2014-07-17

Czecho No Republic、自由度が大きくなったから楽しい音源になった

 昨年11月にアルバム『NEVERLAND』でメジャー進出を果たし、そのポップでロックなサウンドで加速度的に注目度を高めているCzecho No Republic。メジャー第二弾となるニューアルバム『MANTLE』でも、そんな彼ら“らしさ”が炸裂している。

──昨年11月に出したメジャーデビューアルバム『NEVER LAND』は、今振り返るとどんな作品ですか?

武井 メジャーデビューするってことで過去の曲を9曲録り直したという構成だったので、ちょっとしたベスト盤みたいな感じですね。Czecho No Republicを紹介するには持って来いの作品だったんですけど、曲を作っている身としてはちょっと足踏みしちゃったなという気持ちのほうが強くて。なので、『NEVERLAND』以降、悶々としていたというか…。

──現メンバーでの最初の作品であるし、バンドをスクラップ&ビルドできたのでは?

武井 そういう感覚もあったはあったんですけど、もともと4人用に作っていた曲なので、それを無理矢理5人で鳴らしたから必要以上に派手になってたり。あと、その時々で全力を尽くしたレコーディングがやれていたので、改めて過去の曲に取りかかるというのが気持ち的に受け入れられなかったりして…っていうのが正直なところですね。

──1回完成させて100点のものを作っているから、それを壊してまた100点を作るようなものですからね。

武井 そうですね。その曲の本当の良さみたいなものを、もう1回見つめ直して録音するのって、やっぱり難しいじゃないですか。もう知りすぎちゃってるみたいなところがあるから。っていう悩みもあったという感じですかね。

──でも、アルバムを完成させてみての手応えはあったのでは?

武井 正直、半分ビビってたところがあって…“これ、大丈夫かな?”みたいな。一番、今までの音源の中で出すのが怖かったですね。

──結果的にCzecho No Republicというバンドの認知度を高めた作品になったわけですが、その反響については?

武井 それはすごい良かった。そういう意味で言うと、すごく楽しい音源だと思うんですよ。ただ、完全にそっちのイメージだけが付いたかなという印象も若干あって。なので、日々趣味嗜好が変わって、いろんな曲を作っているわけですけど、そのイメージがデカすぎて、自分で自分の首を締めてしまっていた…“そういうものを作らないといけないんじゃないか?”という錯覚に陥っちゃったり、いろいろ考えさせられる時間が多かったですね。

八木 武井さんが言ったように、そういうジレンマみたいなところは結構あって。『NEVERLAND』を出すまでは上り調子に進んできたところがあったんですけど、音楽的なところで平坦なところを辿っている感じがありましたね。まぁ、5人になって初めての音源なので、バンドとして新しくなったという意味はあったと思いますけど。

──アイゴン(會田茂一)さん、いしわたり淳治さん、片寄明人さんという3人のプロデューサーが入ったわけですが、その3人とやってみてはどうでしたか?

武井 すごい楽しかったです。勉強になったし、単純にプロデューサーの方と仕事をするのが初めてだったので、“ミュージシャンぽくなってきたな”って(笑)。片寄さんはフジファブリックの1stアルバムのプロデュースもやってるし、アイゴンさんとか、いしわたりさんとか、プロのミュージシャンの方に認知していただいただけでドキドキしちゃう(笑)。

八木 音源作りに関しても、プロモーションに関しても、1年生が“全然分からない”ってなってるような感じだったから、“うわっ、すごい!”みたいな(笑)。刺激がすごくあったので、若干地に足が着いていない状況でしたね。とにかく吸収する時間だったのかなと思います。

──そんな『NEVERLAND』を経ての今作『MANTLE』ですが、さっき『NEVERLAND』のようなサウンドに寄せないといけないと思っていたとおっしゃってましたが、そういう気持ちを抱えたまま制作に入ったと?

武井 はい。でも、曲をすごい自由にガンガン作った…どうパッケージされるかはあまり考えないで、ただ作って作って、という感じでしたね。だから、パッケージにする時に結構会議をしたというか…“どういうものにしましょうかね?”みたいな感じでした。

──13曲入っているわけですけど、候補曲はいっぱいあったと?

