2013-06-20

【FLiP】最高を上回る快感に導くのは心地良い毒!

 前作『XX emotion』から約1年振りとなるリリースは、シングルを挟まずいきなりのフルアルバム。全曲セルフプロデュースによる3rdアルバム『LOVE TOXiCiTY』は、FLiP史上もっとも過激で愛に満ちた一枚になった。そんな作品についてSachiko(Vo&Gu)に語ってもらった。


──全11曲42分ですごくコンパクトだけど、とても内容の濃い作品ですね。どういう意識で制作に臨んだのですか?

「例えば、歌詞は生々しかったり、ドロッとした部分を出しすぎると、偏った作品になってしまうんじゃないかと今までは不安があって。でも、もともとFLiPが持ってるカラーや、私が吐き出したい感情や言葉って、決してサラッとはしていないんです。そういう本質的な部分を、ぶちまけてやろうという意識でした。サウンド面では、個々の楽器で今までとは違うアピールをしている部分があって。さらに、歌を聴かせながら、でも美味しくというか…展開がシンプルでも出るところは出て、引くところは引く。それによって際立つような気持ち良さを、今まで以上に意識しました。」

──タイトルの“LOVE TOXiCiTY”には、どういう意味が?

「単純に訳すと“愛の毒性”で、このアルバムは有毒というか、綺麗事じゃないこともたくさん歌っているから、中毒性みたいな言葉を使いたくて。ただ、愛のことを歌っている曲も多いので、“LOVE”を付けてみたらしっくりきました。」

──聴いてイメージしたのは、色で言えば“紫”とか“黒”で、言葉で言うと“官能的”とか“エロス”というものだったんですけど。

「あぁ~、“エロス”という言葉は近いです。」

──2曲目の「カミングアウト」には《最低なキスがしたいの》というフレーズがあって。毒々しいけどキャッチーで。愛憎というか、逆説的な愛も感じるし、同時にアルバム全体のことをすごく言い表していると思いました。

「そうですね。このアルバムで一番最初にできた歌詞が「カミングアウト」なので、アルバムに1本筋を通してくれた曲です。今一番出したいニュアンスが詰まっています。もしこれを“最高のキスがしたい”と表現したら、当たり前すぎちゃうし、ただ気持ち良くなりたいがためにキスしています、みたいな(笑)。“最悪の”と真逆の表現をすることで、みんなの知ってる“最高”を上回る快感を得られる気がして…。」

──1曲目の「Tarantula」で“体液”とか“排泄”とか、普通は歌詞に使わないだろう言葉が出てくるのも衝撃でした。

「その“普通”を気にしていたら、自分の作りたい作品にはならないですから。偏ってるとか、普通じゃないとか、イキすぎてるとか言われても、そのくらいがちょうどいいと思うので。」

──《現実を消去せよ 感覚を放てよ》というフレーズには、その自由な表現に対する想いがあふれていますよね。

「すごく出てますね~。自分たちが築き上げてきた先入観や固定概念を壊せるのは、やっぱり自分たち自身なんで!」

──「ニル・アドミラリ」は聞き慣れない言葉がタイトルになっていますが、ラテン語で“無感動”という意味だそうですが。

「伊坂幸太郎さんの『陽気なギャングが地球を回す』の中に“おまえはニル・アドミラリみたいな男だ”というような表現が出てきて、面白い言葉だと思ったんで。「ニル・アドミラリ」は、否定的な感情もエネルギー源になるということを歌っています。自分は無感動で空っぽな人間だと思っていても、それが自分自身なのだからそれでいいじゃないか、それを含めた自分らしさの中で生きる術を見付けていけばいい、と。」

──何かの作品からヒントを得ているものは他にも?

「9曲目の「二十億光年の漂流」は、谷川俊太郎さんの『二十億光年の孤独』という詩を読んだのがきっかけですね。谷川さんの詩はスケールが大きくて、世界観が立体的なんです。だから、私の歌詞もそういうものになったらいいなと思って。簡単に言うと、“人生は漂流みたいなもんだよ”と歌っています。これは学生さんとかにぜひ聴いていただきたいです。シンプルな王道の曲なので、コピバンとか軽音楽部とか、バンドを始めたばかりの人にでもすぐにコピーできると思います。そういう初期衝動的エネルギーと前向きさを込めています。」

──中盤のミディアムロック「a will」は、歌詞があとからジワジワとキました。これは手紙がモチーフですか?

「タイトルの“a will”には遺書という意味があって。私自身、遺書を書いたことがあるし、そういうものを歌にしたら面白いなと思っていたんです。遺書であり、音楽としても成立するものにしたくて、言葉選びやニュアンスをすごく練り直しました。愛に生きる上で、愛情というものに敏感でありながら同時に疾患もしていて、常に愛情を欲している…それは自分の中にあるもので、そういう想いを書きました。移動中なんかに聴くと、自分でも泣きそうになりますね。」

──他にも、バラードの「永遠夜~エンヤ~」、4つ打ちの「LogIn”Rabbit Hole”」、グランジロックの「Dear Miss Mirror」などあって。ラストの「Bat Boy! Bat Girl!」は、ライヴでコール&レスポンスして盛り上がりそうですね。

「7月のツアーでやるのに、鬼気迫る感じが欲しくて作りました。ドラムのYuumiが、初めてツインペダルを使っていて、みんなでシャッフルがいいなとか言いながら作りました。」

──《神様がいない夜》というのは、いい表現ですよね。

「私もそう思います(笑)。アンダーグラウンドな世界で生きている、ちょっとヤンチャな子たちが暴れ回る感じです。聴いてくれたみんなには、ライヴの気持ち良さを体感しにぜひきてほしいですね。あと、ツアーでは対バンやイベントではなかなか観てもらえない、アルバム中盤のミドルやバラードの世界観も観てもらえるのが嬉しくて、今から楽しみです。」

──あと、ジャケット写真はSachikoさんおひとりですが。

「アルバムの世界観を踏襲した一枚のアートとして表現したくて。廃退したマイナスの世界とプラスの両方が混じり合ってバランスを保っているイメージ。パープルのドレスのシルエットがきれいに出ているので、すごく気に入っています。」

──背中もがっつり開いてますが。

「振り切った中に存在する、きれいで、でも下品じゃないなものというか…。結局、私は過激なものが好きなんです(笑)。」

取材:榑林史章

(OKMusic)


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