2013-09-24

【LUNKHEAD】“生きる”って、“命”って、つながっている

 死を意識することで“生”を強烈に意識する、そんなことを改めて深く感じた本作。哀しみや痛みと対峙しながら、それでも生きていくことの尊さを謳う。LUNKHEAD史上最重要作! 今こそ聴いてほしい、真摯な音楽だ。そんなニューアルバムについて小高芳太朗(Vo&Gu)が語る。

──非常にシンボリックなタイトルでありながら生命力を強く感じるアルバムだな、と感じました。こういう作品集を生み出すにあたって、どんな思いを抱かれたのでしょうか?

「きっかけはボビー(所属事務所社長の湯浅氏)が去年8月に死んだことだと思うんですけど。亡くなるちょっと前に“次のアルバムは最後のつもりで作らないとね。これでダメだったら終わりだ、くらいの”という話をボビーとしていて、その時点でそういうアルバムにしたいなという気持ちはあったんです。そして…ボビーが急に死んで…その気持ちがより強くなって。だから、今までで一番後悔のないアルバムになったと思います。それは技術的なこと、歌も含めて。もちろん、いい曲たちを作ってあげたと思えているし、シンプルでキャッチーな曲に各々がランクヘッド・スピリッツを思い切りぶち込んでいる。ひとつのアルバムとしてまとまったものというよりは、一曲一曲“最高だな”と思うものをアルバムの曲数分パッケージできたので、メンバー全員に達成感があると思います。」

──キャリアがあるから小高さんの作風もバンドのスタイルも確立されていますけど、でもここにきてそこを超えたところもあるような気がして。新鮮さ、新境地をも感じられましたし。

「そう感じられたなら嬉しいですね。“今までにない感じ”というのはいつも意識しているので、常に新しいものであるべきだと思っているんで。ただ、今回はかなり精度は上げていたかもしれない。それと、メロディーはかつてないほどポップだと思います。すごく難しいことをやって“カッケーな”というよりは、純粋に…それこそピアノで弾き語れるような曲にしていきたいという気持ちが強かったですね。」

──言葉の表現もシンプルになっていますよね。

「歌詞も分かりやすさを意識しました。パッと聴いてイメージがちゃんと浮かぶような。シンプルで、でも決して軽くないという。」

──はい。死生観がテーマになっていますし。でも、ちゃんと希望が見えるところがいいなと思います。

「嬉しいですね、それ。“メメントモリ”という言葉は“いつか死ぬということを忘れない”という意味ですけど、それを感じることで今を楽しく生きるとか、幸せになるために前向きに生きていこうっていう意味でもあると俺は思って、このタイトルを付けたので。」

──絶望は一度しているわけですから、死に直面した時に。

「そう。それと、自分は他人の絶望感って分かってあげられないから…。そういうことが俺の周りの人たちに結構起こっているんですけど、何もしてあげられない無念がすごくあって。で、今までは自分の言葉でドキッとさせたい、説き伏せたい、みたいな気持ちがすごくあったと思うんです。それが今回ほんとに、ふとした時に側に居てあげられるような言葉であり、歌詞を書きたいなって気持ちがものすごく強くあったんです。それがたぶんね、前を向いている感じにつながっているのかなって。」

──「はるなつあきふゆはる」とか、タイトルが“はる”で締められているのもいいなと思うんですけれど。この歌の《今日は何か美味しいものを食べよう》という一節、ここは生きている感じが本当に伝わってくる…アルバムの中でも特に象徴的な言葉だと思います。

「そこ、ポイントですね。この曲は友達の歌なんですけど。友達の旦那さんが自殺して…でも、働かなきゃいけないし、食っていかなきゃいけないし、生きていかなきゃいけない。毎日呆然と廃人のように悲しみに明け暮れて生きていたら、みんなが同情してくれるかもしれないけど、そんなわけにもいかない。生きていく中でずっと悲しんではいられない。だから、楽しいこともしてほしいなと思ったし、一緒にいる時は笑わせてあげたいなと思ったし、その友達を肯定してあげたいなと思ったし。で、さっき竹内さんが言ったように、《今日は何か美味しいものを食べよう》っていうのは生き残った人間の絶対的なことだよな、と思って歌詞にしました。“生きる”はLUNKHEADを始めた時から歌ってきたテーマですけど、以前は単数で、単体でそういうことを歌っていたんです。だんだんそれが…“生きる”って、“命”って、つながっているんだなって。誰かが死んだら自分のどこかが死んで、そのたびに自分は死に続ける。その代わりに死んでいった人のその命は自分の中で生き残っていて。だから、生き続けることが死に続けることでもあるし、自分の中に命が増え続けることでもある。それを感じたので、亡くなった人ではなく、生き残って生きていかなきゃいけない人のために言葉を紡ぎたかったんです、今回のアルバムでは。」

──「月の城」にもそういう思いが織り込まれているように感じました。ロマンチックな雰囲気ではありますけど、誰かと一緒に生きていくことが表れている。

「うん、そうですね。誰かの側に居る時に、言葉じゃなくて手を握りにいくっていう…“手を握る”っていうのは俺の歌詞によく出てくるんですけど。手ってほんとに言葉以上に伝わるものがある…心の一番先っぽにあるものが手のひらだと思っていて、手って一番心を表現すると俺は思うんです。だから…そうか、俺、意識してなかったんですけど、そういうことなんです。ただ側に居たい、みたいな気持ち…そっか。2番では海の底で魚になって、目も見えなくて口もきけない中、お互いの触感だけを頼りに生きているし…。」

──肯定的な作品集ですよね、生きることにも未来に対しても。ツアーで聴けるのも、すごく楽しみです。

「肯定的ですね、まさしく。ライヴはね、楽しませにいきますよ! もしひとりで来る人がいても、来てくれたら俺らがひとりには絶対にさせないので、気兼ねなく来てほしいです。」

取材:竹内美保


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