2012-09-20
【Dragon Ash】ストレートに歌い鳴らす新たな決意
デビュー15周年を迎えたDragon Ashが放つダブルAサイドシングル「Run to the Sun / Walk with Dreams」。IKUZONE(Ba)のラストレコーディングとなる今作には、光に向かい走り続ける彼らの決意が詰まっている。
──ダブルAサイドシングル「Run to the Sun / Walk with Dreams」は、辰年である今年、デビュー15周年を祝う“イヤー・オブ・ザ・Dragon Ash”として一発目の新作ということで制作されたそうですね。
Kj「『LOUD&PEACE』(8月にリリースされた、15年分の楽曲をラウドなロックナンバーとピースな名曲群に分けてコンパイルした企画ベスト)のコンセプトでいこうとなって。そういうのもアリだなってとこから、俺もラウドな「Run to the Sun」と、包容力のある「Walk with Dreams」を作った感じですね。」
──「Walk with Dreams」は7月に配信限定でひと足先に発表されましたが、こうして2曲を対にして聴くとそれぞれの曲の良さがさらに際立ちますね。
Kj「いい手法ですよね。どっちも音楽的な違いとか面白さがあると思うし。気持ちとか音も含め、今自分はこうあるべきだと思うのは「Run to the Sun」だけど、すげーめっちゃうまく「Walk with Dreams」で韻踏んでるのとか、歩いてる音をサンプリングしてるのも面白いじゃん? 歩いてる時もあれば(「Walk with Dreams」)、走る時もある(「Run to the Sun」)から、結果的にいろんな人のいろんな状況にあてはまる一枚になればいいよね。」
──特に「Walk with Dreams」の歌詞は、挫折を経験したことがある人の方がグッとくるかもしれない。
Kj「多少立ち止まったことのある人だと入りやすいかもね。」
BOTS「サウンド面でも、どっちの曲もありそうでなかった感じがするというか。新しい部分は打ち出せたんじゃないかなって思うし。」
HIROKI「特に「Walk with Dreams」は、実際にライヴでやって印象が結構変わった。思ってた以上に激しい曲だなって。」
──ポストロックやネオシューゲイズ的な、切なさと轟音のバランス感が絶妙な曲ですよね。
DRI-V「「Run to the Sun」は100メートル走みたいにダッシュし切るイメージっていうか。ストレートに今のDragon Ashを象徴してる曲だなって思います。」
ATSUSHI「「Run to the Sun」のブリッジ部分が好きですね。みんながグッとくるであろうところで俺もグッとくるんで(笑)。」
──何より15周年を迎えたバンドが、これだけストレートにスピード感ある曲をやれているのが素敵ですよね。音楽への情熱が今も変わらずにあることが確認できるというか。
Kj「Aメロでいきなり《走らせてくれ》って歌ってますからね。守ってねぇなっていうか、どうぞどうぞってなるでしょ?(笑)」
──確かに(笑)。「ROCK BAND」以降、歌詞の面でも、ストレートな心情を歌った曲が生まれやすい傾向にあるように思うのですが。
Kj「あるね、あるかもね。この前も細美っち(the HIATUSの細美武士)に言われたんだけど、“お前らはもはや何やってもエモい”って(笑)。結構明確に、“Dragon Ashはこうあれ”って俺は思ってる部分があって。そこが今すげー明確だから、Dragonの楽曲を作ることに対して躊躇や迷いがないんだよね。」
──そんな今のDragon Ashらしさが詰まった今回のシングルは、ベースのIKUZONE氏の最期のレコーディング作ということもあり、彼への追悼盤というかたちでリリースされるわけですが。
Kj「当初、この2曲だけで出すことになってて。そこに新たに曲を作るとなると、追悼作にするにはなんかおかしくなっちゃうから、“生前、馬場さんがめっちゃ仲良かったふたりにリミックスを頼むのはどうですか?”って俺が言ったら、スタッフが“いいでしょう”と。」
──今回のリミキサーは、I.N.A.さん(hide with Spread Beaver等)とDIR EN GREYのベース、Toshiyaさん。Toshiya氏による「Walk with Dreams」のリミックスはこの曲のダークサイドをフォーカスしていて、まったく別の曲として響くのが面白い。
桜井「で、「Run to the Sun remix I.N.A.」のほうは馬場さんのベースをフィーチャーしたベースソングになってるしね。」
──そして、DVD付きのパッケージには、7月に全国5カ所で開催された追悼ツアーの冒頭で上映された「REST IN PEACE IKUZONE -memorial video-」も収録。ツアーに行けなかった人にとっても、15年のDragon Ashの軌跡を振り返る意味でも、とても貴重なDVDだと思います。
桜井「追悼ツアーは…いろいろあるけど、やったのは良かったと思います。」
Kj「俺、逆にライヴがあって心底良かった。ライヴで、現場で、ファンに会ったり、バンド仲間に会ったりっていうのが、これほど心強い、かけがえのないものなんだなって、自覚はしていても改めて思うことってあんまりないから。何年経ってもこの問題は咀嚼できないと思うから…じっくり考えるっていうよりは、ブンブン加速して振り切るってほうがまだ可能性が見い出せる、俺は。この先はもうね、あの人が何を望んでいるかじゃないんだよ。俺たちがどうするか、でしょ? ミュージシャンなんだし。だから、こっからの行動とか音楽人生とかで、あれがあってよりハンパじゃなくなったねって言われることがあれば、俺らにとっても何か意味があることだったっていうふうに思えるのかもしれないだろうし…。そんなさ、すぐ何かが塗り替えられるような出来事じゃないから。ちょっとずつ、ちょっとずつ、やっていくしかないなってことだよね。」
取材:早川加奈子
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