2014-03-20

asobius、一緒に成長していく音楽でありたい

 英語詞版と日本語詞版の計20曲を同時に収録という、勢いにあふれた1stフルアルバム『pray&grow』が完成。そんな今作について甲斐一斗(Vo)に訊ねてみた。

──2013年9月にリリースされた「starlight」はダンサブルなリズムで、すでにライヴでも定番になりつつありますね。3月19日リリースの1stアルバム『pray&grow』の1曲目を飾る楽曲にもなっていますが、手に取った方からの反響はいかがでしたか?

すごくいいです。メインテーマとなるイントロからのフレーズもすごく耳に残るようで、思惑通り!という手応えとただの洋楽ライクな音楽じゃない新しさを見せることができたと思っています。前回の自分の中でのテーマソングは「I'm in the love」(1stミニアルバム『Rainbow』収録)だったのですが、以前の自分を超えることができたというか。より“よく分からないけど愛はすごい”みたいな喜びを誰かと共有しながら、全面に爆発させることができました。

──そんな「starlight」をリリースしたことによって、バンドとしての変化はありましたか?

1stミニアルバム『Rainbow』(2013年5月リリース)の段階の曲群ではしっとり聴かせるというのが主だったのですが、もっと動的に共有することの味を知ってしまったというか、その後の曲作りの傾向に大きな変化をくれました。

──今作『pray&grow』は、英語詞版と日本語詞版の2枚組ですが、いつ頃からこのようなかたちでリリースをしようと考えていたのでしょうか?

「starlight」の制作が終わったのが6月頃で、ストックがゼロの状態から制作に取り掛かりました。日本語版は、以前から日本語も聴いてみたいと言われていたこともあり、自分の中では日本語詞を自分のメロディーセンスにはめることに苦手意識があったのですが、いい機会だからチャレンジしてみて。ただ、アルバムはひとつの物語として筋を通したくて、どうせなら面白いことをしようと思い、無理を言って2枚組にしてもらいました。

──日本語詞を書く上で、何か今までとの違いはありましたか? 特に「starlight」「new morning」「I’m in the love」など既存の楽曲は今までの楽曲のイメージなども踏まえるということで。

基本的には全て英語詞のための曲作りをしているので、そこに日本語を当てるとなった時に、純粋な日本語版を作りたくて。今回は伝えたいメッセージや語感にできるだけ差が出ないように作りました。苦手意識は払拭されたので、今後はもし日本語を歌うなら日本語のために曲を作ってみたいですね。

──では、楽曲についてなのですが2曲目の「discovery」はasobiusらしいサビの広がり、ドラマチックな展開が印象的でした。

この曲はギターの杉本くんがオケを持ってきて、それに各パートが自分のフレーズを付けていきました。歌メロはゼロの状態から好きに付けさせてもらったのですが人が作った曲にメロディーを乗せるのは初めてで、いつもと違う感じのメロディーがあふれてきてすごく新鮮で楽しかったです。

──疾走感のある「rise」は、今までのasobiusとは違う一面が垣間見れる楽曲だと思います。

「rise」はレーベルメイトである[Champagne]先輩のラジオでの“聴いてください、asobiusで「rise」”(実際に流れたのは[Champagne]の「rise」)というアクシデントがもとで、後日“「rise」って曲作っちゃいなよ”“ハイ!”という感じで作ることになったのですが、どうせなら極端なものを作ろうぜとなって、テンポも今までで最速の曲が出来上がりました。レコーディング直前に5BPMぐらいテンポが上がって大変でした。

──「waltz」はイツエのヴォーカル瑞葵さんと甲斐さんの歌声の絡みにasobiusならではの多彩な表情を見せるバンドサウンドがとても素敵でした。制作の時点から、このようなイメージを掲げていたのですか?

