2013-04-20
【NICO Touches the Walls】バンド名に“壁”って言葉が入っていることを初めて意識した
約1年5カ月振りのニューアルバム『Shout to the Walls!』がついに完成した。インディーズ時代の1st ミニアルバム『Walls Is Beginning』以来、自らのバンド名にある“Walls”を初めてタイトルに冠した今作から、彼らの強い決意を感じてほしい。
【自分たちの武器みたいなものを シンプルに追求した一曲一曲】
──「夏の大三角形」「夢1 号」「Mr.ECHO」と連続で取材させていただいて、ついにアルバムまで辿り着きました!
光村「たぶん「Mr.ECHO」からは想像できない仕上がりになってるんじゃないかなって、前回言いましたっけ?」
対馬「“シングルがまったくヒントにならない”的な(笑)。」
──(笑)。でも、本当にここまでバリエーション豊富な曲が並ぶとは思いませんでした。予想を軽く超えられた感じで。
光村「音楽的にはまったく制約なしでやりたい放題ですからね、今回は。アルバムはこれで5枚目になるんですけど、デビュー前から続いていた音楽的な探求みたいなものは、前回の『HUMANIA』でひとつ結実したところがあったような気がして。だから、あえて言うなら“自分たちが主役”の…NICO Touches the Wallsっていうロックバンドが主役のアルバムになれば良いよね、っていう話はしていて。自分たちの武器みたいなものをシンプルに追求した曲を作っていこうっていうことで、一曲一曲が生まれた感じでしたね。」
──これまでの音楽的探求を通して得たいろいろな武器が今回の曲たちになって表れた、と。そのいろいろな武器の口火を切るのが、1曲目の「鼓動」。勇壮な雰囲気の幕開けが良いですね。
光村「こういう始まり方をするアルバム、すごい好きですからね。ジャングルビートみたいなドラムで始まるっていうのは、実はどのアルバムを作ってた時も必ず話題に挙がってたんです(笑)。」
古村「それが、やっと実現して。あと、この曲はライヴも見えるというか。歌自体がすごく“広い”感じで、それを今ライヴでやったらお客さんも一緒に歌ってくれてるっていうような画も想像できるし。ここから始まるものがさらに楽しみになるような曲になって良かったです。」
坂倉「うん。ある意味、このアルバムの雰囲気を決定付ける曲かなと思いますね。」
対馬「俺も、みっちゃん(光村の愛称)のデモを聴いた時から、この曲はすごく好き。大地を感じる…じゃないですけど。」
──(笑)。この雄大な音像に“大地を感じる”は、素晴らしくフィットしている表現だと思います。
対馬「(笑)。前に、守護霊が見えるような人に、俺には大地を感じるみたいな話をされたんですよ。大地とどこかの民族みたいなのが見えるって。だからなのか何なのか分かんないですけど、“待ってました! ”みたいな感じは、この曲は演ってても何となく感じました(笑)。」
──そこから「夢1 号」「夏の大三角形」、そして新曲の「アビダルマ」へと続く流れがまたすごくて…。
光村「(笑)。アルバムの流れで言えば、たぶん「アビダルマ」から空気が一変すると思います。」
坂倉「(笑)。この曲は、リズムがすごいザクザクしてて、すごい速い! ちなみに、久しぶりにこの曲をみんなで合わせた時に弾けなくなってたんですよ(笑)。レコーディング期間中とかツアー中って指が動くじゃないですか、単純に。それが二日ぐらい置くと指が動かなくなるっていうのは、今回のアルバムで感じた“壁”でした(笑)。」
──ビートは速いし、かつ、そのスピード感の中に起伏に富んでる展開を詰め込んでいて。
