2014-03-20
butter butter、明日を生きる活力にしてもらいたい
3月19日リリースとなった2年振りのミニアルバム『どこにでもあること』。“とある高校生の物語”というコンセプトのもと作られた本作は、誰しもが経験したであろう思いが詰め込まれた、メッセージ性にあふれた一枚となった。
──まず気になるのが、“butter butter”というバンド名なのですが。
鈴木 バンド名を聞いただけではどんなジャンルの音楽か分からないようなバンド名にしたくて、なんとなく、甘いものにも辛いものにも使われる“バター(butter)”という単語が浮かび、それを繰り返してバンド名にしました。
──なるほど。結成から、現在の4人編成に至るまでは?
鈴木 僕は昔ひとりで路上に出て弾き語りをやっていたんですけど、自分の表現したいことがひとりじゃできなくて、中学の同級生だった浜田と、専門学校の同級生だった初代ドラマーを誘って結成しました。その後ドラムが2回変わって、ギターが入って今の4人編成になった感じです。
──自分たちから見て、butter butterとはどのようなバンドですか?
吉良 日々の生き辛さを奏でています。
平田 あまり歌にされない日常の中の嫌なことだったり、嬉しいことを歌ってるバンドです。
浜田 暗い中にも希望を持ち続けた音楽を歌っています。
──ちなみに、メンバーそれぞれの音楽のルーツとなったのはどのようなところだったのでしょうか?
鈴木 BURGER NUDSとLUNA SEAです。
吉良 楽器としても、音楽としても影響したのはTOTOですね。あ、日本の便器メーカーではありませんよ(笑)。
浜田 90年代V ROCK。黒夢。70年代洋楽パンク。
平田 ハードロックやギターが目立ってる曲が好きです!
──2012年2月にリリースされた、メンバーチェンジを経て現在の4人編成となったbutter butterの第一作目『Re:臍繰』ですが、手に取った方からの反響は?
鈴木 良くも悪くも反響はありましたね(笑)。もともと3人では表現できなかったことがやりたくて4人になったので、今までで一番、音楽的にはやりたいことをやらせてもらったアルバムになったと思います。
──いろいろな思いが『Re:臍繰』には詰まっていたと思うのですが、リリースして何か変化などはありましたか?
鈴木 事前に予想はしていましたが、もともと3人だったのが4人になったことに抵抗を感じる方もいらっしゃって…。応援してくださっている方が自分たちに何を求めているのか、これから自分たちはどんな音楽を作っていけばいいのかを改めて考えるきっかけになったと思います。自分たちの作りたいものを作りつつ、応援してくださっている方にも届く音楽を作りたいですから。
──そして、3月2日には下北沢MOSAiCにて『どこにでもあること』発売前に、リリース記念イベントを行ないましたが、手応えはありましたか?
鈴木 手応えはありましたね。バンドとしてのライヴの方向性が固まってきたと最近感じています。
平田 演奏中、ステージからお客さんの表情を見た時に、ちゃんと聴いてくれてるんだというのが分かる表情をしてくれている方がたくさんいて安心しました。
吉良 今作は制作段階からコンセプトやライヴのやり方などを、メンバー全員で今まで以上にしっかりと話し合っていました。それが今回のリリース記念イベントにも良いかたちで影響してとても良いイベントになったと思いますし、いよいよこの作品が世の中に出ていくんだな、という実感が沸きました。
浜田 バンドとしての一体感がより強くなった気がします。同じことをお客さんにも言っていただけて、さらに確信に変わりました。
──今回リリースされた『どこにでもあること』は“とある高校生の物語”というコンセプトのもと作られたアルバムということですが。
鈴木 今回のアルバムの制作の前に一度バンドとしての方向性をメンバー、スタッフを交え全員で改めて考え直す機会を作りました。本当に自分たちの伝えたいことは何だろうかと。全員の伝えたいことがひとつにまとまった後、それを伝えるためにどうするか考えていった先にコンセプトアルバムというものが見えてきて、とある高校生を主人公にした物語を通して言葉を伝えることを思いつきました。
──「1限目:数学」の《「はい今から授業を始めます」》というフレーズから物語が始まりますが、学校のチャイムのようなギターのリフなど情景を想像させるバンドサウンドが印象的でした。
鈴木 基本的にコードの構成音ではないメロディーをわざと乗せるように曲を作っています。初めからこのような曲を作りたいと思って作りました。
──「3限目:保健体育」は空回りをしたり自己嫌悪を抱きながらも《一瞬でも君と笑えるように》と一途な想いが描かれていますね。“学校”という誰にでも共通するような場面ですが、実体験を描いているようなところもあるのでしょうか?
