2011-12-20

L’Arc~en~Ciel、もっと音楽的にレベルの高いところを 挑戦しないと、やる意味がない

 2011年5月には東京 味の素スタジアムでの『20th L’Anniversary LIVE』(2Days)、9月からは全国5都市を巡るツアー『20th L’Anniversary TOUR』の開催と、バンド結成20周年を精力的に活動してきたL’Arc~en~Ciel。その結成20周年第三弾シングルとなる「CHASE」がリリースされる。


 【珍しく、バンドらしい 作り方をしましたね】

──ニューシングル「CHASE」は映画『ワイルド7』の主題歌となっており、近未来的な匂いがあり、かつスケール感のある楽曲だ。その制作はどのように始まったのだろうか。

「今年はL’Arc~en~Cielの20周年で、アルバムも作るということは決まっていたんですね。その選曲会の時に数曲提出したんですけど、それとは別に、シングルっぽい曲を書いてほしいっていう話があったのかな。…シングルっぽいってなんなのよ?というのはあったんですけど(笑)。確か、サビのシンセのリフみたいのが思い付いて、そこから作り出したような。で、二回目の選曲会の時に、この曲もレコーディングしようということが決まって。その時点で、曲にもうちょっとヤンチャなところがあったらもっといいのにな、って俺自身は思っていて。そうしたらユッキーが、“こういうのもあるよね、こういうのもあるよね”っていう話をしてくれたんです。その段階で、映画『ワイルド7』のタイアップの話がきたんですよ。映画のラッシュを観せてもらって、“じゃあ、この曲をもうちょっとこういうふうにしたいよね”みたいな、“このままじゃなくて”っていう話がhydeから出たのかな。曲がメンバーの気持ちいいかたちに到達してないんだったら、自分的には、それはそうしたいと。自分でも、もっとヤンチャにしたいっていうこともあったから、じゃあ、みんなでいろいろできたらなっていうことで、スタートしたんですよね。そこからhydeに、ヤンチャっていう話をしたかどうかは覚えてないんですけど、映画から受けた印象もあったのか、hydeから出てくるアイデアが、ワイルドな方向だったりして」(ken)

「もっとこうロックに…ワイルドにしたいなということでね。映画の本編が終わって、エンドロールで流れるってことは決まってたから、自分が持ったイメージで進んだほうが、カッコ良いかたちになると思ったんだよね。最後、曲が流れて、相乗効果でカッコ良いと思えるような曲にしたいと思いましたね。それでああいうイントロだったり、Aメロが浮かんだんです。結果的には、サビ以外の部分は僕が考えた感じかな。ただ今回、kenちゃんとふたりで作っていったっていうよりは、他のメンバーも、結構あーだこーだ言って。ユッキーも打ち込みをやってくれたし。テッちゃんもメロディーを考えたりとか。みんなでいろいろやったんですよね。だから、L’Arc~en~Cielにしては珍しく、バンドらしい作り方をしましたね」(hyde)

「kenちゃんのデモを基にhydeを中心に4人で意見を出し合って作っていった感じなんですけど、そういう作り方をしたのは、『DRINK IT DOWN』以来でしたね。『X X X』もある意味そうでしたけど、今回はさらにみんなで作った感じ。作曲クレジットもken/hydeになっています」(tetsuya)

──よりバンドらしくメンバー全員が意見を出し合って制作された今作。その結果それぞれのパートはどのようなものになったのだろうか? まず歌詞についてhydeに訊いた。

「映画『ワイルド7』にバイクで獲物を追跡するイメージ、狙うイメージがあったので、それを自分の中にあった、首都高を走るイメージと混ぜていった感じ。“手の鳴る方へ”ってワンフレーズがあるけど、鬼ごっこにかけてるんですよね。サビのコーラスも一ケ所“鬼ごっこ”って歌ってる。ここは“CHASE”と“鬼ごっこ”をかけてるんだよね。もともとクールな歌詞だったと思うんだけど、そこにちょっと三枚目っぽさ…キャッチーさを入れたっていう感じかな」(hyde)

