2018-09-04
現役音楽プロデューサー浅野ケンに聞く「これからのアーティストと音楽業界」
音楽業界が「業界バブル」に踊った90年代。音楽プロデューサーという職業が注目された時代でもあった。ジャケットの表紙にはProduced by ◯◯の文字まで掲げられ、プロデューサーの名前でCDが売れる時代と言っても過言ではなかった。あれから20年の歳月が流れ、CDから配信へと音楽ビジネスの在り方が移り変わった今、現役の音楽プロデューサーは何を思うのか。
今回、作曲家で音楽プロデューサーの浅野ケン氏からお話を伺えることになり、都下の自宅一室に設けられたプライベートスタジオへお邪魔した。
−−今は何をされていたところですか?
浅野ケン(以下A):先日ここで録った歌のピッチやリズムの直しを…
−−これからデビューされる新人さんの音源ですか?
A:いえ、アマチュアの方です。レコーディングのご依頼を頂きまして。
−−アマチュアのお仕事もされるんですね?
A:最近はじめました。今までここは作曲やアレンジをしたり、仮歌やコーラスを録ったり、自分が制作に関わっている作品の作業をする部屋だったんですけど、せっかくボーカルブースもあるので有効活用しようかなと(笑)。
−−プロの方がこういうお仕事もされていることに正直驚きました。
A:今はマスに出来合いの音楽を売って行くだけの時代ではなくなったと感じていまして。発信側のアーティストと受信側のユーザーという構図だけでなく、誰でも自由に表現できて世界中に発信できる時代になったんですよね。音楽の原点回帰と言いますか、表現手段の一つになりつつあるな…と。だったら音楽をやっている人たちに対して、プロの現場で得てきた経験を提供しようという発想で。片手間と言うと聞こえは悪いですが、本業が空いている時間にやっているので安価で引き受けられますし、安ければ高校生ぐらいの子でも利用できてアマチュアの底上げにもなる。僕としても新たな原石に出会える場になるんですよね。
−−「底上げ」という考え方は実に浅野さんらしいですね。かつてローカルアイドルシーンに一石を投じられたことが想起されます。
A:あの頃はローカルアイドルの黎明期で、各地方で音楽や芸能ではない全く別の事業をされている方が地域の活性化を図ってアイドルグループの運営をされているケースが多かった。音楽制作の経験が少ないので仕方ないことだとは思いますが、歌や曲や音源がなおざりになっているグループが多かったと思います。そんなシーンで僕は音楽屋として至極当たり前のことをしていたというだけの話なんです。そういう意味ではハードルが低かったですし、まだAKB48もいない時代で今と違ってアイドルグループの数が圧倒的に少なかったですから、彼女たち(当時プロデュースしていたアイドルグループ)も僕も評価してもらい易い環境にあったんだと思います。
−−その結果ローカルアイドルシーン、延いてはライブアイドルシーンの音楽的な底上げに貢献されたわけですね?
A:そこまでの影響力はなかったと思いますけど、当時はいろんな運営の方から音楽周りの質問をされたり相談をされたりしたので、多少は良い影響を与えることができたかもしれませんね。
−−「新たな原石と出会える場」という捉え方もさすがはデビュー請負人ですね!
A:請負ってはいないんですけどね(笑)。たまたまいくつかのそういう機会に恵まれたというだけで、僕がデビューさせたかと言うとちょっと違うかな…と。ただ、ボーカリストとの出会いは常に意識しています。
−−それはご自身が社長を務められていらっしゃるUNION MUSIC JAPAN(以下UMJ)の新人発掘という視点で?
A:それ以前に一人の音楽クリエイターとしてですかね。僕は作曲やアレンジはできますが歌は歌えないですからね。特に女性の声なんて逆立ちしても出せませんしね(笑)。自分にできない部分だからこそ、そこを求める気持ちは大きいですね。もちろんその延長にはUMJを出口にするというのも選択肢の一つにありますが、そこに執われることなくアーティストにとってベストな出口を模索したいですね。
−−そんな浅野さんがこれまでに出会われたボーカリストの中からMVPを挙げるとしたらどなたですか?
