2013-11-20

【TOTALFAT】さらなる前進の起爆剤となり得る 熱い息吹に満ちた初のベストアルバム

 インディーズ時代の曲は全て新録し、新曲も収録された初のベストアルバム『THE BEST FAT COLLECTION』。TOTALFATの偉大な足跡を辿りつつ、未来への期待が大いにふくらむ一枚となった。


 【“ベストを尽くした”っていうほうのベストアルバムじゃない?】


──初のベストアルバムですね。

Shun「そうです。俺らは毎年長いツアーを回っては作品を出し続けていて。曲は増えているんですけど、周りのバンド以上に昔の曲もライヴでやっているほうなんですよね。そういう昔の曲がリアルな現場で熱を帯びて響いているのを感じる中で、“いずれ録り直したいね”っていう話は、俺らの間で常日頃から出ていたんですよ。あと、“ベストアルバムをみんなで盛り上がって出せるタイミングってどこかにあるよね?”っていう話も前からしていて。それが今回のタイミングなのかなと。7月にミニアルバム(『SEVEN LIVES』)を出して、そのカウンターで20曲入りのベストアルバムを出すのっていいなと思ったんです。ふと気付いたら、“インディーズデビューしてから今年で10年だね”というのもあったし。でも、ただ編集盤を出すのは、何かが違うのかなと。“今でもこの曲たちをライヴでやっていて、ライヴが盛り上がって、TOTALFATは今こういうふうに活動しているんだ”っていうのは伝えたかった。そういうのもあって、昔の曲は録り直しました。」

Jose「どの曲を収録するかいろいろ考えたんですけど、やっぱり今でもライヴでやっているものを選びました。まだまだ現役の曲ばかりです。もしワンマンライヴで今回のアルバムの曲順通りにやったら、俺らもヘトヘトになるんだろうなと(笑)。それくらい攻めている作品になっています。バンドとしての持ち味である元気の良さって、これを聴いてもらえれば絶対に分かると思います。聴いてスカっとしてほしいです。」

Bunta「インディーズの曲が新録っていうのが、一番のトピックじゃないですかね。新録することによって、俺らの成熟した演奏感、ヴォーカル感で届けられるというのが嬉しいです。メジャーで出したものは新録じゃないですけど、それはこの3年間のサウンド。そういう曲が集まっているこのベストアルバムは、“今のTOTALFATが全力で作った”っていうものになっていると思います。“ライヴアルバム”とまでは言わないけど、それに近いような空気も入っているんじゃないですかね。このベストのための準備ってほとんどしていないんです。それくらいライヴでいつもやっている曲なので。いつものレコーディングの2倍、3倍のペースで進んだんですけど、クオリティーはいつもと変わらないものになっています。バンドとして培ったものが、そのまま出せていますね。」

Kuboty「録り直しは楽しかったですよ。僕は中学生、高校生くらいの時に今の自分の技術の9割方が身に付いていたので、逆に今になって改めて昔の曲を弾いてみて、“おい! これ難しいじゃねえか!”みたいなのもありましたけど。改めて昔の自分が弾いたものをコピーして勉強になりました(笑)。あと、今回2曲ほどにギターソロを追加したりもして。僕は2004年加入なので、「Nothing But」は初めてレコーディングしました。今回の収録曲の中だと唯一レコーディングを体験していなかった曲なので、僕としては新曲みたいな感じです(笑)。新しい魂としてオリジナルにはなかった、かなりイケてるギターソロを入れました。」

Shun「これはいいソロだよ。」

Jose「すごくいい。」

Kuboty「このアルバムでベストギターソロくらいの感じのものが弾けました。「Nothing But」は今回の中で一番古い曲なんですけど、最新のギターソロが入るという(笑)。なんだか不思議な感じもあります。他はほぼもともとと同じギターソロなんですけど、「Starting New Life」と「Nothing But」はまったく違うものにしたんです。」

──TOTALFATってKubotyさんのギターによってハードロック、ヘヴィメタル的な要素が加わっているのも、個性につながっているんですよね。

Shun「そうなんですよね。もともとはその要素ってなかったんですけど、Kubotyが2004年に正式加入したところで、サウンドがガラっと変わったんです。イノベートされていったというより、そこで初めて確立されたんだと思います。」

──そもそもTOTALFATの始まりって、1999年に高校の同級生だったShunさんとBuntaさんがオフスプリングのライヴを観に行った帰り道で“バンドをやろう”っていう話をしたことがきっかけですよね?

Shun「そうです。ライヴを楽しんで、クタクタで、瀕死の状態で、お互いに会話もできないくらいの感じだったんですけど。そこでボソっと出てきた言葉が“バンドやろう”(笑)。ほとんど会話がいらないくらいすごいライヴでした。僕はずっとバンドをやりたかったんですけど、間違いなくオフスプがスイッチを入れてくれましたね。」

Bunta「ベスト出すまでやることになるとは、その時は考えてもいなかったけど(笑)。若い頃だったらベストを出すことに抵抗感があったかもしれないけど、こうやって作ってみて、改めて録ってみたりして感じるのは、“良かったなぁ”っていう気持ちです。感慨深い(笑)。もちろんここで満足しているわけじゃないし、もっと行くためのベストなんですけど、ベストを出せるまで続けられたっていうことは、バンドマンとして幸せだと感じています。」