光村「そうですね。初めてのラップもあり。ラップが入るのは、たぶんこれが最初で最後になってしまうぐらいのレアなケースだと思います。この曲の歌詞はノストラダムスとかマヤの文明とか、ああいう予言的なものに世界はやきもきしてきたけど何ひとつ当たらなかったじゃないかっていう怒りを書きたくて(笑)。その怒りが膨らみに膨らみすぎて、言葉数が足りなくなってしまって…。2番はもともとメロディーが普通に入っていたんだけどそれじゃ語り尽くせないと思って、みんなに黙って勝手にラップにしちゃったんです(笑)。」
──(笑)。「夏の大三角形」のさわやかさの次にこの衝動的な感じっていう曲順ひとつとっても、NICO Touches the Wallsの武器がいかに幅広いかが分かると思います。
光村「それこそ、このアルバムへ向かう時に自分たちの武器って何なんだっていうところで、インディーズの頃から曲をまたイチから聴き直したりして。そこで自分たちの中に残るものってなんだろうって考えた時に、何て言うんだろう…なんか、すごいヒリヒリした感じ。それが、本当に大げさに大きい音でヒリヒリしている曲もあれば、静かな音でジリジリ、ヒリヒリ…みたいな感じの曲もある。それが俺たちの持ち味だよなっていうのが4人共通してあったんで、そこを本当にシンプルに追求してみようぜってできたのがこの曲だったんですよ。とはいえ、そのインディーズ時代とか1stアルバムの当時をはるかに凌駕するような筋肉みたいなものが今の自分たちには付いてたんで、そのヒリヒリ感をさらにカッコ良く表現できたんじゃないかなって。今回のレコーディングの中でもとびきりインパクトがあった曲だったし、そのヒリヒリした感じをいかに出すかっていうところで、音作りもこの曲だけいつもの3倍ぐらいギターを歪ませてたり。」
古村「そうだね。すっごい重ねてるし、作業的には、この曲は本当に今までにない感じでした。ギターはいっぱい歪ませて、いっぱい重ねていて、でもその一本一本は計算してやっていて。そういう、今までの曲では入ってない音とかも今回のアルバムには入ってますね。」
【“壁”は見方を変えれば めちゃめちゃポジティブなもの】
──今までにない要素というポイントで、他に印象深い曲はありますか?
対馬「俺も今までにない挑戦としては、歌詞を書いてみたりっていうのが今回はあって。メンバー個人個人、それぞれの“壁”みたいなものとずっと闘ってたりはしたんですけど、俺はその中でも思いっ切り“壁”を破ってみたというか。」
──「紅い爪」ですね。この歌詞は確かに“壁”を破った感じで…。《煌びやかなドレス ハイヒールの足音》なんていうフレーズが、まさか初作詞の作品で出てくるとは(笑)。
対馬「(笑)。こういう言葉をみっちゃんが歌ってるのにも、すごく新鮮さを感じたり。自分の世界をみっちゃんが歌うことで生まれる新しい反応は、良い経験になりました。」
光村「うん。こんなに繊細な女心は今の俺には描けないなって。しかも、作詞初挑戦にもかかわらず、このまとまりようはすごいなと思ったり。あの独特な色気は、まるでフランス映画を観ているような気持ちで歌ってましたけど(笑)。」
古村「そういう自分たちの中での流行りとか、その時の熱量とか…“今の自分たち”を詰め込めた実感はすごくありますね。なおかつ、“叫び”とか“壁”っていうテーマはバンド名にリンクしているところがあったんで、曲を作りながらそういうものがどんどん塊になっていく感覚はありました。」
──今の話の“叫び”、そしてバンド名にもある“壁”っていう重要なキーワードを、今あえてタイトルにした理由は?
