2011-10-20
BUMP OF CHICKEN、夢そのものだったコラボレーションと魂の歌
BUMP OF CHICKENの新曲「ゼロ」は、国民的RPG『FINAL FANTASY』シリーズの最新作『FINAL FANTASY 零式』の主題歌として書き下ろされたものである。今回のコラボレーションに至った経緯と「ゼロ」が生まれるまでを、メンバー全員に語ってもらった。
【昔、冗談半分で語り合っていた夢物語が ついに現実のものになった】
──今回の『零式』とのコラボレーションは突然オファーをもらったという感じだったのですか?
藤原 いや、実は突然ということでもないんです。
直井 『零式』のクリエイティブプロデューサーであり、キャラクターデザイナーでもある野村哲也さんとは数年前にお食事をご一緒したことがあって。
藤原 そう。『FINAL FANTASY・ アドベントチルドレン』という映像作品(2005年9月リリース)の試写会に誘っていただいたんですよね。ホントに光栄なことに。その試写会は六本木ヒルズで行なわれたんですけど、もう、すごく華やかな席で。僕らは隅っこのほうで萎縮しながら試写が始まるのを待っているという感じで(笑)。作品にも感動したし、後日、まさか野村さんとお食事させていただけるとは、という感じで。その食事の席で、僕らはただただ“『FINAL FANTASY』シリーズが大好きです”ということを伝えて(笑)。野村さんと“いつかお仕事をご一緒できたらいいですね”という会話はあったんですけど、当時の僕らはそれが現実のものになるとは思ってもみなくて。
直井 以前からみんなで夢を話すように“いつか『FINAL FANTASY』の主題歌を作るなんてことになったら最高だよね”って話していて。なので、今回レコード会社のスタッフから“『FF』の主題歌の依頼がきました”って聞いた時は4人で“えええっ!?”ってなって。声もちょっと高めになるくらい(笑)。信じられないんですよ、僕らは。
増川 うん、信じられなかった。
直井 で、シリーズ名を聞いたら、もともと『零式』は『アギト』というシリーズ名だったんですけど、信じられなかったですね。
──『映画ドラえもん新・のび太と鉄人兵団~はばたけ 天使たち~』のために「友達の唄」を書き下ろした時も同じような驚きと喜びがありましたよね。昔から親しみを覚えてきた作品の主題歌を手掛けるという特別なコラボレーションが続いていますね。
藤原 そうなんですよね。それも『ドラえもん』と『零式』のオファーをいただいたのって、わりと近い時期だったんですよ。だから、最初は正直テンパってましたね(笑)。とりあえず曲を作るということを頭の中で考えないようにして。
──資料によると、「ゼロ」の楽曲制作に入る前に、藤原さんと『零式』の制作チームとのミーティングがあったということで。そこではどんな会話を交わしたのですか?
藤原 まず資料を見せていただいて。開発中の『零式』の画面も見せていただきましたね。資料も5、6ページくらいのもので。文章よりもイラストが大きく載っているようなものでした。キャラクターだったり、イメージカットが。先方からこういう曲にしてほしいとか、テンポはこのくらいでとか、具体的な要望は特になかったんです。“ああ、任せていただけるんだ”と思って。そのミーティングのあとに僕は「ゼロ」を書いたわけですけど。曲を書いた時期は今年の1月20、21日あたりですね。
──先方からの具体的な要望がない中で、どういうイメージを持って作曲をスタートさせたのですか?
藤原 まず、イラストのイメージがとても大きかったと思います。それは、野村さんがデザインした『零式』のキャラクターが一同に介しているものなんですけど。あとはもう、作曲用のスタジオのブースに入って、イラストのイメージと、自分がミュージシャンとして、BUMP OF CHICKENとして表現したいことを曲にしていくという、いつもと同じ流れでしたね。
──『零式』のストーリーを思い浮かべたりすることは?
藤原 特になかったですね。強いていえば、キャラクターのイラストと、戦争の歴史を追っていくようなストーリーであること、というくらいかな。ブースに入ってギターを持つと、自然と意識がニュートラルになるんですよね。だから、そこで特にあらたまるようなことはなくて。気付いたら曲が書けているような感覚でした。ギターをバンバン弾いて、バンバン歌って、言葉をちょっとずつ書いていく。こういう曲にしようという明確なイメージを心に抱くということはなかったですね。
【「ゼロ」に込めた思いとは? そして待望の全国ツアーについて】
──「ゼロ」は生命と生命の交わりとその終わりを深遠な筆致で焼き付ける、魂の歌だと思いました。サウンドは全体的に荘厳かつシリアスなムードをたたえているけれど、音、メロディー、言葉の連なりが皮膚感覚に近いものとして迫ってくるような感動があって。『零式』の世界観の核心を想起させながら、その実やはりBUMP OF CHICKEN然とした歌になっている。
藤原 ありがとうございます。これは…ホントに自動的にこうなったという感じなんですよね。特別真新しい何かにチャレンジしているわけでもないし…。
──テーマ的にも、藤原さんが、BUMPが、これまでもずっと描いて鳴らしてきたことですよね。
藤原 そう思うでしょう? 僕もそう思うんです。で、『零式』の制作チームのみなさんもそういうものを求めてくれていたと思うので。それゆえにありがたいご依頼だったんですけど。ホントにね、最近は曲を作るぞってギターを持つと、本能的というか、無自覚な作業になってくるので。
──ますます作曲という行為が言語化しづらいものになっているという感じですか?
