2014-01-20

【doa】人は求め合っている、君を必要とする人は必ずいる

 爽快でありながら滋味がある、骨太さを持ちながら疾走感も十二分。メジャーデビュー10年目を迎える年に相応しい大人の成熟感と、軽やかなアティテュードが生むフレッシュさが共存する作品集。気持ち良く酔える、そんなアルバムについて徳永暁人(Vo&Ba)が語ってくれる。

──デビュー10周年を迎えられるんですね、今年。でも、新作はすごくフレッシュな作品集に感じました。

「それは嬉しいですね。というか、僕自身は“10年”というのを忘れていました(笑)。僕たちは常に“今の自分たちの表現”だけを考えて日々作品作りしているので、アニバーサリーみたいなことも全然意識してなかったんです。“Take It Easy”な感じで、気負いや焦りのないところからスタートしたバンドですし。3人それぞれが“今”をすごく楽しんで生きているので、そういうところが作品にも出たらいいな、という感じですね。もちろん新しいチャレンジはしていますし、いろいろな部分で進化していると思うんですけど。そもそも僕自身が性格的に前に作った作品とか全然気にしないというか、むしろ覚えていないタイプなので(笑)。」

──では、今作も前作『RIDE ON』を踏まえてとかは…

「まったくない! “今回、すごく外に出かけたくなるアルバムになったね!”ってみんなで言ってて、“あ、それって前と一緒じゃん!”“そっかー。毎回、俺たちそんなこと言ってるなー”みたいな(爆笑)。でも、僕らそういうのが好きなので。どこかへドライブに行きたくなるような、通勤途中に聴いたら楽しくなれるような音楽を作りたい、というのが基本にありますから。」

──でも、今作は出かけたくなるだけじゃなく、連れ出してくれる…それは気持ちを解放してくれるという意味も含め。

「僕ら、レコーディング技術だとか演奏うんぬんよりも気持ちの部分…“なんか今日、さわやかだ”と思うとか、“なんか切ないね”と思うとか、その気持ちの部分を動かしてあげたくて3人で歌っているので、そこを感じてもらえるのはすごく嬉しいですね。それと、今作は“WANTED”というテーマを掲げているんですが、自分だけじゃなく誰かとの関係性…“WANTED”されている誰かととか、自分もしくは相手が自分に“WANTED”されている、その関係性という意味で“独りじゃないぞ”というのが大きなテーマになっています。」

──アルバム全体もそうですし、特にタイトル曲には人との関係性、自分の在り方をすごく考えさせられました。

「10代20代の時は自分が“WANT”しているもの、自分がなりたいものややりたいことだけを言ってれば良かったんだけど、30代40代になると求められているところっていうのがすごく大事で、実は。で、決して無駄な人なんていなくて、必ず誰にもその人にしかできない役目がある。ただ、なかなかそういうのを言い合わないから、自分の居場所がないように感じてしまったりするんですよね。でも、それは必ずある! だから、自信を持ってみんな生きてほしいなって…そういう意味の“WANTED”なので、応援ソングみたいになったらいいなと思ってます。」

──一時期“自分探し”で彷徨っている人が多かった記憶がありますけど、探さなくても誰かが必要としてくれている、誰かがどこかで待っている、ということに気付けば気持ちは変えられるんですよね。

「それはまさにおっしゃる通りで。この曲を書いたきっかけは、いじめに関する討論番組を観たことなんです。それを観ながら、いじめに遭っている子に“必ず君のことを必要としている人がいるから大丈夫だよ”って言いたくなったんですよね。で、そのイメージが僕の中、ここ(左胸に手を当てて)に残っていて。そこから“人は自分の夢を語るだけが全てじゃなくて、自分が必要とされているところこそがすごく大事”…そういう思いから作りました。基本的には“人は求め合ってる”ということに気付くかどうかだと思うので。ですから、アルバム全体に“人が求め合う”、自分が一方的に求めてることじゃなくて、誰かと一緒に生きている生活の中から生まれた曲が多いと思います。」

──1曲目の「GIMME FIVE」も表現は逆説的ですが、この“GIMME FIVE”も誰かがいてこそできるものですし。

「そう。嬉しい時にハイタッチってやるじゃないですか、普通は。でも、辛い時にこそハイタッチをやろうじゃないの!と。日々辛いから“GIMME FIVE”でも…ハイタッチでもしなきゃやってられない、というのもあるし。生きていていろんな人と触れ合ってきたから感じていることですね。ほんと、相手がいて初めてハイタッチはできるわけですから。この曲はいろんな世代の人にいろんなことを感じてもらえるんじゃないかな。」

──重苦しいサウンドにメッセージが乗ると、さらに重苦しく感じたりしますけど、doaの作品ってメッセージが響きながらも聴いていて気持ちも良くなるんです。

「あー! それはそういうふうにしていると思います。サウンドはものすごく軽快に、アメリカのウエストコースト・サウンド…ウエストコーストに行ったら、みんな気持ち良くなるんですよ、あの気候とあの景色に触れたら誰でも。で、そこで生まれた音楽を聴くと僕も気持ち良くなるし、それで救われたこともあるし。だから、そういう気分になってほしいな、“Take It Easy”な気持ちになってほしいな、っていうのが根底にありますね。そして、その中に含まれているメッセージというのは生活の中で起きる辛いことから生まれているものもあるけど、そういうものもカラッとできる!という。ウエストコースト・サウンドで僕が一番好きなところは、音はさわやかなんだけど、言ってることはものすごくディープだったりするところなので。僕、音楽は音楽としてまずは楽しんでほしんですよね。そして、“何、これ!?”でも“すげーいいな、これ!”でも何でも構わないんですけど、僕が顔も名前も知らない人の心を動かせるかどうかっていうことが、自分が持つとされている“役目”だと思っているので。僕らの音楽を聴いてくれたその人の生活が、その音楽によってちょっとでも潤うなら、それが何よりだと思っています。」

取材:竹内美保

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