A:難しい質問ですね。それぞれに思い入れがありますから…。
−−近年の浅野さんのプロデュースワークを語る上で池田彩さんは欠かせない存在だと思いますがいかがですか?
A:そうですね、何せ10年の付き合いですからね。僕が音楽業界の片隅で21年間仕事をしてきた内のほぼ半分を捧げました(笑)。
−−池田彩さんは7月に10周年記念ベストアルバム『ベストにリメイク』をリリースされました。浅野さんの視点で池田さんの10年を振り返っていかがですか?
A:池田と仕事をしてきた中で彼女に対して10年間まったく印象が変わらないことがありまして、それは努力と根性の人だなというところです。決して器用になんでもこなせるタイプではないんですが、全てを努力でカバーするんですよね。苦手なところやできないことはどんなに少ない時間でも徹底的に準備と練習をしてキッチリ現場に合わせてくる。それと、彼女はどんなに無茶な要望にも「無理です」「できません」を絶対に言わない。例えばレコーディング中に「こんな感じで歌ってほしい」「こんな風に演奏してほしい」と要望を出すことがあって、そういう時にやりもしないで「できません」「無理です」しまいには「私のキャラじゃない」と挑戦すらしない人って結構いるんですよ。特に新人がこんなだと自分で自分の可能性を狭めちゃってもったいないなと思いますし、現場の士気も下がって良いことなしなんですよね。その点池田は出会った当初から10年経った今でもそういうことは絶対に言わない。彼女から返ってくる言葉は必ず「やってみます!」ですね。もちろんやってもらった上で「やっぱり違うね」となることもありますけど、新しい発見も沢山あるわけで、本人がそういうスタンスだからこそ周囲からも信頼されて10年間続いてきんだと思います。
−−プロですね!
A:そう!プロなんです!今はプロとアマチュアの差はほとんどない。何ならアマチュアの方が技術的には高い場合もある。プロとアマチュアに決定的な差があるとしたらこういうところなんでしょうね。池田彩というアーティストからプロの何たるかを学んだ気がします。
−−池田さんとの出会いにはどういう経緯があったのですか?
A:池田との出会いはUMJの前社長(現・グループCEO)が音楽専門学校から何人かのデモ音源を持ってきた中の一人だったんですけど、歌声だけで「これだ!」と思ったのが最初でしたね。当時の僕は外部の一音楽プロデューサーという立場だったんですけど、立場を忘れて「彼女は絶対に必要です!」と社長に猛プッシュしまして。社長も「でしょ?」ニヤリと(笑)。
−−前社長も浅野さんが池田さんを選ばれると思っていたんですね?
A:僕よりも先に前社長が良いと思ったから音源を持ってきてくれたんだと思います。その数年後に彼女がプリキュアの主題歌シンガーに起用された時もメーカーのディレクターの耳に一発で止まったと聞いていますから、たぶん歌声を聴いてもらえさえすれば僕らに限らずいろんな音楽業界関係者に評価されたと思いますよ。タイミングって言うんですかね。僕としてはこの巡り合わせに感謝しかないですね。
−−まさに一期一会ですね。今後このスタジオで出会われるアマチュアの方ともそんな巡り合わせがあったら素敵ですね!
A:そうですね。そのためにもいろんな人にここを使ってもらいたいですね。
−−もし宜しければこの記事を読まれている方に向けてスタジオの宣伝をしてください。
A:ありがとうございます。でもホームページとかないんですよ(笑)。自宅の一室で本業の合間にやっていることなので月に数件しかお引き受けできませんからね。とりあえずツイッター(@klr_studio)だけで受け付けている感じです。知る人ぞ知る的な(笑)。
−−浅野さんが取り組まれている新人発掘といえばSHOWROOMも外せません。
A:「誰でも自由に表現できて世界中に発信できる場」というのがまさにこの辺りのことですね。SHOWROOMや17Live、ツイキャスなどのライブ配信サービスや、nanaのような音楽SNSなど、所謂「歌い手」と呼ばれる人たちが活動しているこのシーンはまだまだ面白くなって行くと思います。反対に危惧している部分もありますけどね。
−−どのようなことを危惧されているのですか?