──今回の歌詞は英語と日本語を混ぜて書かれているが、英詞の“Calling”と“降臨”が対になっていたり、日本語でも英語っぽく歌っている部分が特徴的だ。もともと、英語で歌うほうがいいと思っていた曲なのだろうか。

「あー、かもしれないですね。でも、日本でリリースする場合は、日本語をできるだけ使いたいっていう気持ちがあるんですね。それは、日本語をなめてるとか、英語のほうがカッコ良いとか、そういうことではなくて。単純に、日本語を使うほうが、よりキャッチーだろうっていう意味なんですけどね。でも、この歌詞は日本語と英語というところでは、いろいろ試行錯誤しましたね」(hyde)

──そんな中、L’Arc~en~Cielが打ち出す音楽、さらにはhyde自身が考えるロックとは? という点にも触れてくれた。

「L’Arc~en~Cielは、楽しい以上のことを追求してる。エンジョイしてOKじゃなくて、もっと音楽的にレベルの高いところを挑戦しないと、やる意味がないってところにきてるバンドだと思うんですよね。やっぱりね、例えばここでコンサートあるからとか、ある意味仕事として集まるから、もっと研ぎ澄まされたバンド演奏をしようとする。よりクオリティーの高い音楽を作り出そうとするんだと思うんですよね。ロックということに関しては、いろんな角度があるし、個人によって定義が違うと思うから、そういう意味で、すごく広い意味を持ってて、難しいけど…。でも、面白いなぁと思ったのは、もうだいぶ前になるんだけど、モーニング娘。が『LOVEマシーン』をリリースした時、ロックだなと思ったのを覚えてますね。こう…業界をなめた感じもあったし、ものすごく勢いもあった。はみ出してたんですよね。そういう意味では、曲がポップスであっても、ロックを感じる方法ってたくさんあるから、一概になんか…言葉にするのは難しいですね。反抗とかもそうだと思う。でも、今回の曲に関して言えば、Aメロを聴いて、大概の人はロックって言うんじゃないかなと思う。この曲を聴いて、ロックじゃないって言う人は…よっぽどひねくれてるか…スラッシュメタル以外はポップスと思ってる人か、どっちかだろうなって(笑)。そういう意味では、僕の中では、非常に分かりやすい、ひとつのロックのかたちだと思ってるんですよね」(hyde)


 【中学生の自分が聞いたら、 ビックリしますよね(笑)】

──また今作は1番と2番でフレーズを微妙に変化させ、細かく練られたギターリフが印象的だ。

「原曲を作っていた時は、もうちょっとフレーズっぽいギターというか、シンセの合間を縫うフレーズを弾いていたんです。けど、もうちょっとワイルドな感じを出したいなっていうところで、どんどんリフのほうへいきましたね。そもそもリフだなと思ったのは、メンバーでアレンジをしている時に、hydeがリフっぽいものを弾いていたんですね。それもありだなと思って。じゃあ、こんなリフはどうだろう?っていうのを組み立てていきましたね」(ken)

──そして、kenがギタリストとして今、追求していることについても語ってくれた。

「音色、かな。ひとつの音色で弾いたとしても、そのひとつの音色の中でいろいろとさらに音色を付けていけるというか。ひとつのアンプで録るとして、この音の中でも音色をいろいろ出していくっていうことですね。あとは、より気持ち良く指が動くような練習をしていますね。そういう音色を出すためには、自分の思った強さで押さえたり、弾けたり、指がそういうふうに動かないといけない。それがもうちょっとスムーズにいくためには、ある程度意図的にできるようにしておかないと。やっぱり何も考えずに曲に向かいたいじゃないですか。曲の練習とは別に、自分の頭の中と手がより自由に動くようにっていう練習をしてますね」(ken)

