2018-01-13

MERRY、2018年一発目となる47都道府県ツアー大阪公演が大盛況

MERRY が1月7日(日)、2018年一発目となる『MERRY 47都道府県TOUR「システム エムオロギー」~AGITATE #3「思想」』大阪公演を梅田シャングリラにて開催した。

2017年9月3日の熊谷HEAVEN'S ROCK のCORE Limited(ファンクラブ限定ライヴ)をツアーの導入とし、その3日後の9月6日、千葉LOOKから本格的に47都道府県ツアー『システム エムオロギー』をスタートさせたMERRY。現在も続行中のこのツアーは、9月6日にリリースされた、アルバム『エムオロギー』を引っさげての全国ツアーであるのだが、そこに、結成から16年目にしてMERRYの思想を極限まで追求したと言っても過言ではないアルバムの中身と、約10年ぶりとなる47都道府県ツアーを決行した彼らの想いを重ね合わせてみると、このツアーが単なるアルバムツアーであったとは考えにくいことが解る。それを証拠に、彼らはアルバムを作り上げる前に47都道府県ツアーを決めており、さらに、アルバム制作時には、タイトルとなっている『エムオロギー』を最初に掲げ、MERRYにとっての【禁断の世界】を追求しながら、楽曲と歌詞を作り上げていったのだと言う。このツアーには、前半の16本に『~AGITATE♯1【妄想】』、中盤の16本に『AGITATE♯2【嗜好】』、後半の15本に『AGITATE♯3【思想】』、そして、2月3日に日本青年館で迎えるファイナルには『~AGITATE FINAL【禁断】』というサブタイトルが付けられているのだが、彼らは、MERRYの思想を極限まで追求したアルバムを引っさげ、MERRYが掲げるイデオロギーを47都道府県に轟かせることで、自らの存在意義を証明したかったのではないかと思えてならない。実際、このツアーでのステージングを見て、彼らは、自らが存在する意味と、MERRYというバンドが成すべきことは何であるのかを、改めて見つめ直したのではないかと感じた。

2018年一発目となった1月7日の梅田シャングリラでのライヴは、まさしく、そんな常軌を逸した気迫と辛辣な叫びと、痛々しいまでの激しくも繊細な感受性に胸を激しく引き裂かれた瞬間の連続だった。それは、2017年の最後のライヴとなった、12月24日の横浜BAYSISで観たライヴとも、まったく異なるものである。この2本は、同じ『~AGITATE♯3【思想】』を掲げたライヴであったのだが、横浜BAYSISでのライヴは、2017年という年を締めくくるという意識もあったのだろう、大きく構えた余裕的な余白を感じたのだが、年を跨ぎ、約2週間ほどの冷却期間を置いて向き合った梅田シャングリラでのライヴは、新たに宿った狂気と捨て身の覚悟が感じられた、一切の余白をも用いることの無い“赤裸々なMERRY”を魅せてくれたのだ。まさに、窮極の生き様で。5人はインダストリアルな「「M」World Order」をSEにステージに登場すると、結生、健一、テツ、ネロによって畳み掛けられる“MERRY此処に在り”と言わんばかりの独特なフレーズのサウンドが印象的な「MASS CONTROL」からライヴの幕を開けた。

“見えるのは 黒い光 そこに在るユートピア”「MASS CONTROL」の歌い出しを唄うガラの声は、一瞬にして感情のすべてを持っていかれるほど切なく、恐ろしいまでに素晴しく透き通っている。それは、一度聴いたら耳から離れることはない、習慣的な耽溺症状にも似た中毒性の高い、他に類を見ない、誰にも真似することはできないガラという歌い手の指紋である。この日もその歌い出しの瞬間に、オーディエンスが心を鷲掴みにされた衝撃がフロアに充満していたのを直に目にした。彼らはそこから、「犬型真性MASOCHIST」「gaudy」と、アルバムの並び順に届け、さらに聴き手を深みへと引きずり込んでいった。人間の欲望が羞恥なく、言葉を選ばずに垂れ流される「犬型真性MASOCHIST」、鬱憤を爆発させた「gaudy」に、オーディエンスは放たれる重厚なサウンドに身を揺らしながら、力強く握った拳を振り上げた。