Jose「なんかこのベストって、一般的に言われるベストと違う感じもあるんだよね。」

Shun「“ベストを尽くした”っていうほうのベストじゃない?」

Jose「そうかも(笑)。」

Bunta「そうだね。ここからもっと上に行くためのベスト。」

──この人たち、この先のことをすでにバリバリに考えているんだろうなっていうのが伝わってきますもん。新曲の「Teenage Dream」は、まさにそうだし。

Shun「まだ十代のことを引きずっているんですよ(笑)。」

Jose「確かに(笑)。」

Shun「そこから抜け出せない病気です(笑)。」

Bunta「『SEVEN LIVES』のツアーファイナルも、高校の同級生や後輩のバンドと一緒にやるんですけど(対バンのBIGMAMA、グッドモーニングアメリカは同じ高校の出身)、生き残っているヤツらって、その当時の気持ちを今でも持っているんですよね。例えば、このベストを担当するレコード会社の営業のヤツは、俺らの高校の同級生だったりするし(笑)。」

Jose「そいつと一緒に旅行に行ったりしていました(笑)。」

Shun「一緒にスノボへ行ったり、女の子にフラれた時に俺の家に泊まりに来たり(笑)。俺らの周りのヤツらって、ちゃんと点と点を線でつないでここまでやってきたんです。みんな音楽を通して豊かな時間を過ごしてきたヤツら。だからこそ、今でもお互いにつながっているんですよね。そうやって過ごしてきた十数年間にはすごく自信があります。そういう気持ちもこのベストを作って改めて出てきたのかな。」


 【現場でやっている俺らは今のほうが昔よりも楽しいんです】


──TOTALFATって、音楽にときめいた気持ちをフレッシュに燃やし続けて歩んできたんでしょうね。例えば、「Dear My Empire」を聴いてもそんなことを感じました。これってオフスプの日本でのツアーをサポートした時の気持ち?

Shun「そうです。そのツアーに出た直後に書いた曲ですね。」

Jose「オフスプのツアーに出た時はファンも喜んでくれて、いっぱいTOTALFATのTシャツを着た人たちが来てくれたんですよ。すごく嬉しかったです。」

Shun「オフスプのライヴを観てバンドを組んで、ここまで来たっていう話をステージでしたら、オフスプのファンからも拍手喝采をもらって(笑)。それも嬉しかったですよ。」

Jose「おじさんの“よくやった!”っていう声が届いてきたりして(笑)。俺らもそういうオフスプリングみたいなバンドにならないといけないですよ。」

Shun「そうだね。」

Jose「だから、今、改めて気合いが入っていますよ。」

Bunta「ベストを出してひと区切りして、次にどう俺らをさらに広めていくか、どう闘っていくのかっていうのを考えるほうが、今は大切なんじゃないかと。いろんなバンドが海外でやっている話を聞くと、俺らも負けてらんないなと思いますし。」

──あと、いろんな仲間がゲストで参加してくれたのも、このベスト盤の楽しさですね。

Jose「そうなんです。HER NAME IN BLOODとかも来てくれましたし。」

Shun「Northern19のKentaroは、インディーズ版の「Good Fight & Promise You」の時にも声を入れてくれていて。今回も来てくれたんです。」

──「DA NA NA feat. TAKUMA (10-FEET) 」は、10-FEETのTAKUMAさんですね。

Shun「入魂の一曲ですよ。」

──今の日本のロックシーンっていろんなカッコ良いバンドとかがいるし、お互いに刺激し合うことでさらに面白くなっていったらすごく楽しいですよね。

Shun「10年前、15年前もいろんなジャンルの壁を必死で壊そうとみんながやっていましたけど、自然と壊れるような感じになっているようにも思います。現場でやっている俺らは、今のほうが昔よりも全然楽しいんです。そういうのは現場で現役でやっている連中が世間に伝えていくべきだし、もっとお客さんを獲得していくべきだと思います。」

Bunta「あらゆる現場が戦場だよね。だって、フェスに出ることで逆にお客さんが減るっていうことだってあり得るんだから。しょぼいライヴしちゃったらそうなる。」

Jose「緊張感があるよね。」

Shun「ロックも生まれてから50年くらい経って、いろんなものが出切ったところはあるのかもしれないけど、やっている人間がどれだけ憑依するかとか、表現方法とかでまだまだやれることがたくさんあるんだと思います。」

──そういう未来への期待もふくらむベストアルバムになったんじゃないでしょうか?

Shun「そうですね。7月に出した『SEVEN LIVES』の続きというか。最新型のメロコアっていうのをTOTALFATとして常に体現していくべきだと思うし、殻を破ってもいきたいですから。例えば、バラードも書けるバンドになりたいですよ。武器をどんどん増やすつもりで頑張っていきます。『SEVEN LIVES』のツアーで気付いたというか、育ったことなのかもしれないですけど、お客さんがフルコーラスで歌ってくれる感じも出てきているんです。そういうことによっても、また新しい曲が書けるようになるんじゃないかなと思っています。」

Jose「3 回連続とかで来てくれるお客さんがライヴの後に出待ちをしてくれて、話しかけられたんですけど、声が枯れているんですよ。“どうしたの? 風邪?”って訊いたら“歌いすぎました”と(笑)。それは嬉しかったですね。」

Shun「お客さんが楽しめる要素っていうのは、俺らのほうからもどんどん提示していきたいです。」

Jose「あと2年でバンド結成15周年なんですけど、まだまだやりたいことがいっぱいあるので、今後も期待してもらえればなと思っています。」

Shun「それにしても…節目のつもりでとりかかったベストアルバムだけど、バンドの状態と活きがいいので、全然節目っぽくならなかったね。」

Jose「ワクワク作品になりました(笑)。」

Kuboty「そうだね。僕もリスナーとして楽しみなアルバムになりましたから(笑)。」

Bunta「ノスタルジーが出るはずの昔の曲が新録だからだよ。メジャーでの1作目の曲が強いて言うならば一番ノスタルジックだというのが、すごくいいなと思います(笑)。」

取材:田中 大

(OKMusic)


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