2012-08-20

【Plastic Tree】“いつ見たんだろう、この景色”っていうくらい やたらはっきりした映像があった

 秋に薄紫色の花を咲かせる紫苑。そんな花の名前をつけたニューシングル「シオン」は、やさしく儚げなギターの響きと、懐かしい光景に思いを馳せる切ない歌が胸に残る一曲。作詞作曲を担当した有村竜太朗(Vo)に思いを訊いた。

──今回の「シオン」は、竜太朗くんの曲ですね。カップリングには弾き語り版も入ってますが、もともとあんな感じで生まれた曲?

「そうですね。ギターを弾いてて…なんとなく。はっきりした何かがあったから作ったとかはなくて、ギターのコードが先でしたね。曲を作らなきゃっていう強迫観念みたいなので作った曲ではなかったです。とりあえずギターを触りましたって時に弾いてるような、手癖みたいなものっていうか、ジャンジャカジャーンってなんとなーく弾く曲…だけど曲じゃない、みたいな感じの。だから、なんとなーくできた曲ですね。」

──今年2月の「静脈」、6月の「くちづけ」に続いて、今作はメジャーデビュー15周年“樹念”シングル第三弾になりますが。

「『静脈』は今のPlastic Treeらしい曲。『くちづけ』はバンドがもともと持ってた要素が前面に出た曲かなーと思っていて。で、この曲っていうのはそのふたつともまた違っていて。Plastic Treeっていうバンドサウンドの一環だとは思うんですけど、プラっていうよりも曲として、なんかちょっと自立してるというか。バンドカラーがそんなに出ないようなイメージもあったりっていうか。ちょっと普遍的な曲で、あんまりやり手を選ばないというか。そういう曲ってたまにうちのバンドでもできるんですけど、それをシングルにするのもいいのかなっていうのもあって。」

──Aメロからずっと迷いや煩悶、痛みなどがぐるぐる続いてきて、後半の展開部分でパーッと自分の気持ちがくっきり見えるような感じがしたのですが。映画を観てるみたいな感覚っていうか。

「お、マジっすか!」

──そういう構成っていうのは意識してました?

「意識して作ってたわけじゃないけど…でも、そうですね、すごく映像的でした。ストーリーがあるとか、最初にお題になる感情があるとかではなくて、なんか…なんとなくできた時に、やたらはっきりした映像があって。“いつ見たんだろう、この景色”っていうくらい生々しい景色みたいのがはっきりあったから。だから、その映画的っていうのはすごく当たってます。その映像を言葉に落としていくっていうような作業だったんですね、歌詞を書く時は。実は、さっきの取材の時もインタビュアーの方が“映画的”っていう感想を言ってくれたんですけど、それがすごく自分の曲を作った時の気持ちとリンクしていて。伝わってるのがうれしいですね。あと、たぶん人によって曲の…なんていうんですかね、曲の持ってる軸みたいなものが変わる曲だなぁっていうのがあって。それがちょっと普遍的なところなのかなぁというか。聴いた人が感じる…なんかこう、その人なりの解釈がすごく生かされる曲だなっていう感じはあるんですよね。曲の中の感情みたいなのもあんまり、喜怒哀楽どろどろしてないっていうか。」

──そうですよね。この曲って、“こうなんですよ”ってメッセージを断定し切っちゃってる感じではない。

「まったくないんですよ。だから、そこがこの曲が持ってる特徴かなって、作り手的には思ってて。聴いた人それぞれがすごくハマるところがあるような気がしてるっていうか。」

──“シオン”というタイトルはどんなイメージから?

「さっき映像的って言ったんですけど、自分の中では明らかに“花”はあったんです。花の画があったんですよ。それは本当に見たのか、映画とかで見たのか、心象風景的に勝手にあるのか、よく分からないんだけど、でも明らかにその“画”が強くあって。で、調べてみたら“この花かな?”みたいのがいくつかあって、そのひとつがシオンだったっていう。この花かもしれないなぁと思って、花言葉を調べたら、曲のもともと持っていた、自分の中で持っていたイメージとまったく同じだったんで、“じゃあ、この偶然は必然かなぁ”と思って、この名前にしました。だから、その花のことをもともと知ってて曲を書いたとかじゃないです。全部作ったあとに、その花を調べたって感じですね。」

──ちなみに、その花言葉って?

「“追憶”とか、“あなたを忘れない”とか…そういうのですね。自分の中ではほんとに“追憶”なんですよ、この曲のイメージは。歌詞なんかもそうですね、振り返ってばっかりなんで。だから、その花言葉を見た時は、“あぁ、間違いなくこれだ”って。その時はなんか鳥肌立ちましたね(笑)」

──カップリングでは、最近のライヴでもずっと演奏されている「まひるの月」と「エーテルノート」をリビルドというかたちリメイクされていますが。

「そうですね。今回はかなり…特に『エーテルノート』は“そもそもどういうイメージで作ったっけ?”っていうところまで掘り下げましたね。俺が作ったわけじゃないですけど、俺がこの曲を聴いた時のイメージはこうだった!みたいなことを伝えて。やっぱり当時の初期衝動にはかなわない部分っていうのはあるんですけど、だけど当時できなかったことが今はできるから。それは自分的にもそうだし、技術的なところもそうかもしれないし。それがうれしいですね。最初にその曲を作った時のイメージとか、そのイメージから派生したものがライヴを経て、要らないものは省かれて、必要なものが足されてっていうところも今はよく分かるし。それで今回、今の新しいメンバーで再構築できるっていうのは、やっぱりいい…恵まれたことだなぁと。」

──今作リリース後、9月には東名阪ツアーが決まりましたね。

「『くちづけ』と『シオン』、ふたつのシングルに対してのツアーです。ツアー自体、結構久々なんで、すごく楽しみ。早く来ないかなぁ、みたいな。どういう感じでいこうとかはあんまり考えてないです。とにかくライヴやりたいってことだけで。やっとできるライヴだから、一本一本大事にしたいですね。“やっとライヴできるんで、来てください!”…そのひと言に尽きますね。」

取材:舟見佳子

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