2025-06-16
MUCC、「Daydream 1997」ツアーファイナルレポ
何時どこで生まれ、何をどれだけ摂取し、どのような環境の中で生き抜きながら、いかにその特性を獲得してきたのか。
MUCCというバンドに関するトレーサビリティが赤裸々なほどに提示された最新アルバム『1997』を今春に発表したあと、彼らが週末ごとに各地を廻って続行してきたのは[MUCC TOUR 2025「Daydream 1997」]だ。
1997年に始動したMUCCが、これまでにどのような音楽たちと接しながら、どのようにライヴを積み重ね、唯一無二なバンドになってきたのかということ。
それをまずはアルバム『1997』をもって自ら証明し、そのうえでライヴの場でもバンドとしてのアイデンティティを実証していくことになったのがこのツアーだったと言えるだろう。
なにしろ、トレーサビリティの明確さはそのまま信頼性にもつながる。
「川崎!今日はツアーファイナルということで、最後まで思いっきりMUCCを感じて帰ってください。一緒に良いライヴにしていきましょう。よろしく!!」(逹瑯)
ツアー初日の新潟 LOTS公演、ツアー中盤のZepp Shinjuku公演と観る機会を得てきた筆者からすると、今宵の川崎 CLUB CITTA' で繰り広げられたライヴは、MUCCが自らアルバム『1997』の世界を“超えてみせる”場にもなっていたのではなかろうか。
何故なら。全16曲にものぼる収録曲たちを余すところなく実演し、それを夢烏(=MUCCファンの総称)たちと密に共有していくことになった今ツアーを通して、ライヴバンド・MUCCは各曲を音源以上の演奏クオリティ、原曲を超える粋なアレンジメント、録音物とはまた異なるダイナミズムと表現力をもって、アルバム『1997』の持つより深い味わいを堪能させてくれることになったのである。
スカロックビートの切れ味と躍動感がいっそう増した「桜」、リフトダイバーの数がますます増加していた中でミヤの弾くギターが冴えわたっていた「invader」、逹瑯の卓越したヴォーカル技術が発揮されていた「蜻蛉と時計」、YUKKEの発するグルーヴを軸にしながらダンスチューンとしての輝きに磨きがかかっていた「B&W」、フォーキーな旋律と物語性を持った歌詞に機微を感じる「October」。
あるいは、ヴィジュアル系という言葉が生まれる以前にお化粧バンドだの黒服バンドだのと呼称されていた先駆者へのオマージュが詰まった「Round & Round」に、90年代オルタナティヴメタルの栄華を彷彿とさせる「Guilty Man」、そして世界に通用する日本発ミクスチャーロックを90年代に確立した彼のバンドへの愛にあふれた「Boys be an Vicious」などからも、MUCCがこのツアーを遂行していく中でどれだけの鍛練を経てきたのか、ということはよくわかった。
しかも、今宵のライヴでは後半へ向かえば向かうほどさらに内容がディープさを強めていったところがあり、90年代どころか80年代の空気までをも内包した「LIP STICK」では、サポートメンバーの吉田トオルがステージセンターまで躍り出て、ショルダーキーボードを操りながら『F1グランプリ』のテーマ曲として一斉を風靡した、T-SQUAREの「TRUTH」を彷彿とさせる音色とフレーズで場内を沸かせることに。
あげく、シリアスさと普遍性をたたえた「不死鳥」ではMUCCの3人のみならず、吉田トオル、サポートドラマー・Allen(※ただし彼はオフマイクでの歌唱)も含めた5人でアカペラを披露するというバンド史上初と思われる試みも実現し、まさに“ツアーの中で曲が成長していった結果”をありありと見せつけられるに至ったのだった。
かと思えば、アルバムの中では“匂わせ”程度だった要素が、いよいよこのツアーファイナルでは赤裸々に明かされる事態も発生。
なんと、あらたにイントロ部分が付け加えられていた「△(トライアングル)」では、限りなくKing Crimsonの「21st Century Schizoid Man」に近いフレーズが奏でられたのだから面白過ぎる。
ちなみに、この曲の間奏についてはおそらくRed Hot Chili Peppersの「Can't stop」からインスパイアを受けたものと推察出来そうだ。
この手の音楽的な遊び心と洒落っ気があふれるアプローチは、とにかく聴いていて楽しい。いいぞもっとやれ(笑)
…と思っていると、カオスみの強い「蒼」の間奏では、これまた音源では若干控えめに挿入されていたNirvanaの「Smells Like Teen Spirit」の超有名フレーズが、ライヴだからこそのMUCCスタイルにて観衆を煽っていくことになったのだから堪らない。
喰らってきたものを血肉にし、さまざまな経験もしてきた中で、MUCCは今ルーツをつまびらかにすると同時に、自分たちにしか生み出せないオリジネイターとしてのパフォーマンスを手中にしたのだと考えると、これはとても感慨深いこと。なおかつ、やはりアルバム『1997』は彼らにとって重要なマイルストーンになったと言えるはず。
「俺たち、あなたたちひとりひとりの未来に、お互いがなくてはならない存在で在り続けられるようにこれからも頑張っていきましょう。たとえどんな未来だろうが、乗り越えて進んでいこうぜ!」(逹瑯)
このあと、本編ラストに向けてのセクションで聴けたのは逹瑯のこの言葉から始められた「空っぽの未来」、場内がシンガロング大会となった「ニルヴァーナ」、ミヤからの号令で全夢烏が“肩を組みながら”おおいに盛り上がるというイレギュラーな光景を呈した「名も無き夢」。
どれもそれぞれに光と影の両面をMUCCらしい手法にて描いた曲たちであり、この3曲は本編ラストに向けての布石になっていたとも受け取れた。