鈴木 はい、完全に僕の実体験ですね。家の隣が小学校の校庭なので、放課後ひとりでサッカーボールを蹴って練習したりもしました。
──少しずつ変わろうとする思いが芽生えてきた主人公の姿が描かれている「4限目:物理」では、最後のコーラス部分が他の楽曲とは違う一面が垣間見れますね。
鈴木 自分が学生だった時に、恋愛に対して動き出す勇気がまったくなくて、ひどく後悔をした経験があるので、例えば今同じような経験をしている人とか、昔の自分にも聴かせてやりたいというイメージで作りました。
──他にも「2限目:OC」「5限目:HR」など、授業名に合わせた物語に乗せた、もがく主人公の心情がとてもリアルでした。
鈴木 基本的に全て実体験をもとにしています。自分自身がいじめられっ子だったので、当時思っていた感情をそのまま書いていますね。
──なるほど。躍動的なバンドサウンドの「6限目:情報処理」は今の状況を皮肉っぽく描きつつ、《笑われてそれで終わりなんて 嫌》と、主人公の思いの変化がはっきりと見えました。
鈴木 実はこの曲はこのアルバムで最後に作った曲でして、他の曲を通して聴いた時に、疾走感のある曲がもう1曲欲しいな、と思って作りました。歌詞もアルバムの後半に似合うような、前向きな展開を意識して書きました。
──「放課後」では前向きになりつつある主人公が偶然気になる子に出会い、初めて会話をするところで今作が締め括られますが、この後どうなるのか?と、この先の展開が気になります。今作の続編の構想はあるのでしょうか?
鈴木 あると言えばあるのですが、実際に作品として世に出せる状態に持っていけるかは、僕自身もまだ分かりません(苦笑)。期待はしていてください(笑)。
──現代を生きる人へのさまざまなメッセージが詰め込まれており、一曲一曲、物語の風景を思い描きながら聴くとbutter butterの世界がさらに楽しめる一枚になっていると思いました。
鈴木 “butter butterってこういうバンドだよ”って自信を持って言えるような、ようやく名刺代わりになる作品ができたんじゃないかなと思っています。
──そんな本作のタイトル“どこにでもあること”に込められた意味とは?
鈴木 やっぱりこの物語のようなことって、どこにでもあるじゃないですか。みんなが常に幸せで平和な学校なんてないんじゃないかってくらい。だから、どこにでもいる誰かの、どこにでもあることを歌ったアルバムという意味です。
──中でも思い入れのある楽曲はありますか?
平田 「4限目:物理」です。制作段階でメロディーや他のメンバーの演奏は良いのに、自分のギターが入ることによってそれを邪魔したり壊さないかとビクビクしながらフレーズを考えてました。
吉良 「放課後」ですかね~。一番要の、イントロのメインフレーズとなっているドラムのフレーズがなかなか出てこなくて、ヴォーカルの鈴木から“幻想的で重たく”という雰囲気を伝えてもらってあれが出てきました。ありそうでない感じになってればいいのですが(笑)。
浜田 曲全体的に言えるのですが、ベースのフレーズはシンプルにすることを意識しました。ただ、「6限目:情報処理」だけは部分的に解放的なフレーズを入れることができた曲なので、思い入れが強いです。
鈴木 「4限目:物理」ですね。メロディーの乗せ方が一番気に入っています。
──今作で、特に注目してほしいところはありますか?
鈴木 やはりコンセプトアルバムとして、一枚でひとつの物語として完結しているところです。
吉良 このアルバムは主人公の成長過程の物語になっています。このアルバムで多少なりとも変われる自分が見つけてほしいと思います。
浜田 聴きどころは全体を通して聴いた時に感じる「放課後」のラストの歌詞ですかね。最初から最後まで聴いて、初めて感じとれる部分があると思います。
平田 よほど順風満帆に生きられていない限り、共感できる歌詞があると思うのでこのアルバムを聴いて少しでも良いほうに変化があればと思います。楽曲や演奏部分も自信がありますのでそこにも注目してください!
──そんな『どこにでもあること』を作り終えて、何か得たものはありましたか?
吉良 改めて歌、歌詞、曲が三位一体になっていないと出せない音があるのだなと思いました。
平田 細かい部分まで話し合ってみんなで共有していけば、言いたいこと、伝えたいことはちゃんと伝わるんだなと、当たり前のことだけど改めて勉強になりました。
浜田 『どこにでもあること』を作って得たものはひとつのテーマを軸に作品を作る楽しさです。勉強になりました。
鈴木 まだまだ音楽でやれることはたくさんあるんだなと思いました。
──そして、リリースツアー2014『どこまでもいくこと』が8月30日下北沢MOSAiCまで続きますが、意気込みなどあればお願いします。
吉良 できる限り多くの方々に聴いていただきたく、今回は初めて北海道にも行かせていただきます。少しでも変われる自信や希望を贈れればと思います。何より、五体満足で生還してきたいと思います(笑)。
浜田 過去最高のスケールのツアーなので、それに負けないぐらいに楽しむのみです。ファイナルでは、その経験を演奏でアウトプットします。
平田 初めて行く場所も何カ所かあるので、観に来てくれる方がいるか心配ですが、我々のライヴを観てくださった方には伝えたいことを少しでも感じ取っていただけるよう演奏します。
鈴木 とにかく全力で、目の前にいる人に伝える、ということを頑張ります。
──リスナーの方々に、何か伝えたいことがあればひと言お願いします。
吉良 何気ない瞬間の懐に忍び込ませていただきたいなと思います。ちょっとした隙間に手に取って、明日を生きる活力にしていただきたいと思います。
浜田 今後もいろいろな意味でお楽しみに。
平田 やっと新しいアルバムができました! ツアーも含めて楽しみにしていてください!
鈴木 その人にとって、一生聴いても飽きない作品を作りたいと常々思ってて、きっと極限までそれに近づいた作品が作れたと思いますので、どうか聴いてみてください。ありがとうございました。
取材:高良美咲
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