──ベースパートに関してはシンセベースと生ベースが共存したかたちとなっている。

「『ワイルド7』のイメージで、kenちゃんの原曲をさらにデジタルな方向にしようと。そういうアイデアの中で、シンベを入れることになったんです。ただ、シンベが最初から最後まで貫いている中で、どういうふうに生ベースと共存させるか、ということを考える必要があって。ミックスも難しかったですね。ちゃんとしたオーディオで聴かないと、生ベースは聴き取れないかもしれないですけど。ただ、Bメロは1小節ずつコードが変わったり、サビの頭もギターは1小節ずつ動いているんですよ。でも、サビ部分のベースは動かないように、分数コードを活かすかたちを提案しました。サビにいってからもベースのコードが変わると、どっしりした感じが出ないと思ったんですよ。その提案にkenさんからOKが出たので(笑)、ベースはステイして、後半のサビを繰り返すところでだけ動いています」(tetsuya)

──また、ギターのリフはtetsuyaが考えた譜割が採用されているそうだ。

「イントロのギターリフにはすごくこだわりました。ワイルドなニュアンスを出しつつ土臭くないというところにもっていきたくて、いろいろ弾いてもらったんですよ。担当パートが何であれ、意見を出し合って作りますね」(tetsuya)

──そして、yukihiroによるドラム。こちらもギター、ベースと同じく一筋縄ではいかない構造になっている。どのようなコンセプトがあったのだろうか。

「最初は全編4分打ちだったんですけど、別のパターンも試してみたくて、結局サビのパートだけ4分打ちになりました。こういう曲調でドラムが4分打ちっていうのは、すごく分かりやすいし、ハマらないわけはないんですけど、そこを外してロックバンドのやるダンスミュージックになればいいなと思いました。ああいうシンセのシーケンスから始まったら16ビートが浮かぶと思うんですけど、それに対してのリズムは8ビートでもカッコ良いって思っていて。ロックバンドとダンスミュージックを融合させようとした時に、テクノの4分打ちには勝てない部分があると思うので。ロックのアプローチとして4分打ちにしなくてもカッコ良い、ダンスミュージック的なビートが作れるんじゃないかなとは思ってます」(yukihiro)

──加えて今作はシンセベースの役割が大きく、そこには彼の手腕が振るわれている。

「僕自身は、16分であんなにベターッといくのは、あんまりやらないですね。カッコ良いとは思うんですけど、自分でやるのはちょっと恥ずかしい(笑)。ヴォーカリストが、こういう詞は歌いづらいっていう、ちょっと恥ずかしい言葉とかあるじゃないですか。それに近い気がします。打ち込みをやってる人が16分をベターッと打ち込むのは勇気が必要な気がするんですよ。でも、今回は自分の曲じゃないし、アレンジもこういう感じだから、ここでやれるんならやっちゃおうって(笑)」(yukihiro)

──そして、12月28日には『20th L’Anniversary LIVE』のDVDリリース、2012年3月からは『L’Arc~en~Ciel WORLD TOUR 2012』がスタートし、さらには4年3カ月振りの待望のニューアルバムがリリース決定などトピックスが盛りだくさんだ。

「『20th L’Anniversary TOUR』が、すごくいい感触なので、この勢いを保ったまま海外ツアーに臨みたいですね。海外だからといって、変に意識したり、力んだりせず、普段日本でやってることをそのままやれば問題ないと思っています。僕らが中~高校生の頃は、20年も第一線で活動し続ける日本のバンドはいなかったんですよね。海外でライヴをすることもそう。20年もバンドが続いたり、海外でヘッドライナーツアーをすることになるなんて夢にも思っていなかった。それが実際、ここまで続いて、マディソン スクエア ガーデンで単独公演ができるなんて、中学生の自分が聞いたら、ビックリしますよね(笑)」(tetsuya)

「アルバムに関しては半分はシングルなんで、すごくキャッチーなアルバムになっていると思うんだけど、シングル以外の曲は結構ね…僕にとっては、リアルな肌触りの曲が多いって印象。フォークみたいな感じ?(笑) 自分的には、あぁ、これ、歌詞だけでいいなぁって思えるような詞が書けたんですよね。だから、僕みたいなおっさんが聴くと、すっげぇカッコ良いアルバムになってると思いますよ」(hyde)

構成:高木智史

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