2015-10-19

GRAPEVINE、ツアー広島公演で高野寛プロデュースのニューシングルリリースを発表

GRAPEVINEが10月16日(金)、 広島クラブクアトロより全国ツアー『GRAPEVINE club circuit 2015』をスタートさせた。そして、同公演にて12月2日(水)にプロデューサーに高野寛を迎えたニューシングルのリリースを発表した。

ひと月前、野音でのワンマンライヴとしては6年ぶりとなる日比谷野音、大阪城野音公演を成功させたグレイプバイン。その余韻もさめやらぬうちに、全国6公演に及ぶ「club circuit」がスタートした。アルバムリリース関係なく行われる「club circuit」は毎回どの曲が演奏されるか予想できないところが魅力で、ファンにとってはすでにおなじみのライヴ形態だが、はたして今回はどのような演奏が行われたのか。ツアー初日となった10月16日、広島クラブクアトロ公演の模様をお伝えしよう。

定刻を少しすぎた頃、ステージに5人の姿があらわれる。観客の歓声を浴びながら鳴らした1曲目は「なしくずしの愛」。デカダンスの匂い濃厚な楽曲を一発目に持ってくる神経にまず惹きつけられる。いきなりノーブルな汚物を客席に浴びせかけるオープニング。そんな挑発的セットメニューを組んできた時点で、彼らが今、非常にアグレッシヴな状態にあることが伝わってくる。

そんなグレイプバインからライヴ前半、嬉しいニュースが届けられた。「本日16日、日付が変わった瞬間に新曲がリリースされました。その名も“EVIL EYE"。ロビーには看板が置いてあって、そこに歌詞も載っているので、写真に撮って拡大してみてください。ついでに興味のある人は、エロビデオも観てください」

このMCを解説すると、グレイプバインはツアー初日となるこの日、新曲「EVIL EYE」の配信をスタート。今回のリリースはそれ以前に何の告知もしていないサプライズでの発表。バンドにとって配信という形態は初。ライヴ会場にはジャケットを掲げた大きなパネル=EVIL BOARDが置かれ、そこに歌詞も掲示。さらに楽曲配信と同時にYouTube上で公開されたMVは、ヴォーカルの田中和将がSM嬢らしき女性に弄ばれるというスキャンダラスな内容(それを指しての“エロビデオ")――とにかくあらゆる情報が一斉に放たれ、それがことごとくこれまでにない新たなグレイプバイン像を提示していたのだ。配信を筆頭に「SNSを用いたゲリラ的アナウンス」「撮影&拡散を念頭に置いたライヴ会場でのパネル展示」「バズを生みやすいインパクトのあるMV制作」などの連動するアイデアは、バンドが現在のメディア環境を積極的に活用していく新段階に踏み出したことをあらわしている。

その直後に「EVIL EYE」をライヴ初披露。ファルセットのブレイクを挿みつつ、不敵に疾走するロックンロールにオーディエンスは激しい喝采を送る。本日発表されたばかりの楽曲への好リアクションは、彼らにとって大きな自信になったことだろう。

ライヴ全体に関しては、デビュー18年目のバンドらしい風格と、常に刷新を求める彼らのクリエイティヴィティが同時に見え隠れする内容だった。前述の「EVIL EYE」の直前に演奏されたのは「そら」という楽曲だったが、これは彼らのデビューシングル。アマチュア時代の楽曲と最新曲が平然と並ぶセットリストなどなかなか他で見られるものではない(リリース時期にして17年の差!)。また、「KOL」や「MAWATA」など最新アルバム『Burning tree』の中核をなす曲にも早くもアレンジに変化が加えられていて、バンドが今も活発なメタモルフォーゼ(変態)の渦中にあることがうかがえる。そして改めて感じさせられる音楽性の幅広さ。ポストロックからガレージロック、サザンロック、ブリティッシュ・インヴェイジョン、ブラックフィーリング、リズムアンドブルース、メロディアスな歌もの、80'sテイスト、ポップス……さまざまなジャンルを貪欲に呑み込み、その上で5人のバンドサウンドとして吐き出していくスタイルは、完成度や独自性などあらゆる面で高次元のクオリティを誇っている。

「たくさんしゃべらなければいけないことがあった気がするんですけど……」 ライブ後半、田中は告知の多さに戸惑いつつも、充実したいい表情を見せていた。 この日、グレイプバインが発表したニュースは「EVIL EYE」のリリースだけではない。12月2日には「EVIL EYE」とは異なるシングルを早くも発売。これはプロデューサーに高野寛氏(初顔合わせ!)を迎え、フレッシュなマテリアルに仕上がっているという。さらに来年2月18日(木)、19日(金)には恵比寿リキッドルームでゲストアクトを迎えて2daysライブを敢行……まさに怒涛の展開。今年後半から来年にかけて、バンドは再びギアをあげ、走り出す準備ができているようなのだ。

そう考えると、今のグレイプバインは完全に“攻め"のモードに入ったと見ていいだろう。長年在籍したレコード会社を離れ、スピードスター・レコードに移籍した2014年。そこからいよいよ本腰を入れ、体制を整え、進撃を開始した2015年。コンスタントに、じわじわと満ちてきた水が一気に溢れ出すように、彼らは今、キャリア何度目かのブレイクポイントを迎えようとしているフシがある。

すべてのパーツが花開くのは、どうやら2016年。それに向けて坂を上っていく今の彼らからは、嵐の前の静けさにも似た不思議な余裕が漂っている。

text by 清水浩司
photo by 小原実

■シングル「タイトル未定」

2016年12月2日(水)発売
【初回限定盤】(CD+DVD)
VIZL-993/¥1,800+税
【通常盤】(CD)
VICL-37119/¥1,000+税
※サウンドプロデュース:高野寛

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