A:潰してしまう大人が出てこなければいいな…と。かつてのインディーズシーンもそうでしたけど、シーンが温まってくると往々にしてそういうことってあるじゃないですか?せっかく面白いのに業界特有のルールや規制みたいなものを持ち込んじゃったり利益先行になったり、結局つまらないものになってしまうみたいなこと。
−−ありますね。では「大人」はどう関わって行くのがベストでしょう?
A:目先の利益に執われず、協力し合いながらシーン自体を育てて行くというスタンスが大切なんじゃないかなと思います。いくら業界のルールや規制を持ち込まない方が良いとは言っても無法地帯でいいわけじゃない。昨年ぐらいまではしょっちゅうこのシーンにおける著作権や著作隣接権の侵害が問題になっていた。ただ、彼らに悪気があったのかと言うと大半はそうではないと思うんです。単純に知らなかったとか理解が及んでいなかったというだけで。例えばそういうところでより健全に音楽を楽しめるインフラの整備をするというのも大人の関わり方なんじゃないかなと思います。
−−ここまでお話を伺ってきた中で浅野さんからは一貫してサービス精神のようなものを感じますね。
A:僕みたいな人間が言うのもおこがましいですが、仕事の本質ってそこなんじゃないかな…と。まずは誰かの役に立ちたいとか喜んでもらいたいという気持ちがあって、お金は後から付いてくるものなんじゃないかなと。僕らはやりたくないことだったり便利だと感じることにはお金を払うわけで、きっとそれを引き受けている業者さんは誰かに喜んでもらおうとして始めたんじゃないかな。僕らの仕事も基本は同じだと思うんですよね。
−−そんな音楽プロデューサーという仕事、延いては音楽業界の今後についてはどう思われますか?
A:音楽業界の片隅にいるような人間には荷が重い質問ですね(笑)。その手のことは業界の中心にいる方に聞いて頂いた方が良いと思いますが、個人的には先ほども言いましたように、もう出来合いの音楽を売り買いするだけの時代ではないと感じています。個人でも手軽に世界中に発信できるようになったので、今までのような形の音楽プロデューサーは必要なくなるんじゃないですかね。音楽周りのことだけじゃなくて、アーティストにとって足りない部分をお手伝いする感覚で、フレキシブルに立ち位置を変えながら何でもやらないといけないなと。プロデューサーってそもそも裏方の職業なわけですから、裏方のマルチプレイヤー的なポジションになれたら良いなと思いますね。メーカーやプロダクションの役割もどんどん変わって行くでしょうね。既存の音楽ビジネスから一度目線を外して、少し広い視野でどこで誰が何を必要としているのか、そこに対して音楽でできることはないか、そういったことを模索して行きたいと思っています。理想論かもしれませんけどね(笑)。
−−では最後に、アーティストとしてデビューを目指している読者に向けて、これからの時代のアーティストに求める要素は何かを教えてください。
A:ズバリ答えがあるものではないので、これも僕の個人的な見解という前提でお答えしますと「主体性を持つこと」じゃないかなと思います。オーディションなどでアーティスト志望の子から話を聞く機会も多いんですが、プロダクションに所属することだったりデビューすることを目指している人が多いんですよね。じゃあ所属してデビューしてそこからどうするのか。そこについては「どうにか売ってください」と(笑)。そうではなく、まずはアーティストとして音楽で何を伝えたいのか、どんな表現をしたいのか、そのために何をしてきたのかなどのプロセスやベーシックになる部分があって、そこに対して我々のような人間が関わることで何かしらプラス方向に持って行けるかどうか…ということかなと。有名志向というのも上を目指すには重要なファクターだと思いますが、それだけじゃなくて中身がより重要な時代だと感じています。繰り返しますが個人から世界に発信できる時代ですからね。業界人に対してではなく世界中にどんどん発信して行ってほしいですね。
TEXT : 瀬野佳奈
【浅野ケン・プロフィール】
本名、藤川 健(ふじかわ けん)。
作曲家、編曲家、音楽プロデューサー。
1975年2月3日生まれ。神奈川県小田原市出身。
幼少の頃よりクラシックギターを始め、高校時代にはソリストとして国内コンクールにて度々入賞。以後、ロックに転向し精力的なバンド活動を行う。1997年よりレコード会社や音楽事務所を転々としながら制作の経験を積む。2000年、音楽ユニットのメンバーとしてインディーズデビュー。2003年メジャーデビュー。ユニット活動休止後、他アーティストへの楽曲提供やプロデュースに注力し、自身の楽曲と共に数々のアーティストやアイドルを世に送り出す。40歳を迎えた2015年2月3日には、自身初のワークスアルバム『15/40』をリリース。現在までの公表実績は100曲を超える。
