2012-05-20

【DOES】清々しい息吹が問いかけるメッセージ

 多彩なサウンドを奏で、一層研ぎ澄まされたDOESを示す5thアルバム『KATHARSIVILIZATION』。同時代を生きる我々にさまざまなことを問いかける歌詞も要注目だ。今作について3人が語る。


 【今を精いっぱい生きることが 何かしらにつながっていく】

──全体的にすごく清々しいヌケの良さがあるアルバムですね。

ワタル もともとウチらはパンク、ニューウェイブ、オルタナティブに影響を受けてバンドをやってきたんですけど、その辺は今までの4枚のアルバムですごく出せた。特に4枚目の『MODERN AGE』が、その極み。だから、それとは別のことをやってみたかったんです。ポップで明るい、分かりやすいものをやることによって、逆にウチらの芯にあるものが伝わるんじゃないかと思って。そういう話を去年の1月くらいからみんなと話していた中、今回入っている「ブライテンA」や「ライカの夢」ができたんです。「ブライテンA」のアレンジは田中ユウスケさんで、ユウスケさんはAKB48とかも手掛けた売れっ子ですけど、ロックが大好きで、俺と同年代。だから、ふたりでマイ・ブラッディ・ヴァレンタインの話をしたりもして(笑)。今までと違う試みをすることから今回のアルバムは始まりましたね。でも、そういう矢先に震災があって。

──震災もアルバム制作に影響を及ぼしました?

ワタル やっぱり震災の影響は大きかったですよ。あの出来事があったことによって、“半端なことはできないな”って思ったので。あまりにもDOESっぽくないことをやりすぎるのも違うのかなと。そこからは自分が持っているものをシンプルに、素直に吐き出しつつ、明るく、前向きにパワーを発散するものにしたいと思って作っていきました。そういう意識の相乗効果で、自分たちが人間として生きているパワーを前面に出したい気持ちも強くなったんですよ。そこで生まれたのが「今を生きる」や「これからここから」でした。

──「これからここから」は、『GO!FES』のMCで“震災と甲本ヒロトさんに影響を受けて書いた曲です”って言ってましたよね?

ワタル そうなんですよ。去年の8月に『RISING SUN ROCK FESTIVAL』に出たんですけど、羽田から千歳へ向かう飛行機で、俺のふたつ隣にヒロトさんが座ったんです。俺はザ・ブルーハーツでロックを知ったので、びっくりですよ。俺にしてみればヒロトさんは神!

──神と雲の上で会うとは(笑)。

ケーサク 確かに飛行機の中だから雲の上だ(笑)。

ヤス 上手いことを言いますね(笑)。

ワタル (笑)。でも、機内では話しかけず。千歳空港に着いた後、“話したかったなぁ”って思って歩いていたんですけど、偶然ヒロトさんが向こうから歩いてきたので、挨拶させていただきました。そういう思い出を抱きつつ家に帰って書いたのが「これからここから」。ザ・ブルーハーツの曲はメッセージ性が強いし、言葉はシンプル。曲調はパンクでメジャーコード進行の感じ。今、DOESでやりたかったことと重なったんですよ。この曲は歌詞もまさに震災のことをテーマにしています。被災した方々に届くように、意気消沈している日本に届けたかった。俺もその頃、こういう曲を聴きたかったですし。

──ケーサクさんは今作をどのように感じていますか?

ケーサク このアルバムを作る最初の段階で話していたのは、“よりソウルフル、エモーショナル、前向きなもの”っていうことだったんですよ。でも、その後に震災があって、3人それぞれにいろいろなことを考えたと思うんです。そういう中でできていった曲は、どれも持っている力が強いものになったと感じています。歌詞の伝わる力も大きいですし。レコーディングしながら、毎回すごく感情移入できました。パワーがあるアルバムになったんじゃないかと思います。聴く人それぞれで感じることは違うでしょうけど、何かしら伝わるものがあるんじゃないですかね。

──ヤスさんはどうですか?

