2014-05-16

喜多村英梨、2014年の喜多村の技術を全て出したヴォーカル

 7枚目のシングルとなる「掌 -show-」はアニメ『シドニアの騎士』のエンディング主題歌。自身も声優として出演しているからこそ、さらに一歩作品に入り込んだ楽曲に仕上がっている。そして、それは喜多村サウンドの可能性をさらに押し広げるものでもあった。


──今回のシングルは『シドニアの騎士』のエンディング主題歌なのですが、アニメありきで作られたのですか?

そうですね。喜多村英梨サウンドストーリーの中で7枚目のシングルということで、これまでの7枚で振り幅を見せられた…ポップなものやカジュアルな世界観のものから作り込んだ世界のものまで、声優をやっている表現者として、いろんな方向性や見せ方をやってきての7枚目なので、常に新たな試みっていう意識は持っているのですが、今までよりもより一層尖ったものをやり切ることによって、さらに喜多村英梨サウンドの深みが増すのではないかという期待感がありましたし、サウンドチームもやり切っていいんじゃないかと言ってくれてて。そして、『シドニアの騎士』という作品自体がポップやカジュアルなものではない…テレビアニメシリーズとしてはワンクールですと12本で、1本が30分間なのですが、『シドニアの騎士』という作品に関しては、“これ、劇場版クラスの作品の練りようじゃん!”って。なので、この作品を彩る音楽は、ものすごく壮大な曲じゃないと作品に負けてしまうという印象があったんですね。まさにそれって喜多村サウンドプロジェクトの視野をさらに広めて、より特化した世界観に作り上げるチャンスだと。本当になんか、仕組まれたというか(笑)、喜多村のサウンドプロジェクトに必要なステップとして用意していただいたくらいの作品でした。あと、『シドニアの騎士』の声優でもあり、エンディングを担当するアーティストでもあるという立場から、いろいろな視野で『シドニアの騎士』という作品を掘り下げていけるっていうのも大大大チャンスでした。

──…この後に用意していた質問の分まで語っていただけました(笑)。

ごめんなさい! つい喋りすぎちゃうんですよ(笑)。

──確かに、2ndアルバム『証×明 -SHOMEI-』の次の作品というで、喜多村サウンドの世界観を踏襲した上で、さらに一歩前に進んでいるし、それでいてさらにコアにも向かっている印象を受けました。

ありがとうございます! そう言っていただけることを目標として作っていました。“喜多村がエンディングを担当したんだ”だけではなくて、必然だったと思ってもらわないと。もちろん、作品というか、喜多村を必要としてくれた方たちにもちゃんと返したいなというのもありましたし。これをやり切ることによって、また新たな喜多村英梨…自分の中では“新たな”じゃないんですけどけどね。やりたかったことの一部だし、まぎれもない自分の世界観だったりもするんで。でも、まだ提示できていない部分なので、喜多村英梨を応援してくださっている方、この楽曲から喜多村英梨を知ってくれるという方に対しても、いい意味で刺激を与えられるんじゃないかなと思います。

──楽曲制作において、作曲・編曲者である河合英嗣さんとはどんな話を?

エンディングというところで、誇りを持って作りたかったので、まず“喜多村のエッセンスを先に提示しますので、使えるところは使ってください”って感じで、私が7枚目でやりたいこと、やるべきこと…メタルの中にもプログレ的な変化球のような各セクションがありつつ、シンセサイザーも多用したいっていうのを先に提示をさせていただきました。河合さんが『シドニアの騎士』の原作を読まれるなりして、考えられたサウンドを核にしてもらいつつ、叶うならこうしたいですという提示を最初に投げて…河合さんは長く一緒にやっていただいている方だったりするので、そんなオーダーをフットワーク軽くやってくださって、“全然違う”みたいなことはなかったですね。逆に、“それは『シドニアの騎士』の声優として現場を見て思い描いた世界なんですよね”っていうところを前提に楽曲を上げてくださったので、曲の完成も早かったです。なので、どちらかと言うと作詞のほうですかね。私しか分からない、知り得ないことでのブラッシュアップみたいなことが細かくあったのは。

──歌詞は河合さんと共作なのですが、最初から自分も書こうと思っていたのですか?

