かごめ 籠の中 誰そ彼の朱に落つ
踊る祭囃子 噎せ返る人垣
列ぬる提灯の狭間に ゆらり影
孤面「おいでや、おいで」
丹ゐと笑み 手招き

右手に紅く滴る甘い林檎飴
左の手を引く稚児は繋ぐも見ず知らず
虚ろ眼 鬼火 青黒く揺らめき
祭囃子 背向けし 空蝉の森に

蝉時雨と共に憂いに戯れば 十を数え振り返り縷縷と口遊み
ねんねんおころりよ 揺湯う子守唄 骨身深く沁入りて四方は丑刻

朔の夜 這い出づる 怨み 辛み 妬み 悔闇 憎染み
夥しき腕 彼方 此方 其方 何方 伸び出でる

孤面 囁く
「ほら、逃げしゃんせ」

踏み染む跫音は ゆらり どろり べちゃり じろり ぐるりと
孤面は指さす 彼方 此方 其方 何方 せせらせら嗤ゥ

佇む其の子を手引き参道を駆けれど
九十九折の鳥居 歪む石畳路
谺せし からころからん 鼻緒 ぷつり、と
卒爾に此の子 引き攣りて含み笑ヱバ

結 ビ 手 開 キ

真ん丸な眼が 見開き 血走らせ 這い摺り廻れば
朽ち木に逆さ吊り 彼方 此方 其方 何方 宙ぶらり

女童問う 皺嗄れ声で
「うしろの正面…だあれ?」

指さす

目隠し鬼さん 夜明けの晩に
鳴かずの鶏は 首ちょん切られ

あはれなり

朔の夜 這い出づる 怨み 辛み 妬み 悔闇 憎染み
夥しき腕 彼方 此方 其方 何方 伸び出でる

孤面 嘲り
「ほら、つかまえた」

踏み染む跫音は ゆらり どろり べちゃり じろり ぐるりと
かごめ かごのなか は いついつでやる
出やれず 小止み咽く 消ゆ

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