2015-12-01

清春、66公演に及ぶMONTHLY PLUGLESS 2015 『MARDI GRAS』がフィナーレへ

〈MONTHLY PLUGLESS 2015 『MARDI GRAS』 清春 Livin’ in Mt. RAINIER HALL〉が麗しきフィナーレを迎えた。

東京・渋谷のMt. RAINIER HALL SHIBUYA PLEASURE PLEASUREで2015年2月末から毎月何度かの週末、金曜と土曜に各日2公演ずつ行われてきたこのシリーズは、なんと33日間66公演に及ぶ至福の空間。最終夜に響く音楽をその目で確かめたいオーディエンスのさまざまな想いが場内を包んでいた。

清春の歌声に存分に浸ることのできるこのプラグレス形式は、三代堅と中村佳嗣のギターによる繊細かつ臨機応変な空間演出によって支えられていた。シートに深く座りながら、その場で即興的に組み立てられる演奏を味わう時間は、何物にも代えがたい。毎公演セットリストが変わることによって、演者と観客がクリエイティブな緊張感を共有できたことも非常に楽しい思い出になる。清春の楽曲に加え、バンド時代の楽曲、さらには多様なアーティストのカバー曲も披露されていたこのライヴ。11月に入ってからのラスト8公演は、これまでに演奏された曲達がすべて被り曲なしで総登場するという趣向となった。

午後6時を少し回った頃、場内が暗転する。特別な気持ちのこもった拍手に迎えられ、ゆっくりとステージ中央に歩み寄るシルエット。一部は「RUBY」で幕を開けた。清春の呼吸が近くで感じられるような臨場感こそが、この空間の魅力。この夜は、1曲1曲のぬくもりに大切に浸ろうとするオーディエンスの姿が目立った。「最終日になりました。特に感傷的にならずにやろうと思います。皆さんはどんどん感傷的になってください。僕はこれまで通り今日のベストを尽くします」この宣言通りに清春は歌い続ける。すべての楽曲が観客と過ごしてきた時空を愛おしむかのように躍動する。

「note」が放つ尊い輝きなど、忘れられない場面の連続に心は潤うばかり。「MELLOW」「ベロニカ」といった豊かなメロディに体を揺らすうちに、「ゲルニカ」の壮大な歌唱が響き、本編はあっという間に幕を閉じた。

アンコールを求める観客の声にも自然と力が入る。再びステージに現われた清春が語る。「最初は冗談みたいな本数だなと思ったんですけど、歌うたびに、“良かった前回”よりも今日は良くなるかもという気持ちで臨むことができました」。そんな彼のパフォーマンスを絶妙の呼吸で支えてきた三代と中村への感謝を示し、彼はこう続ける。「たくさん来てくれて、ありがとうございます。愛しています。いずれ演奏だけでこういう気持ちを伝えられたらなと思います。人より時間がかかってもいいから、ゆっくりゆっくり歩いて腕を磨いて、ちゃんと“ミュージシャン”と言えるような自分でいたい。その時も皆が目の前にいてくれたらいいなと思います」。集まったオーディエンスの一人一人の目を見つめながら語りかける。「HORIZON」「MELODIES」の心地良さに酔いしれるうちに一部が終わりを告げた。

約30分後の午後9時を少し過ぎた頃、この長いシリーズ、ラスト1本の公演が始まる。第二部の最初に披露されたのは「2月」だった。このホールで吸い込んだ四季の香りを思い出させてくれるような歌声が響き渡る。「情熱の影」「YOU」「影絵」など、曲が終わった後の余韻さえも味わい尽くしたくなる名曲が続き、いよいよ生命力を増す清春の歌唱。「基本的にはノーリハで、珍しい曲だけテンポを決めてという形式でやってきました。その場で思い描いた言葉でも歌ってきました」。人間のあらゆる感情の動きを丹念に表現する彼の姿を観るたびに、自分が生まれ変わるような感覚を得る。時折マイクを通さずに歌う瞬間の迫力も、ライヴの醍醐味を感じさせてくれた。

「空白ノ世界」で本編を終えてからも、歓声は続く。再びオーディエンスの前に登場した清春が発した言葉は、シンプルながらも非常に胸を打つものだった。「たくさん会いに来てください。来てくれた代わりに、僕はもっと凄くなります。ありがとう。愛しています」。「romancia」と「涙が溢れる」の至高のメロディに包まれ、長きにわたる濃密な公演はこれ以上ない美しい到達点を迎えた。

だが、この素晴らしい光景に終わりはない。鳴り止まない拍手のなか、スタンディングオベーションが自然発生。清春がふと顔を上げた先には、客席の一人一人が手に持った百合の白が揺れる。このサプライズに対して、驚きと感謝を口にする彼の表情が慈愛に満ちていたのが印象的だった。

歌を歌う人がいる。歌を聴く人がいる。ライヴという営みを根本から考えさせられる、かけがえのない時間を過ごした。演奏する側も観る側も、相当の集中力が要求されるこの公演形態。今後もし、このような機会が設けられるのであれば、さらに多くの人に観てほしいと願う。特に、若い表現者にとっては、一生の財産となるヒントが散りばめられているはずだ。

清春の歌は、この冬、舞台を移して咲き誇る。〈TOUR 天使の詩 2015 『21』〉と銘打たれた全国ツアーが12月23日の横浜Bay Hallを皮切りにスタートする。新たな旅の日々も、永遠に記憶に刻み込まれることになるだろう。

文:志村つくね

■TOUR 天使の詩 2015『21』

2015年
12月23日 (水・祝) 横浜BayHall
12月31日 (木) 大阪なんばHatch

2016年
1月10日 (日) 仙台Rensa
1月11日 (月・祝) 仙台darwin PLUGLESS
1月16日 (土) KYOTO MUSE
1月17日 (日) KYOTO MUSE
1月23日 (土) 広島CLUB QUATTRO
1月30日 (土) HEAVEN’S ROCK さいたま新都心 VJ-3
2月06日 (土) 浜松Live House窓枠
2月07日 (日) 岐阜club-G
2月09日 (火) 名古屋ダイアモンドホール
2月13日 (土) 柏PALOOZA
2月14日 (日) 柏PALOOZA
2月19日 (金) HEAVEN’S ROCK 宇都宮 VJ-2
2月20日 (土) HEAVEN’S ROCK 熊谷 VJ-1
2月26日 (金) 水戸LIGHT HOUSE
2月27日 (土) 水戸LIGHT HOUSE
3月05日 (土) 金沢EIGHT HALL
3月11日 (金) 渋谷CLUB QUATTRO FC ONLY
3月13日 (日) 高崎club FLEEZ
3月18日 (金) 松山サロンキティ
3月20日 (日) 福岡DRUM LOGOS

12月23日〜2月9日公演チケット一般発売:2015年11月28日(土)
2月13日〜3月30日公演チケット一般発売:2015年1月16日(土)

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