2013-03-20

【THEラブ人間】死を目の前にした時の“生の輝き”がテーマ

 昨年5月にリリースしたアルバム『恋に似ている』に続く、THE ラブ人間の2枚目のアルバム『SONGS』が完成した。第二期の始まりとなるシングル「アンカーソング」を含む新作に込めた想いを、金田康平(歌手)に訊いた。

──昨年5月にリリースした『恋に似ている』以来となる、2枚目のフルアルバム『SONGS』が完成しましたが、今回のテーマは何ですか?

「テーマは死を目の前にした時の“生の輝き”です。これまでも“生きていく”ということを歌ってきたつもりだったんですが。今回はもっと焦点を絞ってみました。」

──それは何かきっかけがあったのですか?

「今まで死を目の当たりにしたことはなかったんですが、2011年の12月の終わりに祖父の癌が再発したんです。癌が再発したと告知された日から、僕の中で世界が大きく変わりました。“自分”という本があったとしたら、第一章の終わりが全然見えてなかったのに、唐突に第一章が終わり、第2章に入ってしまったような感じでしたね。」

──それぐらい、大きな出来事だったわけですね。

「はい。その後、2012年に入ってからは制作期間として曲を作らなければいけない時期だったのですが…絶望の淵からスタートしたので、書いても書いても救いのない曲ばかりでした。「体は冷たく、心臓は燃えている」という曲も、そんな時期に作った曲ですけど、そんな時に僕に恋人ができたんです。その子は僕に“活き活き”と“生き生き”の両方を感じられるような“大丈夫”という言葉をかけてくれて、そのおかげで自分の心が底上げされました。それ以降、“死”ではなくて、死を目の前にした時の“生の輝き”へとテーマが変わっていったんです。夏まで曲を作り続けて、秋に録音して…9月だったかな? レコーディングもあとは「体は冷たく、心臓は燃えている」の歌録りが残っているだけの段階で祖父が亡くなりました。」

──レコーディングも大詰めの時期に。

「そうなんです。亡くなった祖父の顔を見た時、自分でも残酷だなと思ったんですが、お金持ちでも貧乏人でも死ぬ時は平等なんだなって。でも、祖父の死に顔を見ていたら、“好きなようにやれ”と言ってくれているような気がして、歌入れ直前に「体は冷たく、心臓は燃えている」の歌詞を書き直しました。」

──この曲はアルバムの最後に収録されている重要な曲だと思いますし、この曲を書き直して歌入れをしたことで、ようやくアル バムが完成したという感じでしょうか?

「まさにそんな感じでしたね。」

──前作『恋に似ている』と今回の『SONGS』では歌詞の内容の変化やサウンド面での進化などが感じられますが、意識して変えた部分は?

「1stアルバムを作った時はTHE ラブ人間を結成して3年、その前に10年間他のバンドをやったりしていたので、個人的には13年目にして初のフルアルバムでした。もともとは、シンガーソングライターだった僕がバンドをやる…だから、俺が作った曲をバンドが演奏しますというのが『恋に似ている』だったんだけど、2ndは違いましたね。今回のアルバムのために曲作りを始めて、アコギ1本で曲を作っている時でも、頭の中でドラムが鳴っていたり、バイオリンが鳴っていたりしたんです。それだけバンドメンバーの鳴らす音が僕の中に入ってるってことなんですよね。“THE ラブ人間として作る初めてのアルバムなのかもしれない”って思いました。」

──金田さんが作った曲をバンドメンバーが演奏するためにアレンジするのではなく、金田さんが作ってる時からすでに頭の中にバンドサウンドが鳴っているということであれば、よりバンドらしい作品になったということですか?

「はい。スタジオで実感したのは、音楽の器が大きくなったということです。僕たちの最大の武器は“言葉”です。でも、その言葉が音楽という器からあふれちゃってた時期があったんですね。音楽という器に言葉を放り込んだ段階で、“あ、言葉が多い”って。あふれ出した言葉は、例えばライヴのMCになったりするんですが、それは俺が求めてることじゃないんです。ライヴを例に挙げると、説明的なMCを必要とせず、全部を音楽と歌で伝えられることが理想型ですから、バンドメンバーの許容量が増えるというか、音楽の器が大きくなったことがすごく嬉しいです。特に、ドラムの服部(ケンジ)とベースのおかもと(えみ)は、歌詞の一員になれている演奏を今はしてくれます。」

──たくさんの言葉を受け止めるだけの器の大きさに。

「はい、なりました。バンドメンバーが音楽の器を大きくしてくれた分、俺自身は言葉へのこだわりがより強くなりました。今までは一回書いたものは書き直さないというスタイルだったけど、自分がとことん納得できるまで歌詞を書き直して、曲が出揃ってアルバムタイトルを決める段階では、“もうこれ以上の言葉はいらない”って。僕にとって、今回のタイトルは記号でしかないんです。」

──最終的に、どういう理由で“SONGS”というタイトルに決めたのですか?

「僕自身は、無題でも良かったし、“セカンドアルバム”でも良かったし、“THE ラブ人間”というセルフタイトルでも良かったんです。意味合いのないものにしたかったから。2012年のことを歌ってるから“2012”でも良いわけです。そんな中で、ディレクターが“SONGS”ってどう?って言ってくれたんです。10曲入りなので、10個のSONGが集まった“SONGS”。それ、いいんじゃないって。」

──イメージを限定させない言葉ですから、いろいろな楽曲が入っている今回のアルバムには合っていると思います。

「あとひとつこだわったことがあります。僕はいつもレコードをイメージしていて、今回も5曲目の「ウミノ」までがA面、6曲目の「犬の人生」からがB面だと思っています。なので、この間だけちょっと曲間の時間を長くしています。ここで一度止めて、煙草を吸ったり、コーヒーを飲んだり、本当に小休止してもらって、6曲目以降を聴いてもらうっていうのもぜひやってもらいたいですね(笑)。」

取材:田中隆信

(OKMusic)


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