〈Daydream Believer 愛をもっとくれ そんなに もう 時間がないんだ〉
[MUCC TOUR 2025「Daydream 1997」]の最後に、高らかに力強く奏でられた「Daydream Believer」の中にあるこの歌詞。
それはきっとMUCCにとっての切実な現実として歌われたものに違いない。…いや、違う。何もこれはMUCCにとっての話だけにはとどまらないと捉えた方が良いのかも。
永遠とは概念にしか過ぎず、命には限りがあり、明日にもまた生きていられる絶対的保障などどこにもないという現実。
その連続が日々だとするならば、彼らにとってもわたしたちにとっても〈時間がないんだ〉という言葉は同じ重さを持つものとなる。
でも、だからこそ。MUCCもわたしたちも、ライヴという名の魂を燃やせる場所が大切で仕方ないし、愛しくてならないのだと思う。
「MUCCは今年で28年になりますけど、このツアーは一番短く感じました。(中略)
そして、今回アンコールではいろんな曲をアレンジ変えてやってきたんですが、何がMVPかって言ったらやっぱコレしかねーだろと」(ミヤ)
ミヤのこのフリから始まったのは、切なさと哀愁の漂う名曲「最終列車」。ただ、ここで披露されたのはYUKKEの長尺フランス語リーディングを冒頭に添え、途中までをシャンソン風に仕立てたバージョンで、筆者の耳には〈merci beaucoup,je t'aime,je t'aime…〉というやけに甘ったるい台詞が入ってきたことをここに付記しておきたい。
ある意味、これは受け手側を楽しませ尽くしつつ、演者側もライヴを楽しみ尽くそうとする姿勢のあらわれのひとつ、であったものと受け止めるべきだろう。
そう、我々に与えられている時間は限られているのだから。楽しいことはひとつでも多い方がいい。
かくして、このツアーで再び脚光を浴びることになった「1997」ではフロアに巨大サークルピットが出現し、MUCCのライヴを締めくくるのに欠かせない「蘭鋳」ではクラウドサーファーも大量発生しつつ、無事に大団円を迎えてひとまず幕を閉じた[MUCC TOUR 2025「Daydream 1997」]ではあるが、最後にミヤがこのライヴのとある場面で述べていた言葉もしかと記しておこう。
「上半期はこれで終わるけど!また『1997』を持って今年いっぱい全国を暴れまわってくるから、よろしく!!」(ミヤ)
PHOTO:冨田味我
TEXT:杉江由紀
MUCC TOUR 2025「Daydream 1997」
2025年6月7日(土)CLUB CITTA'
SETLIST
1. 桜
2. invader
3. 蜻蛉と時計
4. G.G.
5. B&W
6. Round&Round
7. October
8. Boys be an Vicious
9. Guilty Man
10. LIP STICK
11. 不死鳥
12. △(トライアングル)
13. 蒼
14. 愛の唄
15. 空っぽの未来
16. ニルヴァーナ
17. 名も無き夢
18. Daydream Believer
EN1. 最終列車
EN2. 1997
EN3. 蘭鋳
≪ライヴ情報≫
■『MUCCメンバー完全プロデュース生誕公演 2025』
▽ミヤ
【釈迦です。】Day1 闇 2025年7月26日(土) 水戸VOICE OPEN16:15 / START17:00
【釈迦です。】Day2 暴 2025年7月27日(日) 水戸VOICE OPEN15:15 / START16:00
▽逹瑯
逹瑯四十六大祭『宿儺』2025年8月21日(木) 恵比寿LIQUIDROOM OPEN17:00 / START18:00
<出演> MUCC、逹瑯 solo works
※逹瑯solo works サポートメンバー YOUSAY、LiN(ユナイト)、リウ(メトロノーム)、KEN'ICHI、後藤泰観、足立房文
▽YUKKE
2025年11月5日(水) CLUB CITTA' ※詳細後日発表
詳細はこちら https://55-69.com/news/25561
■MUCC主催イベント「LuV Together 2025」
2025年9月6日(土)水戸市民会館 グロービスホール
出演:MUCC/cali≠gari/デラックス×デラックス/DEZERT/lynch.
※チケット詳細は後日発表
≪リリース情報≫
■FULL ALBUM『1997』 発売中
【初回限定盤(CD+Blu-ray)】 品番:TKCA-75270 価格:6,900円(税込) スリーブケース+40Pブックレット付
【通常盤(CD)】 品番:TKCA-75271 価格:3,400円(税込)
※収録曲詳細 https://55-69.com/news/24275
「1997」配信リンク https://tjc.lnk.to/MUCC_1997
「Daydream Believer」MUSIC VIDEO
≪インストアイベント≫
■FULL ALBUM「1997」発売記念インストアイベント「ムービー&プリントムッ倶楽部」
【プリントムッ倶楽部】2025年6月14日(土) タワーレコード新宿店 [YUKKE]12:00~
詳細は徳間ジャパンコミュニケーションズHPをご覧ください。
https://www.tkma.co.jp/jpop_news_detail/MUCC.html?nid=17707
【MUCC OFFICIAL】
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<MUCC Official X> https://twitter.com/muccofficial
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