかもしれない)で「さくらさくら」を聴かせている。また、M5「シェリーは祭りが大好き」では「Oh, Pretty Woman」、M8「Fuchin’ Boys〜ガンツタレナガシノ術〜」で「Twist And Shout」、M9「DANCE DE NEW ROTEeKA」で「Summertime Blues」と、有名なロックのリフやコーラスを拝借している。いずれも基本はパンクだが、そこにミクスチャーやサンプリング的な手法を重ねているのだ。この辺はアルバムが単調になることを避け、バラエティーさを増す効果もあり、ニューロティカというバンドのキャパシティーの広さ、ポテンシャルの高さの証明に他ならず、のちに多種多様のアーティストとコラボレーションを行なう下地につながっているようにも思える。
■楽しさ、熱さ、悲しみ…歌詞も多彩
歌詞もいい。アルバム内でのバランスがいいと言ったらいいだろうか。見た目のイメージ、アッパーなサウンドに相応しい、以下のような享楽的な歌詞がある一方で──。
《俺たちゃ祭りで騒ぐ能天気ボーイズ/冷えたビールで全開/俺たちゃ天国行きの案内人》(M5「シェリーは祭りが大好き」)。
《さあさ踊れよ 朝が来るまで いつ死ぬかもわからないのに/ほら お前の後ろには朝日が昇る》(M9「DANCE DE NEW ROTEeKA」)。
自らのスタンスも熱く綴っている。本来、退廃感や虚無感の強かったパンクは日本に渡って前向きな文脈を得たところがあるが、ニューロティカもそれに寄与したのだろう。この辺りもまたのちの“青春パンク”に多大な影響を与えたのは間違いないはずだ。
《どこまでいけば たどりつくだろ/俺達だけの秘密の場所さ/謎の冒険 地図はHEARTさ/さまよい ひたすら 探すのさ》《終わることなく道がいくつも/自分の鼓動 はげみに変えて/いくつもヤマ乗り越えただろ/不安も疲れも ありゃしねえ》《飛び出せ トビラを開くのさ/心の遊びさ夢中さ(H! A! R! L! E! M!)/きまったレールにゃ おさらばさ/自分を信じるさ》(M1「…to be HARLEM」)。
《誰のためでなく 俺自身のためさ/生きてく限り 歌うのさ》(M3「Punch2 Ruby2 Lumba Purple Ranba Ruby2 Lumba」)。
《遠い街には何があるのかと ガキの頃から あこがれ続けた/俺たちの息つく所は 熱く燃えてたあのさびれた街》《傷だらけのギター響き渡るとき 昔夢見た ホンキートンクブルース/俺たちのR&Rこの街に戻ってくるまで 唄い続けるあの街この場所で》(M11「ROCK & ROLL RAILROAD」)。
こうした熱い歌詞は、楽しい歌詞、前述したコントがあるからこそ、よりその熱さが増して聴こえる効果を生んでいると思う。ロストラブソングも然りである。
《お前を失くした時には 胸の痛さを知ったさ/額をBEDにすりつけ 涙が落ちないように/タバコの煙にむかって JOKEを飛ばしてみたのさ/LADY I LOVE YOU EVERY NIGHT 遠く離れたお前に》《二人を照らし続けた あの街光りのどこかで/お前は違った色に 流され染まっちまったか/愛とか恋とかやさしさ 俺にはにがてなようさ/いつでもお前を見守ってやる 輝く光りとなって》(M4「悲しきハートブレイカー」)。
ピエロメイクの涙は[観客を笑わせているがそこには悲しみを持つという意味を表現したものであるとされる]が([]はWikipediaからの引用)、あっちゃんのメイクを体現したリリックをしっかり用意しているところはさすがと言える。
TEXT:帆苅智之
アルバム『ハーレム野郎』
1989年発表作品
<収録曲>
1.…to be HARLEM
2.夏・NANCY・16才
3. Punch2 Ruby2 Lumba Purple Ranba Ruby2 Lumba
4.悲しきハートブレイカー
5.シェリーは祭りが大好き
6.WHISKEy ROCK
7.LET’S FUCK 1989
8.Fuchin’ Boys〜ガンツタレナガシノ術〜
9.DANCE DE NEW ROTEeKA
10.THE OUTLOW’S SONG
11.ROCK & ROLL RAILROAD
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