八木 30曲以上はありましたね。

──ということは、アルバムは新しい曲が多い?

武井 『NEVERLAND』以前の曲も入ってはいるんですけど…半分くらいがそうなのかな? やっぱり新しくできてきた曲のほうが自分のタイム感に近いんで、どちらかと言えば、新しい曲をやりたいですからね。時間が経つと作った時のピュアな気持ちが分からなくなっちゃうし。“どんな気持ちでこの曲を作ってたんだっけな?”ってなるから、新しめの曲を入れています。

──楽曲はどんどん作っていったとのことですが、どんな曲を作りたいとかはあったのですか?

武井 打ち込みっぽいものをすごくやりたくなっていたんですけど、あまり入れすぎても急すぎないかって。なので、打ち込みをちょっとやりつつ…やっぱり『NEVERLAND』との一番の違いは、タカハシと俺が半々くらいで1曲の中で歌いまくっていること。それはタカハシがいる以上は、そういう曲をやって遊びたいなとずっと思っていたからで、そういう曲をいっぱいやれて良かったなという。あとは…“Czecho No Republicらしさ”という新しいところは武器なので、それを活かしながら自分の音楽のエゴみたいなものも出したいっていう。それら全部を同居させるにはどうしたらいいのかみたいな感じでしたね。

──「Amazing Parade」はすでにライヴでも披露されていますが、アッパーだし、ライヴを意識して作った曲になるのですか?

武井 ドラムの山崎正太郎がこの2ndアルバムで今一度Czecho No Republicというものを提示するんだったら、ミドルテンポな曲ばかりだと守ってる感が出ちゃう…というか、ライヴのことを考えても、アップテンポな曲があったほうが絶対に楽しいよと言っていて。その当時、ミドルテンポの曲を無意識のうちに作っていることが多かったので、確かにみんなで歌う楽しい曲が欲しいなと思って作りました。なんかもう、楽しい感じの曲をピュアに作りたいという衝動に駆られたというか。

──リード曲の「No Way」は武井くんと八木くんの共作なのですが、どうやって作っていったのですか?

武井 これは一番最後にできた曲で。レコーディングに向けて出揃った楽曲に2?3曲を加えて練習している時があったんですけど、その時に「No Way」ができて…夜中にサビができたんですけど、経験上すぐに作らないと散らばってよく分からなくなってしまいそうな気がしたので、協力してくれる人を総動員したという感じですね。“こんなの思い付いた!”“よし、採用!”って感じで(笑)。

八木 セッションみたいなかたちでやってたんですけど、とにかく完成させたくて。時間もあまりなかったから、パッと思い付いたものをみんなで“これどう?”ってやってみて、どんどんかたちにしていったという。で、最終的にそれを武井さんが持ち帰ってデモにまとめた感じです。

──結果、Czecho No Republicらしいというか、ハッピーでポップなものに仕上がりましたね。やっぱりそういうものが今のCzecho No Republicのモードなのでしょうね。

八木 そういう仕上がりになったのは、今までやってきての統一感が出たというか、みんなが考えるゴール地点が似てきたのかもしれないですね。

──これもライヴで披露されていた曲なのですが、八木くんがサラリーマンを辞めた時の開放感から作ったという「JOB!」は?

八木 そのままですね(笑)。最初は“Czecho No Republicでできるのかな?”という感じだったんですけど、みんなが“やったらいいじゃん”って。演奏的にも熱い感じのパンクっぽい雰囲気になったし、新しい感じになる…スパイス的にいいかなと。

武井 どの曲をレコーディングするかって時に、各々のデモを聴いて全員が笑ったのがこの曲で。笑いが起きるっていいなって(笑)。単純にポップスと見ても、すごく歌メロがいい曲だったし、アイリッシュパンクみたいな後半の感じも俺は好きだったんでやりたいって思って。ドラムの正太郎も必要以上にやりたがってる感じはしましたね(笑)。実際、爆音で叩いていましたし(笑)。

──八木くんの曲はもう1曲、「Maridabu」があるのですが。これもちょっと変わったタイプの曲ですよね。

八木 前のアルバムまでは、わりと考えて作っていたところがあって…“こういう曲をCzecho No Republicでやってみよう”みたいな。だけど、意外とそういう曲って、う?んってなることが多いんですね。だから、最近は自由っていうか、何でもいいから自分の好きな曲を作ろうって思っていて。で、この曲を持って行ったら意外とみんなの反応が良くて、“これをやってみよう!”ってなって。だから、自由な風土が出来上がってきたような感じはありますね。

──それだけバンドが柔軟になってきた?

