2012-01-20

【高橋 優】“決意表明”みたいな感じのほうが強い

 ラジオのリスナーからもらったたくさんの“ほんとのきもち”。意図とは別に、アンチテーゼとも思えるメッセージからインスピレーションを受け導いた答えは、誰しもが隠し持つネガティブさへの提唱“卒業”。

──いわゆるシーズン的な卒業ソングとはニュアンスが違うように思うけど、どういう視点で書こうと思ったのかな?

ラジオ番組の企画で“ほんとのきもち”を教えてって募ったら、たくさんのメールをいただいたんですけど、明るいメッセージっていうのが少なくて…で、自分で考えてもそうなんですよね。だから、そういう状態から一歩前に出ること、そういう負のスパイラルみたいなものから抜け出せるための曲にできたらいいなって。学校の卒業とかではなく、自分の弱い部分や、どうしてもネガティブに考えてしまう自分からの卒業という感覚ですね。

──メッセージの内容って根本的なことは似てても、みんな違う角度でいろんなこというわけでしょ? それをまとめて、求められてる答えを出すってことにプレッシャーを感じたりはしなかったの?

たくさんのメッセージを読ませてもらえたのは貴重な体験だけど、それなら自分もありったけの“ほんとのきもち”を曲にしようって思いが一番強かったですね。だから、そんなに難しいとは思ってなかった。ただ、どの人のところに行っても、ちゃんと一対一で届けられる曲にしたいって。

──なるほどね。応援歌っていう意味合いかな?

応援歌というより“決意表明”みたいな感じのほうが強いですね。このご時世、今はみんなで暗いことを話さなきゃいけないんだと言われてる気がするんです。明るい話は、根拠があることじゃないと言えない空気が漂ってるような。そんな中で前向きなことを言うのって、勇気がいるし、忍耐がいると思うんですよね。でも、歌って理論武装ではないから、提案を含めた願いのような感じですね。

──サビに“地金”って表現あるじゃない、メッキが剥がれた…の一節で、この言葉が妙に耳に刺さって、らしい表現ていうか…。

そこは、キーポイントになってます。カッコ付けたり、いいところだけ見せ合って生きていく関係は薄っぺらいし、なんか寂しいと思うんですよね。失敗やイヤなところも見えた上で受け入れ合うことができたら、人はまだまだやっていけると思うし、僕自身もやっていけそうな気がする。メッキはいずれ剥がれる…剥がれた後に見える地金の部分で、どうしていけるかが大事なんじゃないかって。

──イントロの響きが、悲し気だよね。あのアレンジの意図って?

歌のキーも低くしてて、なんて言うか…すごく低いところから羽ばたいて上がっていく感じにしたいなって思って。

──そういうことなんだ。MUSIC VIDEOのライヴシーンのところ、涙ぐんでるように見えるんだけど。

自分の曲を歌って泣く…普段から自己陶酔っていうような曲の届け方はしたくないって思ってるんですけど、だから…どうなんだろうって?(苦笑)のはあります。曲の特性というか、構成が感情を動かしてしまう。歌詞と無関係にが~っと低いところから上がっていく感じが、どんどん熱くなるようになってて、音符の割り振りかもしれないけど、サビで転調した時の“めぐり会えて良かった”って言葉と、目の前にお客さんがいる状況と全てがリンクして、あそこは必ず泣きそうになるんですよね。でも、涙目にはなってるけど、かろうじて泣いてない…かな。

──なるほど。カップリングの「HITO-TO-HITO」。この軽快な感じ、いいね。2行ずつを1パートにすると、テーマ性がたくさんあるって感じで、ある分だけ曲が書けるのかな?って思ったんだけど…。その時々で2つ、3つは自分の現実の環境に当てはめて各自が考えられるというか、共感できそうだし、よくできてるよね。

オールキャストみたいな(笑)。これは、僕もお気に入りの曲です。できてうれしいし、表題曲にしてもいいくらい、かなり大事にしたい曲だと思ってます。

──ポエムというか、メロディーがなくても成立するような?

う~ん、でも、ポエムにしたら重いですよね、多分。“人が人を~”、“人は人を~”っていう言葉が冒頭にきてる時点で、重くとられがちの曲だけど、説教がましいものには、どうしてもしたくなかった。こうだろう!というよりは、それを滑稽に笑ってる人というか、閉じ込めてんのも解放すんのも人だよねっていうくらいの感じで歌えたらいいなって。だから、軽快にするってことにポイントがあって、さらっと歌っちゃうってことが。

──初回限定盤と通常盤のボーナストラックが一曲ずつ違いますが、アッパーチューンの「怒りのハイヒール」は、なぜに乙女視点? こんな子いたら、キツイよね。書こうと思った動機って?

これは応援歌です(笑)。東京に出てきた頃、当時は仕事関係ぐらいしか、知り合いがいなかったので、そういう人たちと話してると応援したくなるんですよね。“よし! 頑張るぞ!”って気持ちになってほしいってところから、発想したというか。

──かなりライヴで盛り上がりそうだね。で、対照的に「泣き虫空に~」なんですが…

東京に来てから作った曲で、ほとんどお客さんのいないライヴハウスだったり、路上でひっそりやってましたね。シングルで出した『こどものうた』のカップリングです。でも、高橋 優を最近知ってくれた方が多い中で言うと、改めて自分の曲は、どれも代表曲でありたいし、聴いてもらいたいということで、Ustreamでやった弾き語りの音源を入れました。

──哀愁あって、いいよね。でも、改めて思ったけど、高橋くんの曲たちはBGMにならないね(笑)。言葉力が強いから、何か考えながらモノをやろうとしてる時なんか、存在感がありすぎて作業ができなくなる。ほんとに向いてない。でも、シンガーソングライターとしては、素敵なことだと思うけどね。

自分っていう人間が他の人とちょっとでも違いが出てくるって、うれしいところではありますよね。ありがとうございます。

取材:石岡未央

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