いえ、河合さんが書く前提で作っていました。“もし使えるネタがあれば?”というところと、私が知っている『シドニアの騎士』の答えということで、河合さんが上げてくれたデモの歌詞に“ここは解釈がちょっと違うかもしれません”とか“アフレコの現場ではこういうふうな意図があって作っていました”っていう意見を述べたんですね。なので、そういう部分で言葉だったり、歌詞の一部を書き換えさせてもらったら、“これでいいと思います! やっぱり現場に近いところにいる人の言葉が正解だと思います”というお返事をいただいて。そう言っていただけたことがすごくありがたくて、私はそれだけで良かったんですけど、“その言葉の紡ぎって喜多村さんから出たものだし、クレジットに(名前を)載せませんか?”とサウンドチームが言ってくださったんです。棚からぼた餅っていう感じですけど(笑)、タイアップ作品で楽曲制作に自分が参加するというのは7枚目にして初めてだったし、そう簡単に叶うはずないと思っていたところにいきなりステップアップできたので、新しい喜多村のアーティストの在り方みたいなものを自分の歴史に刻めたと思いました。

──タイトルにある“掌”を含めて、歌詞の中には『シドニアの騎士』とリンクする言葉が散りばめられているのですが、そういう部分を一緒に作っていった?

歌詞も1個の面白いコンテンツにできたらいいねというところで、『シドニアの騎士』に出てくるキャラクターの名前を入れたり、作品自体も漢字に重きを置いている…実は横文字をあまり使っていないんですよ。アフレコの台本にもいわゆる“コックピット”や“シェルター”とか出てきますけど、“管制塔”や“格納庫”となっていたので、そこは歌詞も踏んだほうがいいだろうなと。河合さんもそういう部分を意識して書いてくださってはいたんですけど、私が自分で足した部分も多いですね。『シドニアの騎士』の世界観を意識して歌詞を書きたいというのが私の中にあったので、それをお伝えしつつ書き換えたというか…例えば、“粒子砲”っていう漢字が出てきたり、“光合成”とか本来歌モノの歌詞にはあまり使わないような単語を意識的に使いましたね。あと、2番の歌詞はテレビシリーズで聴くことはできないんですけど、テレビシリーズで気になって、このCDを手に取って全体を聴いてもらうと、2番のサビの《紅く紡ぎ》の“つむぎ”ってキャラの名前だと思えるような仕掛けもあったりして。そういうところが声優・喜多村が『シドニアの騎士』とタイアップしたことの証かなという。

──最初に歌詞を読んで“掌位”の意味が分からなかったです(笑)。『シドニアの騎士』のホームページを見て知りましたよ。

そうですよね(笑)。テレビシリーズだったり、原作だったりを踏むと見えてくる世界が変わってくるというのがタイアップの醍醐味かな?なんて思ってたりするので、そこは分かんなくてもいいやって(笑)。逆にそれは作品に入ってもらうための伏線だと思って書けばいいっていうのは、河合さんとお話してやりきりましたね。

──確かに、原作を読んだり、アニメを観たりすることで、“このことか!”って作品に対する興味は沸きますからね。実際にこの曲を歌われる時はどうでしたか? 感情の持っていき方が難しい曲かなと思ったのですが。

そうですね。神様ではないんですが、第三者として見ている観測者的な立ち位置で歌わせていただきました。もちろん感情的に歌い上げる場所はありますけど、質感的にはあまり人間臭さを入れずに。レコーディングの時もサウンドチームに歌のディレクションをしてもらうっていうよりも、まず“私はこの曲はこう歌うのが正義だと思いました”という歌い方を試させてもらって、“だったら、ここは逆に伸ばしちゃってもいいかもね”ってアドバイスしてもらう録り方だったので、歌に対するストレスはなかったですね。今、喜多村ができる技術というか、持っているポテンシャル…2014年の喜多村の技術を全て出したヴォーカルにはなったかなと思います。

──そして、カップリング曲「Greedy;(cry)」なのですが。まず、BULL ZEICHEN 88の淳士(Dr)とIKUO(Ba)というリズム隊と元DELUHIのLeda(Gu)による超絶テクでのラウド系サウンドというのは、もはやこれは反則技ですよ(笑)。

はい(笑)。ほんとラッキーです。これはサウンドチームがオファーしてくださいました。すごく愛着ある楽曲なので、素晴らしい技術で厚みを付けてくださった方々に本当に感謝感激です。私のエゴの固まりの曲だったりするので。喜多村サウンドの真骨頂と言われたら嬉しいですけど、自分のサウンド人生の中で、こういうサウンドがついにできたという喜びが強いですね。

──そんな楽曲のタイトルの読み方なのですが…

“グリーディ・クライ”です。“強欲な涙”ですね。

──普通に読んでいいんですね。タイトルにカッコが付いているので、何か意味があると思って傾けて見たりしましたよ(笑)。

英語だと顔文字っぽいですからね(笑)。自分で作詞させていただく時は…まぁ、私が中2病なのがいけないんですけど(笑)、わりとストレートに書くというよりは、記号的というか、見て楽しくて、何かインスパイアを受けるものにしたいなって思っていて。普通に“Greedy cry”って書けば良かったんですけど、セミコロン(;)は顔文字の涙の意味なんですよ。そういう視覚的な遊びで付けたり。あと、“cry”を印象付けたいと思って…涙の粒という意味合いでカッコで囲ったんです。

