2013-08-20

【中島美嘉】真摯に生きる姿勢を歌ったニューシングル

 中島美嘉から、2013年第二弾シングル「僕が死のうと思ったのは」が届けられた。注目のロックバンド、amazarashiが作詞・作曲を手がけたこの曲は、生きることに真摯に向き合う姿を描いた、渾身のロックバラードに仕上がっている。

──まずは5月から8月にかけて行なわれた全国ツアーについて。チャート1位を獲得したアルバム『REAL』を中心にしたツアーだったわけですが、手応えはどうでした?

「楽しかったですよ。でも、普段のツアーよりもものすごくパワーが必要だったんですよね。たぶん、久しぶりのツアーだったからだと思うんですけど…。ヴォーカルに関しても、新しい課題も見つかったりして、まだまだ、やらなくちゃいけないことがたくさんあるなって思います。」

──ツアー中、特に印象に残っていることは?

「ファンの人たちがサプライズの演出をしてくれるんですよ、いつも。メッセージを書いた丸いウチワをみんなで掲げてくれるんですけど、普段のツアーでは大阪公演の時にやってくれることが多いんですね。でも、今回はなぜか新潟だったんです(笑)。すごくびっくりしました。いつも心から応援してくれてるし、本当にありがたいなって思いますね。」

──今回のツアーのテーマも、“ファンの人たちに自分の思いを直接伝える”ということだったわけですからね。ツアーの後半では、ニューシングル「僕が死のうと思ったのは」も披露されましたが、お客さんの反応はどうでした?

「歌詞がはっきり聴こえるようにしたいって思ってたんですけど、曲の持っているパワーがあまりにもすごくて、茫然としている人も多かったですね。歌い終わった時、一瞬、“あれ? ダメだったかな?”と思うくらい、放心状態みたいになってる人もいて(笑)。もちろん、ちゃんと伝わったなっていう手応えもありましたけどね。」

──すごいパワーですよね、確かに。まず、“僕が死のうと思ったのは”というタイトルもとんでもないインパクトだし。

「最初はね、“もっと前向きなイメージのタイトルに変えるんだろうな”って思ってたんですよ。私もいろいろアイデアを考えてたんですけど、スタッフから“このままでいいよね”って言われて。私としては“うん、それならそれで全然構わないですよ”っていう感じだったんですけどね。もしかしたらネガティブな想像をする人もいるかもしれないけど、最後までちゃんと聴いてもらえたら、実は前向きな曲だっていうのが分かってもらえると思うし。」

──なるほど。この曲を最初に聴いた時の印象はどうだったのですか?

「泣くのを堪えながら、放心状態になってましたね。」

──ライヴのお客さんと似たような感じですね。

「そうですね(笑)。とにかく“すごい曲だな”って思って…。最初の予定では、“今回のシングルはアップテンポにしよう”っていう話だったんですよ。その方向で制作を進めてたんですけど、amazarashiさんからこの曲をいただいた瞬間に、そんな予定なんか全部吹っ飛んじゃって。スタッフも私も含めて“この曲を歌いたいよね”って。」

──歌詞にも共感できた?

「うん、もちろん。誰でも似たような経験があると思うんですよね。死んじゃいたいとは思わなくても、気持ちがどんより曇っていて、生きるのが辛いなっていう時期はあるだろうし。一番最後の歌詞(《あなたのような人が生きてる 世界に少し期待するよ》)を聴いてもられえれば、全然ネガティブな曲じゃないってことが伝わると思うんですよね。好きな人、大事な人がいるから頑張れる、生きていられるってことも、もちろんあるし。」

──個人的には《死ぬことばかり考えてしまうのは きっと生きる事に真面目すぎるから》というフレーズが心に残りました。これって、美嘉さんの印象にもつながるなって…。

「私もね、その一行でやられたんですよ。“そうか、確かに”って。救われるような感覚もあるし、歌っていると心が安らぐんですよね。自分自身が背中を押されるし、元気が出る。そういう意味でも、大事な曲になりましたね。」

──レコーディングの時も自然と気持ちが入ったんじゃないですか?

「やっぱり“歌詞をしっかり伝える”ということは意識してたんですけど…歌っていると自然とそうなるんですけどね…最初はこの曲の難しさに対応するだけで必死でした。amazarashiさんの曲って、独特の譜割り(メロディーに対する歌詞の乗せ方)があって、言い回しとかもすごく個性的なんですよ。今までに歌ったことにないタイプの曲だったし、まずは(デモ音源を)完コピして、1カ所も変えないようにしようと思って。何度も何度も繰り返して聴いてたから、頭がおかしくなりそうでしたね(笑)。」

──でも、完璧に自分のモノにしてますよね。リスナーに語りかけるような歌い方も素敵だし、サビではロック的なダイナミズムもしっかり感じられて。

「ありがとうございます。もしかしたら、年齢も関係あるかもしれないですね。もし、もっと若い時にこの曲を歌っていたら、重みがないというか、単に“カッコ良いね”っていうだけになっていたかもしれないなって。30代だからこそ、良い意味の重さだったり、リアリティーみたいなものも出せるんだと思うんですよ。楽曲のメッセージを全部受け止めて、責任を持って歌えるというか。そこは変わってきた部分かもしれないですね。」

──30代になったからこそ、歌える歌というか。

「うん。実際、30歳になってからどんどん調子が良くなってきたんですよ。27歳くらいまではいつもモヤモヤしていたし、“若くてきれいなうちに終わりにできたらな”って思ったりもしてたけど、30代になったら“妖怪扱いされるまで生きよう”って(笑)。細かいことでクヨクヨ考えることも少なくなってきたし、本当にいい感じですね、今は。」

取材:森 朋之

(OKMusic)


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