最初から懐かしいオールディーな曲を作りたいと思い構成も極限までシンプルにして、デモの段階で無理やりオクターブ上のオカマヴォイスを乗せて、すでに男女デュエットにすることは決めていました。愛し合う老人夫婦をイメージしていて相手の女性ヴォーカリストを誰にするかはすごく悩みましたが、デビュー当初から仲の良いイツエの瑞葵ちゃんが相応しいだろうとお願いしてみたら、まさに素晴らしい表現力を発揮してくれて曲に深みが出ました。頑張って本番のレコーディングも自分のオカマヴォイスにしなくて良かったです。

──(笑)。今作を締め括る「mother」は繊細なバンドサウンドに伸びやかな歌声が映える多彩な展開に思わず聴き入ってしまいました。

意図して作ったというよりも、“ひとつ浮かんだものを紡ぎ上げていった”という印象が強くて、サビが2種類あるという不思議な構造もそのせいだと思っています。スペイシーでありながら根源的な生命力、強い愛がこもった曲です。自分の中の母性を表現できました。

──そんな今作に“pray&grow”というタイトルを付けた理由は何だったのでしょうか?

正直、さわやかな気持ちで作ったアルバムではなくて、下積みや経験なしのデビューから大きな試練の連続で。また、それを糧として急ピッチで経験を喰らい、バキバキ体が痛いぐらい音を立てながら成長していく中で作っていて。ただ、この人間臭い感じがむしろ自分の意識を聴いてくれる人により向けてくれたというか。みんな違うフィールドで戦って、日々成長している。それを願っている人たちなんだと思うとアーティストとリスナーのリアルタイム感がすごく嬉しくて、癒しや忘れさせるよりも一緒に成長していく音楽でありたいと思い名付けました。

──伸びやかな歌声から始まる「voyage」、情景が目に浮かびサウンドの広がりが印象的な「dive in the lake」、壮大な世界観の「world re:creation」などの多彩な楽曲を英語詞版と日本語詞版の2枚として20曲を収録、さらにセルフライナーノーツ付きと、ボリュームたっぷりの作品になりましたが、出来上がってみてどのような作品になったと思いますか?

1stフルアルバムって自己紹介じゃないの?という常識を覆す、いきなり最初からやり過ぎハードル上げ過ぎな、愛が重い彼氏彼女みたいな作品になりました(笑)。

──(笑)。中でも思い入れのある楽曲はありますか?

「world re:creation」ですね。「starlight」が良すぎて一時期すごく悩んだのですが、それをもっと味付けを濃くするみたいな無粋なやり方じゃなく、別のかたちで素敵な音楽が作れてすごく嬉しかったのを覚えています。

──今作ならではの聴きどころはどこでしょうか?

やはり英語版と日本語版の聴き比べです。ひとつの作品にディスク2枚で入っている作品って本当に珍しいか、ひょっとしたらないのではと思います。発売前にいろんな人に聴いてもらったら、人によって曲ごとに “英語版の方がいい”“日本語版の方がいい”と好みが違っていて、作った自分たちとしても不思議な感覚だったので、まずは1枚ずつ聴いて、ライナーノーツを読んでからもう1回聴くことで味に変化の出るアルバムだと思います。

──制作を終えて、今の心境はどうですか?

得たものを端から貪欲に作品として消化していって、今はそれを吸収し切って身になったところで。もう次に向けてのインスピレーションが沸いていて、他の人もこうであってほしいと不安でたまらないのですが、変な話、最新アルバムにしてもう過去の自分という感じです。アルバム制作ってすごい!

──6月には大阪、東京でリリース記念ライヴが行なわれますが。

今年に入ってからアルバムを制作し切った反動でバンドとしての成長が著しく、確実に音源以上のものを観せることができます! 立ち止まらない僕らのリアルタイムを共有して一緒に未来へ突っ走りましょう! びっぐら~~~~~~ぶ!!

──そんなasobiusのファンに向けて、何かひと言あればお願いします。

音楽を聴いて元気が出るという才能は実はなかなか変態的です。みんなは十分、個性的で美しい。僕は自分にできないことをひとつでもできるみんなを、みんなが僕を愛してくれているのと同じぐらい愛しています。尊敬してます。

取材:高良美咲

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