2014-10-03

ねごと、振り切った2曲で伝える進化と挑戦――。

 夏のイベントラッシュを経て、ねごとが半年振りに放つ新作は、なんと“恋の両A面シングル”! ストレートな力強さに繊細な情景描写と、蒼山幸子(Vo&Key)の作詞・曲による対照的な2曲には、恋の熱量と4人の貪欲な向上心が存分に詰め込まれている。

──“恋の両A面”とは、なかなか大胆なキャッチフレーズですね。

蒼山 3月にミニアルバム『“Z”OOM』を出してから、シングルに向けて制作していく中で、今、どんどん進化していて意識も外に向いているバンドとしての意志を、きちんとアティチュードとして表したいという気持ちが生まれてきたんです。じゃあ、今まで表向きには扱ってこなかった恋愛に、スポットを当ててみてもいいんじゃないかと。

──ここまで明白な恋愛ソングって、もしや初めてでは?

蒼山 そうなんです。あとは恋愛という普遍的な題材を扱うことで、より多くの人に伝えていけたらいいなと。テーマが変わっても、ねごとの芯の部分は絶対に残っていく自信があったので、それなら振り切れるところは振り切ってもいいんじゃないかと思ったんですよ。

沙田 「アンモナイト!」なんてサビに《愛したい》とか《愛されたい》っていうワードが入っていて、びっくりしました。ここまで隠さず出すなんて、本当に振り切ったなぁと。ただ、だからってキュンキュンするようなサウンド作りをしようとしたわけでもなく。メロディーと乗っている歌詞が強かったので、その飛び込んでくる感じとグルーヴしたいな!って。

澤村 私も歌詞からかわいらしさより、意志の強さみたいのものを感じ取ったので、逆にプレイは力強くいきました。

藤咲 今までにないくらいストレートだもんね。最後のサビ前に出てくる《生きてる限り》とか、歌入れに立ち会っていて涙が出ました。そこで主人公の気持ちを考えながら…私は結構キュンキュンしながら弾いてたかもしれない(笑)。

──クラップも入ったラフで楽しい曲ですが、実際のところ作者の蒼山さんが描きたかったものは何でしょう?

蒼山 「アンモナイト!」に関しては、“今ある場所で生きていこう”という応援歌的な意味合いも強いですね。だから、歌詞に出てくる“きみ”だって、別に異性ととらえなくてもいい。音楽だって構わないわけで、とにかく夢見ることの楽しさを表したかったんです。サウンド的にも、アンモナイトならではの生き物感があるというか。アンモナイトって音的にもインパクトがあるし、歴史や記憶が刻まれている生き物であるところにロマンを感じて、チョイスしたワードなんです。なので、ぜひライヴではBメロの《アンモナイト!》をみんなで歌ってほしいですね。

藤咲 そういった熱を音源にもパッケージしたくて、先行して何度かライヴでやってから、レコーディングしたんですよ。そしたら演奏するたびかたちも変化していって、最終的にサビ始まりになりました。

──アンモナイト柄のオレンジを掲げているアーティスト写真もパンチありますよね。

蒼山 オレンジは、もう1曲の「黄昏のラプソディ」と掛けているんです。「アンモナイト!」が夢見ることを恐れない人の曲だとしたら、「黄昏ラプソディ」はソコに踏み込むことのリスクが分かっている人の歌。だから、切なさもあるし、レコーディングでも情景が浮かぶように意識して歌っていて、等身大で臨んだ「アンモナイト!」とは全然違うんですよ。だけど、両方キャッチーで新しさはあるし、対照的だからこそ組み合わせてみたら面白いんじゃないかと、今回両A面というかたちにしてみたんです。

沙田 「黄昏のラプソディ」は80年代のアイドルソングみたいなメロディーだったんで、キャッチーな部分も出しつつ、今、ねごとができるアレンジの妙が見せられたらいいなぁと。「アンモナイト!」が“すぐにでも会いたい!”って沸騰中の高校生だとしたら、「黄昏のラプソディ」はおじいちゃんでもいいかなぁ…みたいな。

──おじいちゃん!?

沙田 思い出を振り返る的な感じでもいいし、新たなおばあちゃんに恋しちゃってもいいし。大人っぽいサウンドとメロディーなんですけど、意外とどの層でも当てはまるような感じがしてるんですよね。

藤咲 そう。どんな恋愛でも当てはまる。時期的にも恋の始まりだろうと、真っ最中だろうと、終わっていようと、それぞれのとらえ方でOK。

澤村 そう言えば、歌詞を最初に見た時、私は男と男の恋愛なんじゃないかなぁと思いました。

──ええ!? どのへんから男性同士と解釈したんですか?

澤村 《あてのない僕ら》とか《あっけなく永遠のソーダ》とかっていうワードが切なくて! 一瞬で終わっちゃう関係なのかな?って、レコーディングでも切なく叩きました。

蒼山 まぁ、解釈は自由ですから(笑)。(沙田)瑞紀のギターリフが入って、すごくカッコ良い曲になったし、こんな曲を女の子4人で演奏するっていうのが面白いですよね。

沙田 サウンドも歌詞も今まで以上に振り切れてる上、それに付随してビジュアル面でも新しいことをしようと、みんなでアイディアを盛り込んだんですよ。そのへんからも“攻めてる”感が伝わったら嬉しいですね。

藤咲 撮影でも、今回は意識して力強い視線を向けてます。

──10~11月には学園祭ツアーと、並行してさまざまなイベントにも出演と、この秋も忙しくなりそうですね。

澤村 福井とか山口とか青森とか、初めての場所も結構あって。準備でき次第「黄昏のラプソディ」も披露しようかと。

沙田 特に学園祭だと、この1日のために準備してる学生さんの熱意が見えるんで、毎回感動するんですよ。“もう、メッチャ頑張ろう!”ってシャキッとしますね。進化してるとはいっても、変に背伸びしてる感じもなくて。すごくシンプルに今、いろんなものが作れているから、次作のカラーバリエーションも楽しみにしていてください。

取材:清水素子

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