2014-06-05
高橋 優、“復讐を肯定しない”っていう歌を書きたかった
TBS金曜ドラマ『アリスの棘』主題歌として放つシングルは、高橋優作品の中でも最上級と言えるアッパーサウンドに仕上がった。デビューから丸4年を間近に、さまざまな経験を糧に進化し続ける彼の心持ちを訊いてみた。
──かなりアッパーなサウンドに仕上がってますが、ドラマ主題歌という意味で、その内容から意識的に?
アッパーにしようというのはリクエストとしてきてたんですよ。バンドサウンドで、激しいロックサウンドが聴こえてくる感じがいいって。そういうの好きなんで、それなら楽しんで躊躇なく振り切ってドカンといっちゃおうって、ありったけ激しくしました(笑)。
──(笑)。かなりの激しさだよね。でも、イントロはローギアから…
スライドでブ?ンと入る感じでベースを鳴らしたいなって、プリプロの段階から思っていて。そこからシンバルが入って、SE的なイントロみたいなのがあって、で、一気に激しくなるという。その導入部分を自分の中ですごく強くイメージしながらやってたんですよね。イントロが大事というのは、ずっと考えてて今年の裏テーマみたいになってます。
──ドラマは復讐劇ということだけど、基軸になった考えというか、キーワードというのは?
“復讐を肯定しない”っていう歌を書きたかった。それを肯定しちゃったら、僕の嫌いなタイプの音楽になるような気がしたんですよね。
──嫌いなタイプの音楽って?
音楽って楽しかったりとか嬉しい時に聴きたいし、悲しい時に励ましてくれたりとか、自分の中でプラスのものにしたいのが、僕の中での音楽なんですよね。だけど、例えば“やられたからやり返せ”とか“殺されるなら、逆に殺せ”と歌ったら、一時は、それで鼓舞するような気持ちになるかもしれないけど、“そうやって間違ってきたんじゃないかよ”って言いたいこといっぱいあるんですよ。だから、いい加減気付いたほうがいいのは、やられたらやり返すという憎しみの連鎖みたいなものが広まっちゃいけないってこと。復讐してやり返して、成功しておとしめて終わり、みたいな。そういうのが流行らざるを得ない世の中なのかもしれないけど、その後どういうことが待っているかというもののほうにスポットライトを当てたかったんですよね。なんか、「16歳」で《やられたままやり返すことでしか愛も憎しみも 広がっていかないんだとしたら 僕はせめて誰かを愛したい》と歌っていた奴が、30歳で“そういうこともあるぜ”みたいな感じで歌っていたら、それは違うなって。
──確かにね。その「16歳」が入ってますけど、これは狙い?
もちろん、意図に満ちていますよ。
──原曲(インディーズ時代に発表したアルバム『僕らの平成ロックンロール』)と比べると、やさしいというか懐が深くなった感じがするね。
視野は少し広くなった気はしますね。でも、今でもこの歌を歌っていると主観なんですよ。“豚に真珠”っていう言葉が似合う奴っているよなと思うし、30歳になってもほとんど同じ気持ちで歌えるから、テーマが「太陽と花」と通じていたりもするし。そういうところで言うと、この歌ってタイトルが“16歳”というのがバランスがとれていて、当時の自分の気持ちだけど今でも内容的には変わっていない。でも、それに気付けるというのは少し違う視点から見れているのかもしれない。だから、主観な部分と、“あの時からこんなこと考えてたんだなぁ”という客観的な部分と、どっちもありながらレコーディングしている時は不思議な気持ちでしたね。
──一発録り? これ。
一発録りですよ、何発もやりましたけど(笑)、一番良い一発を。
──(笑)。もう1曲「以心伝心」、とても素直というかシンプルな感じ。子供に話しかけているような雰囲気で…。
この歌、ここ最近で一番自分のやりたいことをやれた曲なんですよね。言葉もそんなに多くなくて、言ってることがシンプルというか。単純なテーマとして、こういうことない?っていう話なんですよね。
──このイントロいいよね、心がほどけるというか。それもあって、分かりやすく、全ての言葉が考えずに入ってくるね。
考えずにって大事ですよね。考えなきゃいけない音楽なんて面倒臭い。分かる人にだけ分かってもらえればいいんだ、みたいなことは言い訳でしかないと思ってるので。だから、こういう何も考えなくていいとか、子供でも分かるようなことって、すごく大事だと思うようになってきて、これからのテーマの1個だと思ってます。
──シンガーソングライター高橋優の心の位置取りとして、今、真ん中にあったりするのかな?
ちょっと僕の中では一歩先をいく感じですね。だから、言葉を詰めて意味だけを探っていくというか、全部曲の中で言っちゃうのは、あまり好きじゃなくなってきたんですよね。余白をたくさん残して言葉は少なめで、なんだけど口ずさんでしまったり、耳に残ったりとか。カラオケで歌ってくれたら嬉しいですね。そういうメロディーラインとか言葉がある、音楽の根本の楽しい感じをもっとやりたいなって、ずっと思っていました。
──逆に「太陽と花」という曲は、求められて書いている前提があると思うけど、どういう心持ちになるのかな?
どちらかと言うと今までの延長線の上にあるんですけど、ただこっちも歌詞をすごく減らしたんですよね、詰めてない。メロディーの中にたくさん、譜割りをぎゅうぎゅう詰めにしてないんですよ。だから、言葉ひとつひとつに何かキャラクターを持たせたかったというか。あのドカドカって鳴っているアッパーの中に、どことなく聴こえてくるとかでいいから、言葉のひとつひとつが光るような感じになればいいのかなって。
──なるほどね。盛りだくさんですが、武道館ライヴの映像が同時発売で出ますね。素晴らしいライヴだったけど、自分が演じていたから客観視してみると?
めっちゃ冷静に観ましたよ。あらゆる…だから、エグい作業ですよ。自分のライヴを観るっていうのは、そりゃもう…残酷な作業だと思いますよ(笑)。うわ?みたいな、なんか…いろいろな思いで観ました。でも、自画自賛的になっちゃうけど、胸を張って“俺、こういう武道館のライヴやったんだよ”って友達とか、自分の身内にも胸を張って観てよって渡したくなるものができたので、観応えありますよ。Blu-rayも初めて出ますしね、ちゃんと時代に沿って(笑)。
取材:石岡未央
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