2025-11-16
MUCC、豪華ゲストを迎えて開催されたYUKKE BIRTHDAY LIVEレポ
嘘から生まれた実(まこと)、とはこれいかに。
このたび11月5日に川崎CLUB CITTA'にて開催された《MUCCメンバー完全プロデュース生誕公演 2025》の最終章的なライヴ[YUKKE(5)46歳 BIRTHDAY LIVE †夢幻†]は、現実と非現実のみならず過去と今現在の時間軸までもが交錯する、夢のような幻惑の一夜となった。
「行くぞ、川崎ぃぃぃっ!!」(YUKKE)
今宵まさに誕生日を迎えて46歳になったYUKKEが、こう咆哮したのはSE「ホムラウタ」からの1曲目「絶望」におけるブレイク部分でのこと。
気合いの入った力強い声の中に滲んでいたのは、今回の“完全プロデュース生誕公演”に対するYUKKEの熱き情熱そのものだったのではなかろうか。
ちなみに、この曲ではバキバキなスラップ奏法を活かしたベースソロからも彼の漲る心意気が伝わってきたように思う。
「ついに、この日がやってきましたね。スーパームーンと共にやってきた、La'Muccパイセンの前座・MUCCです。
31年ぶりだというLa'Muccさんのギグ?ミサ?儀式?そういう類いのものを前に、我々はなるべく“あっためて”おかなければならないわけです。
ほんと、みなさんも他人事じゃないですからね。フロアがちゃんとあったまってないと、あの人たち「こんなんじゃ出来ねー」つって帰っちゃうかもしれないんだから(笑)。
まぁ、こういう時はYUKKEさんの力も存分に発揮してもらえればと思ってるわけですよ。ってことで、Birthday BoyのYUKKEさんから一言もらって次の曲に行こうか」(逹瑯)
「Birthday BoyのYUKKEです(照笑)。今日はLa'Muccさんのツアーファイナルなので、MUCCは前座なんですけれども。そうは言っても俺の誕生日だし。
前座とはいえ、La'Muccさんを喰ってやろうかと思ってます!そういうことが出来るセットリストを組んできました!!だいぶ久しぶりの曲です。聴いてください!!!」(YUKKE)
と、ここで奏で始められたのは確かに少し懐かしい感がある「World's End」。
バンド側の放つ躍動感あふれる音と同調するように、フロアでは夢烏(=MUCCファンの総称)たちが楽しそうにモッシュに興じたり、ここぞという場面ではクラウドサーフで盛り上がるような、とても自由で開放的な光景が生み出されることになったのだ。
「あのさ。ウチら、もしかすると前座やるのってGuns N' Rosesの時(※2007年と2009年のGuns N' Roses来日公演)以来?」(ミヤ)
「そうです。「準備に時間がかかってるんで伸ばしてください」って言われたあの時以来です(苦笑)」(逹瑯)
「Guns N' Rosesの次がLa'Muccかー(笑)」(ミヤ)
「それぶりではあるけど、MUCCって前座けっこう向いてるんでね(笑)。今日も精一杯やりますよ!」(YUKKE)
YUKKEのこの言葉を有言実行するかたちで、このあと彼らはYUKKE作曲の「アルファ」、12月10日発売予定のニューシングル『Never Evergreen』に収録されることがインフォメーションされている関東圏初披露の新曲「茨-イバラ-」(これもYUKKE曲!)や、現在続行中の[MUCC TOUR 2025「Love Together」]において各地でシンガロング大会を巻き起こしている最新アルバム『1997』の収録曲「Daydream Believer」で、フロアを“あっためる”どころか熱々に沸かせまくってくれたのである。
「ここからは暗黒の世界をお楽しみください」(逹瑯)
前座のMUCCが舞台を去ると、おもむろに始まったのはLa'Mucc降臨をふまえての動画上映で、ここではPsycho le Cému、シド・明希、色々な十字架、lynch.・悠介、MAMA.、LM.Cがそれぞれに個性全開なコメントを寄せてくれることに。
中でも、MAMA.が某地方局の音楽番組へLa'Mamaとして出演したテイで制作されていた映像はずいぶんと凝っていて、アスペクト比4:3のザラついたローファイ画質、各メンバーが演じる90年代V系バンドマンの風情まで、La'Muccが音楽シーンに登場したとされる“あの頃”が見事に再現されていて大変興味深かった。
ところで。La'Muccのライヴについてレポートしていく前に、ここでは少し状況整理しておこうではないか。
そもそもLa'Muccとは何なのか。
