2013-10-21
【SPYAIR】現実が夢に近付きつつある“今”だからこその無敵感
3rdアルバム『MILLION』で、自己の総括と飛躍的成長を同時に実現させたSPYAIR。“誰と組んでもブレる気がしない”と語る彼らが目指すものの正体が、ニューシングル「JUST ONE LIFE」に封じ込められている。
──「JUST ONE LIFE」は、これまでの集大成的内容だった『MILLION』の発表を経てから最初のシングル。新しい流れの始まりを飾るものということになりそうですね。
UZ「間違いなくそうです。『MILLION』がかたちになりつつあった頃から“次はどうしようか?”というのを考えていて。あのアルバムを経た上で、このバンドでやりたい音楽とか、そのスケール感については、自分の中では結構明確に見えてたんです。あえて言葉にして言うなら“スタジアムロック”ですね。スタジアムの大観衆が似合うようなロック。しかも、俺らは小賢しいことを細かくやるより、“なんかよく分かんねえけど、こいつらデカいな!”みたいなバンドになれたらいいなと思ってるし(笑)、そうなれる可能性を持ってるんじゃないかなとも思ってる。そういうものを目指したくて作ったのが、今回のシングルなんです。」
──空間が豊富でシンプルな音作り。確かに小手先の器用さじゃなくて豪快さが感じられる仕上がりになっています。
KENTA「もう細かいことは抜きで。フレーズがどうのこうのというよりも、何の変哲もない普通のエイトビートのカッコ良さを求めたんです。ほんとはそこが一番難しかったりもするんだけど、単純明快に、自分たちが鳴らしたものがカッコ良いって言えるようなものにしたかった。例えば、ドラマーにとってひとつひとつのフィルは防具みたいなものでもあるんです。今回は全部それを外した状態というか、裸でこの曲に立ち向かったという感じで。だからある意味、試練を与えられたような感覚でもありましたね。」
MOMIKEN「うん。ここまでエイトビートの難しさを痛感させられたことはなかった。簡単そうでいて奥が深いんですよ。」
IKE「すごくシンプルで、各々の鳴らす音がより前に出てきて見えやすくなってるじゃないですか。だから、歌についても“自分の声の置きどころ”みたいな部分については考えさせられたけど、あとはもう本来の自分が得意なことを思い切りやればそれでいいという感じでしたね。」
UZ「こういうアプローチを突き詰めていくことで、自分たちなりの伝統芸になればいいなと思っていて。これが“SPYAIRと言えばこういう感じだよね”と言われるようなものになればいい。自分たちが進んでいくべき方向はすぐにイメージできたし、それを音にすることはさほど難しくなかった。ただ、ここにシンセをひとつ入れたりすると、簡単に空気感に広がりが出るんですよね。今までの自分たちだったらそっちを選んでた気がする。だけど、このバンドで鳴らすってことを重視したかったし、あえてそういうものは排除することにしたんです。そこは最後まで悩んだ部分ではあったけど。」
──なるほど。今回は表題曲のみ玉井健二&agehaspringsのプロデュースになっていますよね。そこでの影響というのも何かしらありましたか?
UZ「いや、プロデューサーはむしろ放任主義でした(笑)。今回はアニメのオープニングテーマということで、玉井さんが関わってくださったのも単純にそれが理由でした。でも、最初のデモを聴いてもらった時点ですごく気に入ってくれて、かなりこっちに任せてくれたんです。だから、実はセルフプロデュースに近いところもある。なんかもう、誰と組もうとブレる気がしないというか(笑)。」
──頼もしい言葉ですね(笑)。今の発言にもあったように、この曲はアニメ『サムライフラメンコ』の主題歌で。歌詞についてはその物語性を意識したものになっているのですか?
MOMIKEN「今回はそんなにも寄り添ってないですね。というか、それ以前に、物語自体が自分たちに似てたというか。自分の夢を捨て切れないまま走り続けて大人になってしまった主人公の話なんですね。それってまさに、俺らじゃないですか(笑)。大人になった今でも、“俺はこれがやりたい!”“これが俺のやるべきことなんだ!”という思いに突き動かされてる。だから、むしろ挫折も何も味わってなかった頃の無敵感みたいなものをメッセージするという感覚でしたね。根拠のない自信があって、怖いもの知らずだった当時の気持ちを思い出してみようよ、みたいな。」
──SPYAIRの場合、ポジティブなテーマのものであれば、どんなタイアップであろうと自然にメッセージ性がリンクしてくることになるのかも。そして、カップリングの「Radio」はZIP-FMの開局20周年を記念しての楽曲だとか。
UZ「ええ。ずっとお世話になってきたZIP-FMの20周年記念ソングを作ってほしい、という話をいただいて。愛知県民の俺らにとってはすげえ光栄な話なんですよ、これは(笑)。正直、少年期の自分たちにとって、音楽を知る上ではZIP-FMが“唯一にして全て”みたいな存在だったし、デビュー以降もずっといい関係が続いてきたし。楽曲自体については、カーステレオで流れてきた時に気持ちいい感じというのを意識しましたね。」
KENTA「うん。なにしろ愛知県はクルマ社会なんで(笑)。」
──なんかこのシングル自体、今後ますますSPYAIRの音楽が広がっていくことを確信させる作品だという気がします。
IKE「この夏は韓国のフェスに出たり、9月にはパリで演奏したり、自分たちが外に出て行けるようになったんだな、というのを実感できていて。でも、なにしろ『MILLION』では“100万人”という目標を掲げたわけで、それを取り下げることはもう不可能じゃないですか(笑)。もちろん100万人の前で演奏するなんて夢のような話ではある。だけど、この曲の存在が自分たちに夢を忘れずにいさせてくれるというか。夢だからこそ臆面なく口にできることというのもあるはずだけど、今、自分たちの口から“スタジアムロック”みたいな言葉が出てくること自体、現実が少しずつ夢に近付きつつあることを裏付けてるような気がするんです。」
取材:増田勇一
(OKMusic)
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