2014-03-20

urema、自分の体験を描写すべく作った楽曲たち

 実体験を表現すべく作った楽曲たちを、タイトルの通り“光のための棺桶”に詰めたという今作。長江慧一郎(Vo& Gu)に、4月2日にリリースとなるミニアルバム『光の棺』について語ってもらった。

──uremaは、オルタナティブロックをルーツとしているとのことですが、具体的にはどういったものなのでしょうか?

このバンドをやる上で、初期Sunny Day Real Estateの影響は大きかったと思います。今作は七尾旅人さんの『ヘヴンリィ・パンク:アダージョ』からの影響が大きいと感じています

──もともとはどのようなバンド像を描いて結成されたのですか?

ドロップDチューニングによるコードワーク、リフを基調としたバンドにするつもりでした。当初はツインギターにするつもりでしたが、合うギタリストがなかなか見つからず、そんな中現れた高橋の幅広いベースアプローチに“これならギター2本もいらないんじゃないか”と思い、この3人で3ピースバンドとしてやっていくことを決めました。初期はドロップDチューニングと5弦ベースのロー弦を意識したシンプルでオルタナな楽曲が多かったのですが、活動をしていく上で音楽性は多様化したと思います。

──2012年9月には1stミニアルバム『carpe somnium』をリリースしましたが、リスナーからの反響はいかがでしたか?

「ハッピーエンド」という曲が予想外の人気で、私的な曲よりも一歩引いた視点から描写した曲のほうが広く受けるんだな、ということを改めて感じました。

──今改めて振り返ると、どんな一枚になったと思いますか?

結果的に今作の『光の棺』を制作する上で、取っ掛かりになった作品なんじゃないかと感じています。リードトラックだった「さむいさむいこおりのなか」に共通するテーマを6曲用いて多様に表現したものが今作の『光の棺』ですので、2枚合わせて聴いていただければと思います。

──そんな前作の『carpe somnium』から約1年半振りのリリースとなるミニアルバム『光の棺』は、まずどのような作品を作ろうと思ったのでしょうか?

まず僕にとって特別な体験があり、それはいくつかのフェイズに分かれていて、終わりのフェイズに近付いた時、終わってしまえば後はすぐにでも忘れてしまう、という実感がありました。完全に分からなくなってしまう前に、ある種、遺書のようにして作品を残さなくてはいけないという思いから、書き記していたメモを頼りに曲を作り続けました。それは強迫観念というより、習性のようなものに突き動かされた結果なんじゃないかと感じています。

──今作には重厚なバンドサウンドが印象的な「彼の魔法の国」などライヴで披露されている楽曲が収録されていますが、収録するにあたってアレンジをし直した楽曲などはありますか?

入念にプリプロを行なったので、全曲細かいところは変わったんじゃないかと思います。大まかな構成などは変わっていませんが。

──1曲目の「瞬きをしないで見ること/閉じたあとも」は幻想的なコーラスが印象的でした。タイトルの意味も気になります。

この曲は今作の収録曲が出揃った後に、端書きのイメージで作りました。タイトルに関しては、このアルバムを統括するテーマでもあるので、あえて解説はしません。アルバムを通して聴いていただき、各々が自分の解釈をしていただければ幸いです。

──メロディアスな「二月」はしなやかに歌い上げたかと思えば、感情的なシャウトが入ってきたりと、uremaならではの楽曲の世界に引き込まれました。また、夢や生死を描いているリリックも印象的ですが、「笑う」は “笑う”ということが象徴的に描かれていますね。歌詞についてはどのようなこだわりがあるのでしょうか?

笑顔は楽しかったり面白かったりする時に浮かべるものだけではなく、たくさんの種類があります。目の前のものの美しさや存在感に笑いが止まらなかったり、葉っぱや雲が笑っているように見えたり、何も分からなくなってしまった人の空っぽな笑顔や意識を奪われそうな悪夢で見た笑顔など、それらが僕の中でトラウマになるほど強く印象に残っており、人生観が変わるくらい多大な影響を受けました。今作で表現している笑顔はどれもそういったものです。歌詞を書く際に韻を踏んだり、母音を意識したりする人も多いかと思いますが、僕にはそういったこだわりは特になく、心掛けるでもなく、ありのままの言葉で表現しています。今作の歌詞は日記のような表現手法が取られていますが、それも意識して行なったわけではありませんし、アルバムのテーマになっている体験を表現する上で必然だったのではないかと感じています。

──なるほど。ミニアルバムの最後を締め括る「神戸市立海老公園」はシンプルでありながら、壮大なバンドサウンドの余韻が残りますね。

僕にとっての時間の流れ方や世界の仕組みのイメージ、どうして忘れてしまうのか、どうして見えなくなってしまうのか…などを、“線”や“円”“光”といった言葉を用いて表現しています。アンサンブルに関しても、“それぞれの違う円が、線の上で混じり合う点がある”というイメージで構築しました。

──今作に名付けられた“光の棺”というタイトルについて教えてください。

言葉の通り、光のための棺桶という意味です。全ての楽曲は僕の刹那的な体験を表現すべく作られたもので、それらの体験は常に光とともにあり、そして終わってしまいました。僕にはもう光を見ることも感じることもできないので、勝手ではありますがこの作品をもって弔わせていただきました。火葬でも土葬でもなく音葬というのが、救いがあっていいと思います。

──だからこそ、uremaの多彩な世界観が閉じ込められた一枚になっているんですね。

極めて私的な作品ではありますが、テーマとなった体験のいくつかのフェイズをそれぞれ描写すべく曲を作ったことで、結果的にアレンジ面や音楽性において多彩なアルバムになったのではないかと思います。全部大切な記憶です。光の渦中の人にも、過ぎ去ってしまった人にも、きっと触れられると思いますし、そうであるように、見つけてもらえるように祈っています。

──今作を作り終えて、バンドとしての変化はありましたか?

各々、演奏が上手くなったんじゃないかと思います。特にドラムの芦原は今回のレコーディング以降、成長を感じます。

──5月からは『光の棺』を引っ提げてリリースツアーが行なわれますね。

現時点で名古屋、広島、福岡、大阪、東京しか決まっていませんが、他の地方のバンドさんやイベンターさん、ライヴハウスさんなどで、uremaに来てほしいという方がいらっしゃいましたら、この機会にぜひお誘いください。

──ぜひ、いろいろな方にuremaの音楽に触れてほしいですね。

僕にとって音楽は、いつも気付けないけど本当はずっとそこにある、美しいもの、異様なもの、寂しさや悲しさや愛おしさなんかを気付かせてくれるものでした。それは映画や絵だって同じです。『光の棺』も誰かにとってそんな音楽であればいいなと思います。アルバムのアートワークも今作のテーマとなった体験を別視点から描いた素晴らしいものになっているので、ぜひ手に取って聴いていただければと思います。ライヴにも来てください。

取材:高良美咲

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