ああ俺には何か足りないと
何が足りぬやらこの俺には
弱き人のその肩に
やさしき言葉もかけられず
人を思ううちが花よと
わずかに己れをなぐさめた

ああ

ひとりいれば人を思い
もてあます時は仕事を思い
道を歩めば人に出会い
町に出ずれば車に出合う
ああ平和なるこの生活が
なぜに我らを蝕(むしば)むのか

ああ

ああ哀れ 時の力は我が命をいつか食いつくし
しかばねとなるまで
しかばねになるまで
何が足りぬやら

我が命尽きる
その日が来るまでに
時は我が血を吸い身を削り
生活手にす遑(いとま)も無きがままに

ひとりベンチに腰かけて
歩み行く人を眺めやった
ああまじりあいたる町の響きを
ひとり聞きながら眺めやった
ああうち仰ぐ空のかなたに
きらりと光る夕陽あり
流るるドブの表を
きらりとさせたる夕陽あり
俺はこのため生きていた
ドブの夕陽を見るために
ドブの夕陽を見るために


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