2013-09-20

【VAMPS】海外にアプローチするという意味では最大のチャンス

 VAMPSの5年間の軌跡を辿るベストアルバムであり、世界デビューとなる『SEX BLOOD ROCK N' ROLL』が完成! ただ代表曲を集めただけでなく、演奏の一部をリレコーディングし、全曲英語詞で歌い直し、新たにミックスも施したという超強力盤。本作に懸ける想いをHYDE(Vo&Gu)、K.A.Z(Gu)それぞれに語ってもらった。

「■ HYDE INTER VIEW」

 【すごく1st らしいアルバム これを超えるのは難しいと思う】

──ベスト盤であり、世界デビューの1stアルバムでもある『SEX BLOOD ROCK N' ROLL』ですが、こういった作品を作ろうというアイデアはいつ頃から温めていたものなのでしょうか?

HYDE「前から作りたいなと思ってたけど、タイミングが分からなかったんですよね。それが今、来た、っていう感じ。正直、日本でベストを出そうとするなら、もっとあとのほうがいいと思うんですよ。まだ2ndアルバムまでしか出てないしね(笑)。そうそう、最初はHYDEソロ名義の楽曲からもセレクトしようとしてたんですよ、「MIDNIGHT CELEBRATION」とか定番曲を。でも、そうするといっぱいになりすぎて選び切れなくなってしまったので、VAMPSの曲だけでも十分だなと思って。HYDEの曲は今後でもいいかなと。」

──歌もそうですけど、全曲ミックスをやり直したり、演奏も一部録り直したというのは、今のVAMPSの音として統一感を出したかったからですか?

HYDE「より最善を尽くしたかったってことですね。今までのも全然悪いミックスじゃないんですけど、今ならもっとできることがあるんじゃないかっていうのと、単純に歌を全部歌い直しているんで、ハマリのいいところに持っていきたいっていう。錯覚かもしれないけど、歌だけ録り直しだと、曲から歌が浮いてしまう感じがして。ミックスもやり直さないと気持ち悪いということになりました。」

──最初から歌は全部録り直したかったのですか?

HYDE「はい。より完璧を極めたかったんで。日本語を英語に直したっていうのもあるけど、もともと英語で歌ってた曲もさらに悪いところを直したかったんですよね。」

──「LOVE ADDICT」とかすごく変わりましたよね。

HYDE「そうなんですよ。言葉を発するタイミングが違ってて、こっちのほうがネイティブが気持ちいいみたい。「REDRUM」は歌詞も書き換えてますしね。僕が今、歌うならもっと「REDRUM」は分かりやすいほうがいいと思って。最初に書いた時は、もっと精神状態が混乱してるイメージで言葉を選んでたんだけど、今の僕が表現するならもう少し分かりやすいほうがいいなって。混乱は残しつつ、もう少し話の流れが分かるものにしました。」

──5年間、歌い続けて熟成されたものが一番いいかたちで収められたアルバムということにもなりますね。

HYDE「そうだね。そういう意味では、すごく1stらしいアルバムですよね。これを超えるのは難しいと思うんですよ。普通、アマチュアバンドがそれまでずっとライヴとかで演奏してた楽曲からよりすぐって入れるのが1stアルバムじゃないですか。まさにそのズルいバージョン(笑)。そういう意味では1stにしてベスト、かもしれないですね。前も1stアルバム作りましたけど、今回も1stアルバムだから、もっともズルいですよね(笑)。これ以上の1stアルバムは作れない。」

──海外でこのアルバムはどういう聴かれ方をすると思います?

HYDE「どうですかね? まぁ、僕にしてみれば夢を買ったようなもんなんでね。普通に考えたらアメリカで勝負するってなかなか難しいじゃないですか。アメリカ以外の国もそうですけど。でも、このアルバムが発売されることによって今までのやり方よりもグッと攻撃力が上がると思うんですよ。ただ、成功するかどうかは宝くじみたいなものですよね。結果はどうあれ、やるだけやったと納得できるものを残したかった。」

──でも、道が開けた確信はあるんじゃないですか?

