2011-05-01

【lynch.】 “変わらない”ことを超越する珠玉の轟音

 インディーズシーンで猛威を振るってきた5人組が、アルバム『I BELIEVE IN ME』でついにメジャー進出! ハード&ヘヴィなサウンドを軸とした多彩な楽曲群は高い完成度でまとめられた。2011年、要注目の精鋭だ。

──初めてlynch.を知る人は、まずバンド名に驚かされると思うんですよ。何しろインパクトのある言葉ですからね。

玲央 全然知らない人からしたら、“何だ!?”って思うでしょうね(笑)。海外ではわりと一般的な名前だったりしますが、日本では“リンチ”と聞けば、やっぱり暴力的、反社会的な意味合いで受け取る人のほうが圧倒的に多いと思うんですよ。ただ、その言葉で真っ先に僕らの音、ライヴをやっている姿が思い浮かんでほしい。強い言葉ほど、自分たちがそれを超えた時に、自分たちの存在意義が出てくると思うので…言わば足かせですね。

──結成に際しても玲央くんが中心的な役割だったんですよね。

玲央 そうですね。僕が前のバンドが終わった後、まず葉月と一緒にやりたいなと思ったんですね。その次に晁直に声をかけて。当初は4人編成でやっていくつもりだったんですけど、いかんせん一緒にやりたいと思える人材に出会えなくて。だったら、ベースはサポートのまま始めちゃおうと、2004年に3人でスタートしたんですよ。“意図的にベースは入れないんですか?”ってよく聞かれましたけどね。その後、2006年に悠介が入って、2010年に明徳と出会って、やっと“完全体”になれたのかなと。

──音楽的にはどんな構想を描いていたのですか?

玲央 歌もそうなんですけど、葉月の作る曲がすごくいいなぁと思っていたんですよ。以前のバンドでは、彼はそんなに曲は出してなかったんですけど、彼の曲にギターを乗せて、自分のバンドとしてやりたいなと思ったのが発端なんですね。結成当初から音楽の幅は広くて…葉月の原曲に各々のフレーズを足していくことで、このメンバーで作る音楽になるという発想なんですよ。

葉月 僕が前のバンドを辞めた理由も、あまり曲を作らせてもらえなかったというのが正直あって。だから、玲央さんからお話をいただいた時はありがたかったですね。やっと自分の曲でバンドができるんだなと思えたし。しかも、声をかけてくれた玲央さんは、すでに名古屋で売れていた先輩だったんで(笑)。

──ちゃんとした人物に目を付けられたんだなと(笑)。葉月くんはどういった曲を作りたいと考えていたのですか?

葉月 激しくてヘヴィであるというのは根底にはあったんですけど、全編がクリーン・トーンで終わるような曲も好きなんですね。だから、これというものはないんですよ。もしあるとすれば、自分がいいと思った曲だけをやること。流行ってるものを意識して作るようなことに興味はなくて、自分が信じたものだけをやっていく…それは活動全般に言えることなんですけどね。

──昨年末、ついにlynch.は5人編成の“完全体”となったわけですが、今回のメジャー進出第一弾となるアルバム『I BELIEVE IN ME』は、どんな作品にしたいと考えていたのでしょうか?

葉月 個人的には、今までのファンにはとにかくナメられたくなかったですね。“メジャーに行くんだ? ちょっとヘナチョコになるんじゃないの?”って意見に対して、“俺たちは変わらないよ”と答えるバンドがいる。それは誰しも同じことなんだけど、メジャーに何をしに行ったんだろうと疑問に思う人たちも多い中で、その“変わらない”ってことを超えたかったんですよ。インディーの時よりもさらに尖ったものにしたいなって。

玲央 “変わる”という言葉はどうしてもマイナスイメージに捉えられちゃうんですけど、やっぱりもっと前に行きたい。その意思表示がメジャーということだと僕は思ってるんですね。

葉月 今までのスタンスや信じているものは貫く。根底の部分は変わりません。でも、バンドは変化し続けないとね。そういった意味では、今回はある種、狙ってはいますね。“こんな音楽があるの!?”って思ってほしいし、すごく刺激を感じてほしいし。

──本作にも言えますが、lynch.の音楽を説明しようとした時に、単語ひとつでは括りにくい面は確かにありますね。メタリックな音色を始め、コアな層をグッと掴んで離さない魅力を持ちながら、幅広いリスナーに訴えかける要素も備えている。

晁直 すごくギターにエッジが立っている印象がありますね。葉月くんがデモを作っている段階で、テーマ的なものはメタルって話をしたことがあったんですけど、出来上がったものを聴いた時には、なるほどねと。ただ、ドラムに関しては、今までの無機質な感じではなく、より生々しくしたい思いはありましたね。

明徳 生っぽさはありますね。僕も激しくて、尖ったイメージで作ってはいましたし、確かにそういう音なんですけど、意外とやさしいというか、温かいというか、何度も聴いているうちに、最近は人間味をすごく感じるんですよ。面白いなぁと思いましたね。

悠介 いいアルバムができたなぁっていうのは率直に思いましたね。全てが仕上がって聴いた時に、葉月くんの思惑も感じ取れたので。満足…というと、そこで終わっちゃうような印象を与えるかもしれないけど、全てを引っ括めて、ひとつの作品として単純にすごく満足してますね。

玲央 レコーディングを通して勉強することが山ほどあって、とにかくいろんなアイディアが入ってきてる。どう言えばいいか分からないけど…自分の好きなアーティストのCDを聴いているような感覚もあるんですよ。ちゃんと作品として完成してる。単なる思い入れだけで成り立ってないというかね。だからこそ自信を持って、“このアルバムはいいです”って言えるんですよ。

──lynch.を初めて聴く人にこのアルバムを説明するとしたら?

葉月 全然ロックにアンテナを張ってない人の、ロックへの入口になってくれたら一番うれしいですね。すでにアンテナを張っている人たちは…僕らはヴィジュアル系ですと言うつもりも、否定するつもりもないんですけど、まずはただのロックとして聴いてほしいですね。ちょっと変態なところもあると思うけど(笑)。

取材:土屋京輔

(OKMusic)


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