―あの日、
高い観覧車の上で君が呟いた。
明日の事を何ひとつ話さないのが
ただ、気掛かりだった。
少し強い風鳴りに耳を塞ぐ
長い髪が踊る。
痩せた指を取るその手もまた、
土に汚れ、躊躇った。
静寂が鳴り響く、―音。
国境線上まで、北極星を背に
雲が切れる、雨が終わる。
闇が満ちる、星が視える。
芽吹かぬ土の上で呼吸を取り戻す。
言葉を無くす、息を殺す。
刻が止まる、
音が
消 え る。
声が届くまでか細い問いに頷く。
肩をすり寄せて雛の様に眠ろう。
国境線上から地図に無き道を行く
月の西に? 街の東に?
墓の北に? 海の南に?
足取りは覚束ず、それでも僕達は
抗い、戸惑い、迷いながら
願う、誓う、歌う、笑う。
鳥や獣、虫や魚
花も木々も、風も土も
死地を探す象の群れも、
武器を手に取る子供達も、
天動説も、地動説も、
ウォルトが描くネズミのキスも、
君が、ここにある事を
赦す為の証。
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