HYDE「基本的にはこれは世界のリスナーに向けたライヴへの招待状でもあるからね。それを引っ提げてのワールドツアーっていう。今まで現地で売られるCDをなかなか作れなかったけど、でも今回はちゃんと向こうで手に入るから。」

──さて、いよいよ世界に向けての本格的かつ具体的な一歩として9月28日からヨーロッパ・ツアーが始まりますが。

HYDE「LIVE NATION(世界規模のコンサート興行カンパニー)と関わる最初のツアーなので、その手腕を確かめたいな、と。僕としては今までで一番のチャンスだと思ってるんですよ、海外にアプローチするという意味では最大のチャンス。このチャンスを全て活かして、やれることは全部やりたい。ヨーロッパ・ツアーと言ってますけど、他の国でのライヴも増えるかもしれないしね。」

──ようやくやりたいことが始まるという感覚ですか?

HYDE「やらなければいけないことが始まる、かな。正直なことを言うと、日本で軽くツアー回って制作したりとか、のんびりやるのもいいなと思うんですよ。でも、それはあとからでもできるじゃないですか。今、やろうとしてることは、これを逃すともうタイミングがないと思うんで、やらざるを得ないっていう。」

──何がそこまでHYDEさんを突き動かすんでしょうね。

HYDE「僕がこれまで音楽で仕事をしてきた、その最後のピークじゃないですか。ここまできたっていう旗を差す、それを今やろうとしてるんだろうね。」

──確かに過去最高に高いところかもしれない。

HYDE「僕にはそう思えるから。だから今しかないな、と。」

──そこからの景色はやっぱり見てみたいですか。

HYDE「うん、見たいんだろうな。でも、それもあるけど、自分がやってた証が欲しいんじゃないですかね。HYDEがここまできたっていう、一番キャッチ?な何かが欲しい。」

──それは自分への証ですよね。周りからそう思われたいというより、自分の肌でそれを実感したい?

HYDE「今はそうですね。音楽を始めた頃はもっとロック・スターになることに憧れがあったのかもしれないけど、それより今は自分の証が欲しい。それがあれば自分の中で少し吹っ切れるというか。やりたいことやったなって。」

──そうしたら、より自由に、さらにいろいろやれるかもしれないですしね。

HYDE「そうだね。でも、その代わり世界にこだわることはなくなるかもしれないな。それはそれ、みたいな。」

──ある意味、今が最初で最後の踏ん張りどころかもしれない、と。

HYDE「はい、踏ん張ります(笑)。見届けてください。」


「■ K.A.Z INTER VIEW」

 【バンドとして育っていくには いろんなところに行かないと】

──『SEX BLOOD ROCK N' ROLL』はK.A.Zさんにとってはベスト盤と海外に向けての1stアルバム、どっちのほうがより気持ち的に近いですか?

K.A.Z「それはホント両方だと思う。ただ、今まで海外に向けて正式にCDの発売がされてなかったっていうところで言えば、やっぱり1stアルバムかな。もともとVAMPSは海外を視野に入れて活動したいというところで始まっているものでもあるから、逆に“ようやく”っていう感じもあるし。」

──ようやく、っていうのは分かる気がします。

K.A.Z「簡単にできそうなのにできなかった歯痒さっていうのがずっとあったから。流通っていう部分では、音楽の分野に関しては日本は遅れてるなって思っている。日本にもいろいろ音楽はあるのになんでもっと外に向けたアプローチを流通サイド的にしないんだろう?って。スポーツや映画ではやってるのに、音楽はすごく遅れてる気がする。そこをしっかりやっていかないと、音楽自体もそうだけどビジネスとしても発展がないじゃない? 日本国内だけである程度のビジネスにはなるかもしれないけど、レコード会社にしても外にも目を向けているほうがより強いし、バンドサイドから見ても頼もしいと思うんだよね。」

──ある意味、今作はそうした状況に一石を投じる一枚と言えるかもしれないですね。

K.A.Z「そうだね。実は簡単なことだと思うんだけど、海外の人にも聴いてもらうっていう発想が日本のシーンにはあんまりなかったんだと思う。」

──ベストアルバムを出すということに対しては何か思うところはありましたか?