ヤス 今までよりも3人それぞれが強くなる必要があったアルバムですね。リスナーにより伝えるためにどうしたらいいのかを意識した一年でした。そのことがすごく表れていると感じています。やっぱり震災は大きかったですよ。音楽をやる意味みたいなことを問いかけられた出来事でしたから。あれで何も考えなかった人はいなかったはず。あそこから進んでいく姿勢みたいなものを、みんなそれぞれ考えたと思います。

──今回のアルバムから伝わってくる大きなメッセージのひとつは、“今を精いっぱい生きることが、未来のいろんなことへと自ずとつながっていくんだ”っていうことでした。「今を生きる」や「これからここから」がまさに象徴的な曲ですけど。

ワタル 震災があったその後のことを考えると、そういう気持ちに辿り着いたんです。自分を強く持つことが大切なんだなと。それはすごく大変なことですけど。でも、そうなれないとどこへも行けなくなってしまう。まずは今を精いっぱい生きることが、何かしらにつながっていくんだなと。そうやって生きている人が近くにいたら、自分も頑張ろうと思える。そういう連鎖、力の総体がいろんなものにつながっていくんじゃないですかね。なるべく多くの人にこういう気持ちになってほしかったし、そうなるのが健全な世の中だと思いました。毎日を暮らしているとルーティーンの繰り返しで、こういう気持ちって忘れがちなんですけど。

──過去は変えられないし、かと言って未来にばかり目を向けすぎても何も進まない。目の前のことをしっかり見据えることが良いバランスなんだろうなと、いろいろ曲を聴いて感じました。

ワタル バンドもそうなんですよ。いきなり大きな理想へ行こうとしても駄目。演奏だっていきなり上手くなったりしないですから。日々のコツコツとした積み重ね、努力、研究を続けるしかない。バンドは派手に見えるかもしれないけど、実はめちゃくちゃ地味な職業ですから(笑)。

──(笑)。バンドをやってきたことで、身を以って表現できるメッセージのこもったアルバムでもあるわけですね。

ワタル ほんとそう思います。バンドも今を全力でやることが楽しいんですよ。まあ、“明日のことがあるから今日は酒飲めない”とかはあるけど(笑)。でも、そういうことを考えるのも“今”だし。そういうことを考えるのが“生きてるな”って強く実感できる瞬間でもある。あと、いろんなモヤモヤを吐き出してカタルシスを得ることも大事。そうやって何かを吐き出してポジティブにならないと、何かしようっていう気持ちになれないから。下ばっか見て駄目なことばかり探しても気持ちは晴れない。とにかく何でもいいから“うるせー!”って言っちゃうとかも大事なことなんですよ。それがまさに「カタルシス」なんですけど。

──この曲、苛立ちを吐き散らしているのに、すごく明るい印象があるんですよね。

ワタル とりあえず“みんなクソだ!”って言ってみるとかもアリなんですよ。本当はみんなクソなはずはなく、素晴らしいものもあるはずなんだけど、とりあえず言ってみることですっきりできるんだから。もともと“カタルシス”って周りの悲劇とかを見て自分が救われる状態のことを指す言葉。そういう状態を得られる身近な方法が、こうやってまずは言ってみることなんですよね。

──「カタルシス」をライヴでみんなで大合唱したら、すごくすっきりできそうですね。

ヤス ぜひみんなで歌ってほしいですね(笑)。

ケーサク これ、みんなで歌ったら面白いでしょ(笑)。

ワタル 《うるせえよ だまれよ》だからね(笑)。

ヤス こういう気持ちを明るく吐き出せない人って、結構たくさんいると思うんです。だから、こういう曲を通して言ってもらえたらいいですね。


 【カタルシスを得ることで 人は失われた文明を再構築できる】

──サウンド面に関しては、さっきも少し話に出た「ライカの夢」がかなり独特ですね。

ワタル 生ストリングスが入っていますからね。弦 一徹さんとお仕事をさせていただいたんですけど、いい経験でした。弦アレンジって前もアイディアが出たことはあったんですけど、実行に移したことはなかったので。これはライカ犬の孤独を描いた曲。そういう宇宙的なイメージや孤独を、弦を入れることで、より表現することができました。