八木 そうかもしれないですね。バンドとして固まったからこそ、曲のバリエーションが増えても大丈夫だってなってきたのかもしれないです。

──ちなみに、この曲をバンド内でアレンジを進めていく時はどういう感じで進めていったのですか?

八木 最初はもうちょっとミニマムというか、可愛らしい感じがあったんですけど、バンドでやるにつれてサイケっぽく怪しい要素が増えていきましたね。

──言い方が悪いですが、こういう変な曲もCzecho No Republicがやればポップになるんだと思いました(笑)。

武井 変な曲(笑)。

八木 間違いないです、それは(笑)。ポップにならなかったら、ヤバかったんじゃないかと(笑)。

──個人的には「Clap Your Hands」のニューウェイブ的なテイストが新鮮でした。

武井 打ち込みの曲をやりたいってのがあったのと、The Strokesの新譜を聴いてミュートギターで構築したいってのがあって。で、“これ、バンドっぽくないんですけど…”という感じでデモをメールをしたら、みんな“いいじゃない! バンドでもやれるんじゃない?”みたいな感じだったので、“マジっすか?”みたいな(笑)。

──あと、最後の「2014年宇宙の旅」も印象的でした。

武井 これもまったく考えないで作りました。なんか最後になってましたね、アルバムの曲順を決める時に。

八木 この曲は面白いと思いましたね。曲の展開が変な感じなんですけど、ポップだし、歌詞もユーモアがあって、僕はすごい好きですね。

──すごく開放感があるので、この開放感のままアルバムが終わって、その余韻に浸れるというか。アルバムの最後にすごいいい曲だなと思いました。

八木 この曲はみんなが出した曲順のどの案でも最後でしたね。

──逆に「Amazing Parade」は1曲目かなと。

八木 そうですね、最初とケツは決まっていた感じですね。

──では、今作を作り終えて、どんな作品が作れた実感がありますか?

武井 音楽で楽しめたって感じかな。自由度が大きくなったから、楽しい音源になっているとは思うので。バンド的にもオリジナリティーのある音源だと思いますね。俺らは楽しく向かい合って作ったので、聴いて楽しい気持ちになってもらえるのが一番嬉しいですね。

八木 1st的なモチベーションで作りましたね。自信を持って“アルバムが出るぞ!”と言える仕上がりになったと思うので、みんなに配りたいです。

──そんなアルバムに“MANTLE”と名付けたというのは?

武井 バンドをやってきて、音楽をやってきて、自分の表現したいことがだんだん明確になってきたような気もするし、楽しいものとして音楽と向き合えるようになってきているので、音楽の活動も本質…コアな部分に近付きたいし、そういう音になったら嬉しいなと思って、地球の中心の“コア”の周りを囲う“マントル”というワードがしっくりくるんじゃないかということで、それをタイトルにしました。

──本作のリリースツアーが8月からスタートしますが、どんなライヴになりそうですか?

武井 楽しいライヴをしたいってのはずっと思っていることなので、来てくれた人みんなに楽しんでほしいですね。俺らも守りに入らないで思い付いたことは試していく…だから、ライヴごとに変わるものもがあるかもしれないです。あと、アルバムの曲のほとんどがライヴでやっていないので、その曲が外に放たれた時にどういう役割を持っているのかを確かめたいという気持ちが強いですね。“あ、この曲って盛り上がるんだ”みたいな(笑)。

八木 『NEVERLAND』から入って聴いてくれている人ももちろん楽しめるライヴになると思うので、ぜひこの『MANTLE』を聴いて遊びに来てほしいですね。僕らの演奏するテンションも高いと思うし。新しい曲をライヴでやるのが楽しみですね。

取材:石田博嗣

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