──なるほど! この曲は表題曲の「掌 -show-」があってのカップリングかなと思ったのですが。

そうですね。「掌 -show-」を作る時もそうだったのですが、『シドニアの騎士』はすごい世界観がどっしりしていて壮大だったので、J-POPというよりは洋楽のラウド系ロックの重たさがすごくマッチするというか。そういう意味では、この楽曲だろうなと。こういう楽曲をカップリングに入れたら、「掌 -show-」から聴いてなんなく一枚の作品としての世界観も堪能できるし、さらに喜多村英梨の7枚目のシングルとしての本音みたいなところも提示できるかなと思いました。

──しかも、デスヴォイスに挑戦という。

私的にはヒステリックヴォイスというか…本物のデスヴォイスの方々に謝れ!ってなってしまうんで(笑)。ただ、自分も声優という仕事をさせていただいて、戦闘だったり、悲痛な叫び、断末魔という役を演じることも多かったりするので、そこで得たものをヴォーカリストとして落とし込めたら、声優・喜多村がやっている歌の証も立てられるのかなとは思ってましたね。一応、コーラスとか全部自分でやったんですけど、どこも余すことなく喜多村の声がしっかりとかたちになったところを提示したかったというか。この曲の歌詞って1番や2番っていう括りがなくて…そこもミソだったりするんですけど、自分の中で。同じ言葉でも歌声のニュアンスや歌い方、テンポ感を変えることによって、伝わり方が変わるというか。そうやっていろんな声が混ざっていくというのが聴覚的に面白いと思ったし、いろんなニュアンスの自分の声がミックスされてサウンドの中の一部になれるというのがすごく嬉しかったんですよね。なので、同じ言葉のニュアンスの違いをデスヴォイス特有のスクリーモでやるっていうのも、より聴き応えがあるかなと思いましたし、やり応えもありましたね。ダイナミックかつ荒ぶった喜多村を見せていけるし、声優だったり、女性が歌うっていう括りみたいなものも壊せるかなと思っての試みというか、やりたかったことを今やるぞ!って感じでした。

──1番と2番とで歌い方を変えたり、デスヴォイスを重ねることによって、楽曲に深みが出てますものね。2番の《泣き叫ぶ愛情を 止めて 止めて 止めて》というところでデスヴォイスが被ってくるじゃないですか。感情の混沌としたところがうまく表現されているなって思いました。

まさにその通りです。太文字でお願いします(笑)。もちろん、デスヴォイスの曲を作りましょうって気で歌詞は書いてはいないんですけど、技法として未来はあるなと思っていて。それってスクリーモの楽曲とか結構そうじゃないですか。カットインすることによってアバンギャルドに聴こえるというところが、私も好きな楽曲に多かったりするので。それは自分もできたらいいなという気持ちはありましたね。

──最初にも言いましたが、まさに今回のシングルは、2ndアルバムからのネクストが提示できたという感じですね。

はい。しかも自分の中では、かなり早い段階で実ったなって。まだまだ中間地点なんですけど、いきなり快速に乗れて、ここにこれた感じがあります(笑)。今回試せれたようなことって、できてももっともっと先なのかなと思ってましたし、はたまたできないかもしれないと思ってたんで。チャンスをものにするっていうか、やりたかったなって夢だけで終わるのと、そのチャンスを踏み台に夢を叶えるってことは大きい違いだなというのを、今回の「掌 -show-」ですごく感じました。

──そして、9月には舞浜アンフィシアターでのライヴが控えているわけですが。

2ndアルバムの発売からは日が空いてしまったけど、その後に今回の「掌 -show-」が出せましたし、まだまだ喜多村のサウンドストーリーは続いていくということを見据えての提示はしたいと思っています。2ndアルバムを引っ提げてのライヴではないので、自分が看板曲として持っている楽曲の中からもピックアップしつつ、舞浜アンフィシアターの特性も活かしつつ、喜多村がやりたかったステージの一歩を見せれる、作り込んだライヴにしたいなと。1回勝負になるので、“改めまして、喜多村英梨です。声優アーティストです”という名刺代わりのライヴにしたいし、“1回しかなかった、喜多村の伝説のライヴ”と言わせられるぐらい、喜多村の歴史の年表に太字になるライヴにしたいですね。

取材:土内 昇

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