【浅野ケン・プロデュース新作情報】
池田 彩『ベストにリメイク』
歌手活動10周年を迎えた池田彩のベストアルバム。全曲ボーカルは再レコーディングされ、3曲の新曲も収録された意欲作。
品番:UMCT-0334〜5(限定盤)/UMCT-0336〜7(通常盤)
価格:3,500円+税(限定盤)/3,000円+税(通常盤)
発売元:(株)ユニオンミュージックジャパン
販売元:タワーレコード(株)
<収録曲>
限定版、通常盤共通
[DISC 1]
01. Heat course (10 years after)
02. Future Blue (in those days)
03. Road (10th anniversary retake)
OAD『金田一少年の事件簿 黒魔術殺人事件』主題歌
04. 晴空物語 (10th anniversary retake)
オンラインゲーム『晴空物語』テーマソング
05. 伝心 (10th anniversary retake)
06. ありがとうの花 (10th anniversary retake)
07. Bubbles (grew up)
TBS系全国ネット『がっちりマンデー!!』エンディングテーマ
08. Person (’18 complement)
09. Run & Run (10th anniversary retake)
10. Jump! (10th anniversary retake)
11. Yell (10th anniversary retake)
12. Go one’s way (10th anniversary retake)
13. Story (acoustic version)
14. 軌跡 (EP3 version 10th anniversary retake)
アプリ『読み聞かせ古事記』テーマソング
15. ハロー! ハロー! ナマステ! (more spicy)
読売テレビ『マヨなか笑人』エンディングテーマ
16. 池田 彩 プリキュア YoseatsuMedley
メドレー内容:「Alright! ハートキャッチプリキュア!」「キラキラ Kawaii!! プリキュア大集合♪〜キボウの光〜」「HEART GOES ON」「ワンダフル↑パワフル↑ミュージック!!」「#キボウレインボウ#」「Let’s go! スマイルプリキュア!」
[DISC 2]
01. ワンダーレールロード
02. Days of the 蓄積
朝日放送テレビ『相席食堂』エンディングテーマ
03. 壊れてしまうその前に
【本文関連リンク】
浅野ケン プライベートスタジオ「K’s Lumber Room STUDIO」Twitter
https://twitter.com/klr_studio
池田 彩(Aya Ikeda) オフィシャルウェブサイト
http://www.ikeda-aya.com
株式会社ユニオンミュージックジャパン 公式サイト
http://www.union-mj.jp
記事提供元:
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キズ / 『仇』
来夢さんの歌詞ほんとにグッと来る。この先ずっとかっこいい歌
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Neverland / 『HumaNOISE』
歌詞合ってる?
JAKIGAN MEISTER / 『Bhava』
ジャケットイラストのギャグが最高です
咲人さんのイラストに影響されて女性の友達とクリスマスに
シードルを飲もうと考えました 断わられました
咲人さんの絵は手つかずの新雪のよう 語学の勉強も真面目
です
咲人さんの絵はとても良いのでこれからも描き続けてくださ
い 独創的かつ笑えるイラストです 好きです
JAKIGAN MEISTER / 『Bhava』
インサクリファイスが好評です ナイトメアメンバーで仲間
の飲み代をまとめて払うと雑誌で語っておられた咲人さん
ナイトメアでキリストはユダと詠まれていました 二年前の
Withはラクリマクリスティを意識したと知りました 咲人
さんのナチス嫌い発言
咲人さんにはキリスト教に対する照れのような感じを受けま
す キリストとご自分にとても似た意識を持っているのかも
しれないと思いました
downは意味を調べました 夜明け、でした
いつか一緒に朝日を見ようという歌詞に救われました
ジャキガンマイスターは咲人さんのセンスの良さが光ってい
ますね