藤原 そうですね。気付いたらできていました、みたいな感じで。気付いたらブースで何時間か経っていて、ある程度できていました、みたいな感じですね。
──話しづらいところを食い下がるようで申し訳ないんですけど、確かにテーマはこれまでも一貫して描いてきたことだと思います。ただ、この「ゼロ」という曲は、過去の楽曲群を鑑みても、命の在り方や魂の気配が色濃く描かれていると思うんです。
藤原 うんうん、確かに。僕の曲の中でもそういう成分が強い曲だと思います。そうですね…最初にいただいた『零式』の設定資料に十数人の主要キャラクターが描かれていて、そのバックの背景は赤黒い感じで、あれは燃えているんだと思うんですけど。
──戦火?
藤原 うん、戦火って感じなんですかね。そこに十数人のキャラクターがそれぞれ武器を持っていて。闘いを予感させるようなイラストですね。その記憶が曲の全体像に作用しているのかなと思うんですけど。ただ、曲を書く時はどうあがいても、自分が生きている現実に意識がいきますので。最終的にはメンバーのことや家族のこと、そしてずっと僕らの音楽を聴いてくれているリスナーのみなさん、ライヴを観に来てくれる人たち…そういうところに向けての歌になっていくんですよね。だから、この曲も僕にとっては日常を歌っているものでもあって。
──日常で感じていることを?
藤原 そう、日常で感じていることを歌っていますね。今32歳ですけど、32年間生きてきたことを書いている。それをどう捉えるかは、受け取ってくれたリスナーのみなさんひとりひとり次第だと思うので。うん、そういうことですね。
──バンド内では藤原さんから上がってきた「ゼロ」の原形をどう受け止めましたか?
直井 聴かせてもらうタイミングがすごく面白くて。
藤原 『映画ドラえもん』の試写を観に行った後だったよね。
直井 そうそう。その後、藤くんの家にゲームをしに遊びに行って。ふと藤くんが“『零式』の主題歌ができたよ。聴く?”って言うんですよ。こっちはまだできていないと思っていたから、“え!?”ってなって。また高めの声で(笑)。いつもだったら、CDをプレイヤーに入れて、歌詞を渡されて聴くんですけど、「ゼロ」は違って。藤くんが“そうだ、俺は昨日こうやって聴いたんだ”って、DVDをプレイヤーに入れるわけです。そのDVDというのは『零式』のプロモーション映像なんですね。その映像を流しながら曲を聴かせてくれて。
──粋な演出ですねえ。
直井 粋ですよね。僕らにとっては、藤くんから上がってきた新曲を聴くのと、『FINAL FANTASY』シリーズの新作をプレイするのも、人生にとって大きな柱のような楽しみで。そのふたつが重なることなんて一生なくても不思議じゃない。ましてや、ちょうど『ドラえもん』の試写を観た後だったし。
升 数時間前までは『ドラえもん』一色だったからね。
直井 そう、だから「友達の唄」一色のムードから、数時間後には一気に「ゼロ」のムードになって。しばらく現実を受け止められなかった(笑)。「ゼロ」を聴いて“すごくいい曲だね!”って藤くんに感想を伝えて。
──ソングライターとしての藤原さんが最初に報われる瞬間。
藤原 そうですね。メンバーに聴かせるまでは、その曲が自分以外の人にとってどういうものなのかホントに分からないから。だから、今回も最初にメンバーに“いいね”って言われたことで、すごく安心しましたね。
直井 イメージ映像を観ながら「ゼロ」を聴いた時に、まるで当然そこに存在しているような歌だったんです。その時点ではBUMPの曲というよりも、藤原基央というシンガーソングライターと『零式』の世界観が一致したという感動だったんですけど。すごいなと思った。
──レコーディングで、実際そこに自分の音を重ねる時はどんなことを思いましたか?
直井 しばらく演奏できない感じがあったんです。喜びが大きすぎて。でも、ひたすら曲を聴いて、いつものように“これはBUMPの曲だ”って思えた瞬間から、いつも通りベースを弾くことができて。最終的には原点に立ち返って。当たり前ですけど、自分たちがやるべきことは、聴いてくれる人たちに向けて曲を届けるだけだから。レコーディングに入ってからは『零式』のことは忘れていました。フレーズに関しても、プリプロの時点で音が緻密に入っていたので。自然体でプレイすることができましたね。
升 僕も最初に曲を聴かせてもらった時の感覚、イメージが大きかったので、それを素直にプレイに落とし込んでいくような感じでしたね。作り方としてはいつもと変わらないです。曲とちゃんと向き合って、その曲で自分は何をするべきなのかを感じて、ドラムを叩くという。
──いよいよ12月5日から約3年半振りの全国ツアーがスタートします。今はどんな気持ちですか?
直井 この前、メンバー4人とプロデューサーで集まりまして。曲を決めたりとか、どういうライヴにしようという話し合いをしました。早くライヴを観たいという人たちの声を聞かせていただいているので、ホントに感謝です。みなさんに会えることに僕らも感謝してます。セットリストのアイデアもみんなの中からいっぱい出すぎて“結局全部じゃん”ってなってます(笑)。
──(笑)。ただ、やはりライヴの基軸となるのは最新アルバムである『COSMONAUT』になるのかなと予想しているんですけど。
直井 それは間違いないです。でも、“やっぱりこの曲もやりたい”って過去の曲をどんどん入れていったら、すごくいい感じになりました(笑)。楽しみにしていてください。
藤原 すごく久しぶりのツアーになるんですけど、その間に僕らが何をやっていたかというと曲を作っていたということで。その全ての曲が、作っている時にお客さんに聴いてもらうことを前提にしていたので。僕らは曲を聴いてくれる人がいるんだという事実に助けられてきたから。お客さんに会える、みなさんの前で演奏できるのをすごく楽しみにしています。
取材:三宅正一
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