K.A.Z「オリジナルアルバム2枚しか出してないけど大丈夫かな?っていう(笑)。」

──でも、その2枚の楽曲を5年間、ずっとライヴでやり続けてきているわけで、言うなれば26曲全てがVAMPSの代表曲とも考えられるじゃないですか。だから、選曲は結構、難しかったのでは?と。

K.A.Z「でも、意外とそうでもなかったかも。ここに入ってるのはライヴの中でもメインになる曲だったりするしね。選曲は難しいっちゃ難しいけど。」

──HYDEさんが挙げた曲にK.A.Zさんが意見を出して、すり合わせていったとうかがいました。

K.A.Z「最初にHYDEのほうで大体のセレクトをしたものを見せてもらって、自分がなんとなく考えていたものと照らし合わせていった感じだね。海外で流れた時のことを考えると、例えば「MYFIRST LAST」とか、アジア圏のミュージシャンがやったらすごく説得力のある曲を持っていきたいとは思ってて。」

──そこはK.A.Zさんがすごく推していらしたとHYDEさんもおっしゃってました。

K.A.Z「今回、歌も全部録り直して、発音からしっかりやってるけど、向こうにはロックバンドって山ほどいるじゃない? ましてや向こうではまだ大半の人にVAMPSっていう名前が知られていないのが現状で。でも、「MY FIRST LAST」みたいな、ヨーロッパとかアメリカの人には真似できないような独特の世界観を持った曲だったら“これ、どこの国のバンド?”って興味を持ってもらえるかもしれない。」

──海外で流れることを考えると、きっと効果的でしょうね。

K.A.Z「それは「Life On Mars?」なんかもそう。VAMPSのオリジナル曲もいいんだけど海外で流れた時に“あれ? これ、デヴィッド・ボウイの曲だけどアレンジが全然違って面白いね”とか、向こうの人が何かしら引っかかるものを落としておいたほうがいいなって。耳を傾けてもらうきっかけというか、耳に留まらせるっていう意味でも「MY FIRST LAST」「Life On Mars?」はいいフックになると思ったから。」

──これだけの楽曲を、歌は全曲、演奏も一部を録り直し、ミックスまでやり直したという、その作業自体は相当大変だったのではないかと思いますが。

K.A.Z「歌はかなり大変だったと思うよ。でも、確かに一度完成させた曲を、もう一度触るっていうのは、結構大変で。正直言うとあんまりやりたい作業ではないんだ。あんまりその曲をいっぱい存在させたくないっていうか、同じ曲のバージョン違いがいろいろあると、どれがオリジナル?みたいになっちゃう気がするから、あんまり増やしたくなくて。そう言った意味ではちょっと難しい部分はあったかな。」

──そもそもベストを作ろうとなった時に、HYDEさんとはどんな会話をされました?

K.A.Z「歌詞を英語に書き直して、歌も録り直したいっていう。ただ、歌が変わるからミックスも変えなきゃとは思ったけど、楽器に関してはフレーズをそんなにいじる必要ないと思ってたんですよ。「ANGEL TRIP」はバッキングのギターが変わったりしてるけど、刻みひとつでもアクセントの位置が変わるから、そうやって、どんどん変えていくとそれこそドラムやベースの根本から再録し直さないといけなくなるんです。でも、最初にその曲を完成させた時点で楽器隊もそれぞれシビアに演奏してるし、曲としてしっかり構築されてるわけだから、それを崩す必要はないし、これで全然大丈夫って。」

──音楽に懸ける意気込みがすごいなと改めて思いました。それこそ、オリジナルのままでいい、できればバージョン違いは増やしたくないと言いつつ、やるとなったらとことんまでこだわって。

K.A.Z「そうだね。でも、やっぱりHYDEが英語的な部分でこだわりたかった部分がすごくあったっていうのも大きいし、海外に進出するにあたって大切な部分だと思うし。そこが、このアルバムの肝だと思う。」

──このベストアルバムにしてもそうですけど、5年間、VAMPSをやってきて、すごく育ったなって実感したりはされますか?

K.A.Z「それはあるね。昔から応援してくれる人はもちろんだけど、未だに新しくファンになってくれる人もいっぱいいるしね。応援してくれる人が増えてるっていうことはバンドもそれだけ育ってるってことだから、このタイミングでもっと大きくしていけたらいいなと思う。それこそ海外にもっと目を向けて、今まであんまり行けていなかった場所にも足を運んだりとか。バンドとして育っていくにはいろんなところに行かないと。音楽を広める作業をしていかないとね。一カ所だけでやってるのもいいかもしれないけど、それだと外を知らないままになっちゃうから、逆にどんどん小ちゃくなっていっちゃうと思うんだよ。」

──今なお大きく育っていきたいと思えているのが素敵です。

K.A.Z「もう背は伸びないんだけどね(笑)。その分、別なほうで伸ばしていかないと。」

取材:本間夕子


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