ケーサク 弦を入れてすごく良かったと思います。弦 一徹さんの仕事はすごかったです。その場で曲を聴いて、その場で譜面を書いて、はいどうぞ!って感じで演奏して、この曲にぴったりハマるサウンドになっていきました。

──「ブライテンA」とか、あと「アルバトロス」も新鮮なサウンドでした。

ワタル:同期もちょっと入れて、明るいものをやろうと思ってできていった曲ですからね。

ケーサク 「アルバトロス」は4つ打ちですけど、ベタっとしたテイストにならないように意識して叩きました。俺のドラムってベタっとなりがちなんですけど(笑)。

ヤス 自分で言うなよ(笑)。

ケーサク ハネた感じになるように意識しました(笑)。いい感じで仕上がったので、これは俺も好きな曲です。

──「ダンスホール・ガール」は胸に迫るものがありましたよ。

ワタル 歌入れする時、実際に泣いちゃうくらい気持ちが入りました。今回のレコーディングでひとつ考えたのは、“より気持ちを乗せよう”ってこと。「ダンスホール・ガール」は、すごく気持ちが入りました。最後のサビのリフレインは、泣いてしまって。“すみません!”って言ったんですけど、エンジニアさんが“いや、最高だよ! いいのが録れた”ってニヤニヤしていたんですよ(笑)。そのテイクが採用されているので、グッとくるものになっているのかもしれないですね。

──「サンダーライト」「ブルーナイト」「トライブ・ドライブ」のヒリヒリしたテイストは、直球のDOESを感じました。

ワタル これはもろにDOES節ですね。「サンダーライト」は、実は演奏がすごく難しいんですけど(笑)。「トライブ・ドライブ」はアフリカンなビートをミックスさせて、マラカスや鈴とかも入っていたりします。

──アレンジもかなり凝ったアルバムですよね。

ワタル そうですね。ギターをひとり増やして、ツインギターで何ができるのかを追求したアルバムでもありますし。ライヴも面白いことになると思いますよ。

ケーサク 新しい試みが入った曲がたくさんあるので、ライヴがすごく楽しみですね。

ヤス ライヴでも、よりエモーショナルなものを感じてもらえると思います。

ワタル もともと曲はライヴで成立するものとしてアレンジしているので、いい感じでやれると思います。ストリングスや同期とかは肉付けとして加えているだけなので。

──アルバムタイトルは“カタルシス”と“シビリゼーション”(文明)を合わせた造語ですけど、これに関しては?

ワタル 去年の夏に「カタルシス」ができて、“キーワードはこれだ!”って思ったんです。“カタルシスを得ることで、人は失われた文明を再構築できるんだ”っていうイメージに辿り着いたので。それでタイトルの案として“カタルシス文明”っていうのを出したんですけど、今までの作品が全部英語表記のタイトルだったので、そこは揃えたほうがいいんじゃないかと。でも、“KATHARSIS CIVILIZATION”だと言いにくい。それで悩んでいたらディレクターが、確か「今を生きる」のカメラ撮影の時だったと思うけど、紙に書いて、“これどう?”って言ったんです。それがふたつの言葉を合せた“KATHARSIVILIZATION”。“ひと言で長いところもなんかカッコ良いし、いいじゃん”と。タイトルも気に入っています。とにかく、騙されたと思って、ぜひこのアルバムをいろんな人に聴いてもらいたいですね。“ロック、死んじゃいねえんだぞ!”“ロックをなめんな!”っていうのも伝わると思います。

取材:田中 大

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