そもそもロックとは、音楽ジャンルであると同時に、既成概念や体制に対する反抗心や怒りを表現する言葉でもあり、言い方を変えれば、集団を嫌い反発する生き方を示す言葉でもある。故に、群れること、一体となることはロックと真逆の位置にあることでもあると思うのだが、MERRYと同じ意志を持って集まった異端児たちは、どうやらそこに自らと同じ生き様を感じているらしい。16年間MERRYとしての強く凛々しくも、時にどうしようもないほど情けなく惨めで哀れで、普通は隠したくなる汚く愚かな業を曝け出す人間らしい生き方を唄い続けてきた彼らのサウンドと唄を通し、根本で繋がっているのだろう、他には無い異様な熱がライヴに宿るのだ。それ故の“共感”が一体感を生み出しているのだと考えると納得がいく。

「梟」まで一気に届けられた鬱血した感情は、「Happy life」から少し景色を変えた。汚れきった、腐れきった世界の中で、MERRYというバンドと出逢い、共に叫び、深く求めてくれているオーディエンスへの愛を感じる「Happy life」は、まさしくそこに集まった1人1人のために歌われていたと感じた、とてもあたたかな瞬間だった。そして、「不均衡キネマ」「絶望」という定番的な流れから、彼らの個性であるレトロックでオーディエンスを躍らせた。ガラが大道芸人を思わすステッキを持ったパフォーマンスを加えて魅せる「不均衡キネマ」も、もはやMERRYというバンドの特許であり、MERRYというバンドの象徴だろう。上手と下手の天井から吊るされた年代を感じるシャンデリア、ゆっくりとフロアの上で回転し方々に光を放つミラーボール、ステージのバックに施されたベルベットのカーテンの深い赤。古き良き時代のグランドキャバレーを彷彿させる、どこか寂しげで哀愁をおびたこのハコ(梅田シャングリラ)に、MERRYというバンドはとても馴染んでいた。ガラという演者も、この空間にスッポリとハマっていたのも、彼自身がそんな空間を味方につけていたからだろう。続けて届けられた「リフレイ~土曜日の涙~」「平日の女 -A面-」といった、彼らが名付けた哀愁をおびた綺麗なメロディ=“レトロック”では、そんなシチュエーションも手伝い、いつも以上にオーディエンスの心をグッと近い距離に引き寄せたのだった。

黒電話が携帯に、読み物が紙からネットへと当たり前のように移り変わった時代の中で、恋愛の形も叶わぬ恋の形も姿を変えようとしている。すべてにおいてカジュアルになってしまった時代は、奥ゆかしさや哀傷という感情すらも奪ってしまっている気がしてならない。行間に宿るガラによって綴られた陰を落とす歌詞も、自然と古さが募っていく。しかし、それはMERRYにとってマイナスなことではないと、この日彼らのライヴを観て感じた。むしろ、それこそが、改めてこの先彼らの新たな武器になろうと確信した。【哀愁】【ナンセンンス】【エログロ】【昭和歌謡】、そして、MERRYという生き様。MERRYというバンドのすべてが網羅された満足度の高いライヴであった『「システム エムオロギー」~AGITATE #3「思想」』は、確実に、2月3日に日本青年館で行われるファイナル公演『~AGITATE FINAL「禁断」』へと続く最後の坂道を、脇目もふらず一心不乱に駆け上がるための全身全霊の力であったに違いない。

「GI・GO」から、新たにライヴが始まったのかと思うほど激しく、遮二無二爆走し続ける彼らの想いに胸を締め付けられたアンコール。オーディエンスは、そんな彼らの極限の叫びに負けじと、爆音の中でもハッキリと聞き取れるほどの声で、ガラが綴った言葉(歌詞)を叫び返した。「under-world」「sweet powder」は、それらが新曲としてライヴに加わった当時よりも、さらに熱く熟していたと感じた。赤いツバ広のハットを斜に被り、ガラという人間に宿る気だるさと妖艶さを惜しげもなくひけらかしたパフォーマンスで魅了した「sweet powder」や「赤い靴」には、改めて絶対的なポテンシャルを感じさせられた瞬間でもあった。