光村「それは、自分たちのバンド名の中に“壁”っていう言葉が入っていることを初めて意識したからなんですよね。自分たちにしか作れないロックって何だろうなってずっと探してた中で、今まではバンド名として背負ってるのに“壁”っていうキーワードをきちんと描いてなかったなって改めて意識したというか。というのがきっかけで、今回の歌詞はどの曲も“狭間”っていうものをテーマに書いたんです。」
──何かと何かの“狭間”で“叫ぶ”。それこそ自分の前に立ちはだかってる“壁”に向かって“叫ぶ”ような…。
光村「そう。今までの曲も、そういう“狭間”でもがいている姿を描く曲がすごく多くて。その自分たちがずっとやってきたことと、これからやっていくことの理由が、この一枚のアルバムを作ろうとした時に改めて見付かったからこそ挑んでみたかったテーマだったんですよ、“壁”は。」
──その“壁”は「夢1号」でも歌っていたんですよね。《立ちは だかったのは 蒼く高い壁》って。何かの“壁”を超えようともがくことは、誰の人生にもきっとあるものですよね。
光村「そうですね。このバンド名を付けた時も、壁にぶち当たるっていうネガティブな意味での壁っていうよりも、壁が自分を外のいろんなものから守ってくれたり、疲れた時に寄りかかれたり、見方を変えればめちゃめちゃポジティブなものなんじゃないかっていうのが、このバンド名を付けた由来のひとつだったんで。そういうものをきちんと音楽で表現したことなかったのは、自分たちでも不思議だったんですけど。5枚目にしてちょっと遅いですけど(笑)、やってみるべきじゃないかと思ったんです。」
──そして、初回生産限定盤はすごいボリューム! メンバーが“壁”にペイントしたカラーリングもフィーチャーしたアートブック仕様、見応えありますね。
坂倉「アルバムジャケットのイメージを話してる時から、こういういろんな色が混ざり合ってるようなイメージがあったんです。それをみんながいざ描いてみて、アルバムのイメージを体現できたんじゃないかと思いますね。で、実はこれ、顔なんですよ。表紙は一枚の絵としては顔を描いていて、これはその顔の左目の部分なんです。絵の具はあんまり触ったことなかったんで、右目の部分を描いてみて“ちょっと違うかな…”と思って、“じゃあ、左目をもっとこんな感じに…”って描いたのをそのまま採用してもらったっていう。」
──へぇーっ! そのイメージ、現物をじっくり見て再確認させてもらいたいです。
光村「イメージ、僕も今、初めて聞きました(笑)。」
坂倉「(笑)。打ち合わせしてる時、それ、言ってたよ。」
光村・古村・対馬「そうなんだ!?」
光村「全然聞いてなかった(笑)。でも、力強い絵だなと思ってた。中身にも他の3人が描いた絵とか…。本当に落書きみたいなのも含めて(笑)、全部で64ページ、今までで一番楽しいブックレットになったと思います。」
──で、その初回盤のDVDには、前アルバム『HUMANIA』に続いてアコースティックセッション『アコタッチと呼んでみて☆』を収録。
光村「おまけDVDとして楽しんでもらいたいので前回と同じことをやるんじゃ面白くないよねっていうことで、僕たちが普段使ってたスタジオで、真夜中、誰もいなくなってから好きなとこで録っちゃおうっていう。しかも、今回はタイトルが“Shout to the Walls!”だし、そのスタジオが結構カッコ良い“壁”がいっぱいあったんで、いろんな“壁”の前で演奏しちゃうって楽しそうだよね、なんて言いながらやってたんですけどね。エレベーターの中で歌ってたり、結構あり得ないシュールな感じの映像もあるんですけど(笑)。」
──4人での演奏の「April」あり、そして、光村くんひとりの弾き語りでの「夢1号」もありと。今回のアルバムは本当に自由な音色がありますけど、それを裸にすると、どれもこういう綺麗なメロディーが軸になっているんだなって改めて感じました。NICO Touches the Wallsの骨格の部分が見えるような。
光村「あぁーっ。そうですね、うん。歌モノっていう部分はずっと一貫して持ち続けているものなんで、それを軸に、もう本当に何をやっても良いなっていう思いもあるし。さっきも話しましたけど、自分たちの中に“壁”がある限り、それをちゃんと音楽に変換して演奏し続けられるようなバンドでいたいって気付くきっかけになった一枚だと思うんです。このアルバムで“NICO、ちゃんと始まったな!”っていうか…5枚目にして言うのも何なんですけど(笑)、そういう実感が、なんか初めて持てた気がするかもしれないです。」
取材:道明利友
(OKMusic)
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