草木も眠る丑三つ
ぬるい風がそよめく
下駄の音も幽かに
カランコロン近付く

ホトと門を叩くは
年増女丸髷
ぼうと滲む燈籠
浮かぶ牡丹芍薬 振袖姿

いつまでもいつまでも
お慕いしております あなた
どこまでもどこまでも
付添うてまいります あなた

盆の鐘の響きに
卒塔婆二つ蠢く
蚊帳の中の睦言
髑髏抱けば彼方で 南無阿弥陀仏

けっしてけっして
裏切ってはなりませぬ あなた
どうしてもこうしても
放れはいたしませぬ あなた

あはれ男の顔貌には
死相の黒い影
すわと店子の八卦見たち
お嬢の菩提寺へ馳せ参ず

したり和尚のいうことには
風前の灯火
さよう過去世の悪因縁
観音の功徳を唱えよ

秋の空の移ろい
男心に似たり
垣根越えしあの世は
恨み言を繰り返し
今宵もまた来る

さあ ご一緒に参りましょう
さあ ご一緒に暮らしましょう
静かに 仲睦まじく
誰にも 邪魔されず
さあ 参りましょう

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