「47都道府県ツアーもあっという間に一桁になってしまって。1ヵ所1ヵ所積み重ねてきたものが、最後の2月3日の日本青年館でどう花開くのか。どうみんなに返すことができるのか、というのをいろいろと考えていますので、楽しみにしていてもらえたらと思います。ぶっちゃけ、悔しいライヴもあったし、あぁ、もう出し切ったって思えたライヴもあったけど、そういう全部のライヴが、俺たちの背中には乗っているから、そのすべての想いを全部持って青年館のステージに立とうと思っていますので、是非、ファイナルも集まってもらえたらなと思います。必ずいい景色を魅せます。必ず幸せにします」(ガラ)

“心の中に、俺たちが動いている映像が残るようなライヴにしたい”と、ガラは言った。今、目を閉じてもはっきりと映像と音が蘇る。SHOW要素の強いMERRYのライヴは、聴覚はもちろん、視覚にも深い印象を残し、もっと言うなれば、触覚すらも記憶の中に残すほど、艶かしい。バンド側が残そうとする痕跡が、しっかりと聴き手に届いているのは、バンドとして実に素晴しい形である。この日は、いつもよりMCの時間を少し長く取り、メンバー1人1人がファイナルとなる日本青年館への想いを語ったのだが、まったく同じ想いをそれぞれが持ち、やはり、ガラと同じく、47本のツアー1本1本を背負ってファイナルへと向かうことをオーディエンスに誓ったのだった。

“君とならずっと どこまでだって一緒に行けると思っていた”と歌われる「エムオロギー」は、やり直しなんてとうに出来ないMERRYという人生を一緒にここまで歩んで来てくれたファンたちに捧げる、これ以上ない愛しさが詰まったラブソングであると私は想う。ガラは、“今回のツアーは、この曲を唄うためだけにあったと言っても過言では無い”と語る。彼らは、“MERRYにとっての禁断の世界”を追求する中で、“MERRYにしか出来ない、MERRYが目指す本当の場所”を見つけたのではないかと思うのだ。シニカルに腐った社会を斬ろうとも、汚い言葉で理不尽を罵倒しとうとも、彼らが伝えたいことは1つ。“エムオロギー 俺はお前らを信じたい”。その言葉の裏側にある、彼らが1番大切にしているもの。それは、“この声が届く日まで歪みきった世界で 無理をしてでも もがきたい”と歌われる、この日、久しぶりにやった「閉ざされた楽園」もそう。それは、“世界がどうなったって 別にそれでいい 目の前の人達を幸せにしたいだけ”と歌われる「Happy life」に通ずる想いでもあると思うのだ。“目の前の人を幸せいしたい”そここそが、MERRYが存在する意味なのだと。そう思うと、中盤に届けられた『エムオロギー』からの1曲である、性欲に狂ったイカレ唄「SIGHT GLASS」も、窮極のラブソングに思えてくるから不思議である。人間の欲望を情けないほど曝け出した、体裁をかまわないありのままの生き方に、聴き手は心を奪われるのだろう。彼らのもがきこそ、聴き手の救いとなる。それがMERRYの魅力。欲望のおもむくまま人間らしく素直に生きる。誰にでもできそうなことではあるが、人間、これが1番できない生き方なのである。それを貫くMERRYは、やはり逸材なのである。この日、明日のことなど、きっと何も考えていないのだろうと思うほど、そこで命尽きても後悔はないのだろうと思うほど、圧倒されるほどの気迫で挑んでいた5人の姿は、人間としてとても美しい姿だった。

不確かな現実の中を、裸足のまま走り続けてほしい。もがき続けてほしい。エムオロギーを叫び続けてほしい。それが、MERRYの1番美しい姿だと思うから。2月3日。日本青年館のステージで。笑えない日々とさよならするために———。

text by 武市尚子

【ライブ情報】

『MERRY 47都道府県TOUR「システム エムオロギー」~AGITATE #3「思想」』
1月13日(土) 松山サロンキティ
1月14日(日) 高松DIME
1月20日(土) 盛岡club change
1月21日(日) 秋田LIVE SPOT 2000
1月27日(土) 滋賀B-FLAT
1月28日(日) 京都MUSE

『MERRY 47都道府県TOUR「システム エムオロギー」~AGITATE FINAL「禁断」』
2月03日(土) 日本青年館



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