発端としては、2024年4月1日の6:09にSNSへ「MUCCメジャーデビュー決定!」という“本当の情報”とともに、エイプリルフールのネタとしてポストされた古のヴィジュアル系バンド風な“新アーティスト写真”が話題を呼んだことにより、やがてLa'Muccという幻影の出現に繋がったと筆者は認識している。
“1994年の歪んだ時空から堕ちて産まれた3枚の黒き羽”をコンセプトに掲げるLa'Muccは、ヴォーカリスト・T.I.G、ギタリスト・雅、ベーシスト・YUMEの3人からなるバンドで、女性ファンにはLa'姫(ラメス)、男性ファンにはLa'漢(ラオス)という呼称がそれぞれつけられているそう。
そして、ツアーファイナル[†夢幻†]をもって解散することが既に31年前から運命づけられていたという設定を持つ。
出来ればこれ以降のレポートについては、ぜひその件を前提にしたうえでお読みいただきたい。
…満月の夜に、長い時を経て開いた古の扉。La'Muccの描く幻想的な物語は、霧のかかる深い森の中で三羽烏が空高く羽ばたき始める、というイメージ映像がステージ奥のスクリーンに映し出されるところからドラマティックに幕開けしていくことになった。
(※これは現代のように映像技術が発達していなかった90年代当時、非日常的な雰囲気を低予算かつ手軽に醸し出すために、V系バンドが森でMVロケをする例が多数あったことをオマージュした演出だと推察する)
ほどなくして、輝度が落とされた照明の中で荘厳なカンタータ『カルミナ・ブラーナ』の「O Fortuna(おお、運命の女神よ)」がSEとして流れだすと、生ける化石と呼んでもいい伝説のバンド・La'Muccが遂に姿を現し、貫録ある面持ちでプレイし始めたのは何故かMUCCの「愛の唄」。
ただ、ギタリスト・雅のパフォーマンスはMUCCのミヤとは全く異なり、ベロア生地のワイパン仕様ボトムに胸元がざっくり開いた衣装を纏いながら、ひとストロークごとに腕をあげて掌をヒラヒラとさせ舞うような仕草をみせている。
ベーシスト・YUMEも女形というよりはシナの作り方があざとい系女子のソレで、やたらとキュートさをアピっている印象だ。
当然YUKKEとは違うし、YUKKEの知り合い(?)輸血子とも似ているようで似ていない。
一方、ヴォーカリスト・T.I.Gはといえばとにかく、今の時代にはありえないほど髪の盛り方が常軌を逸していてヤバかった。
もちろん、94年当時でいえばダイエースプレーを2本も3本も使うようなヘアスタイルがV系世界ではデフォルトだったと記憶しているが、この時代に見るとインパクトが何割増しにも感じられるから不思議に思えてくる。
「川崎、死ぬまで死のうじゃないか」(T.I.G)
少しうわずったような気取った声で、どこぞのシンジロウ構文にも近い謎の煽りを入れるT.I.G。
くしくも1994年に解散してしまった、エクスタシーレーベル出身バンド・Zi÷Killの名曲「ROUND AND FATE」を彷彿とさせる「Round & Round」を今この瞬間にLa'Muccが演奏することの意味性はあまりに大きい。
以前、作曲者は「さすがにこれはちょっとやり過ぎたかもしれない(笑)」と雑談をした際に語っていたことがあったものの、敬意と愛から生まれる創作物はある種の伝承となっていくとも考えられる。
トレーサビリティの観点からも、そのアーティストが何を食べてそのように育ってきたのかということがわかるのは、聴き手にとってもきっと嬉しいことのはず。
「La'Muccです。終わりを終わらせに来ました。そして、この場にいる全ての民で始まりを始めよう」(T.I.G)
ボワボワとした風呂場エコーが激しくかかっているせいか、必要以上にカリスマティックに聴こえてくるT.I.GのありがたいMCを受け、ここでお披露目されたのはライヴ当日にリリースとなったLa'Muccの初音源表題曲「Eyes」。
カンカンカンカンという4カウントから始まり、ジャージャッ!ジャージャッ!とギターが鳴った瞬間、ガラスの割れる音が鳴って、クリーントーンのアルペジオとシンコペ祭りのリズム、切なさを漂わせたキャッチーなサビへ展開していく、王道も王道の“V系っぽさ”が満開。
実際このパターンに近い曲を今まで何曲聴いたかはもうよくわからないくらいだが、人気グルメ漫画の主人公による台詞を借りるなら、これは「ほー、いいじゃないか。こういのでいいんだよ、こういうので」という賛辞がハマるタイプのベタ曲と言えよう。
今っぽい小洒落た料理、健康に良さそうなビーガン料理、たまの高級料理だっていいけれど。昔ながらの昭和な定食屋で出てくるA定食は、普遍的な絶対性を持つ。
〈目が覚めるまで 閉じた瞳 Close Your Eyes〉というサビのあと、雅の流麗なギターソロにのせてYUMEが終始セリフを呟き続け、ギターソロの終わりと共にステージ後方へ勢い良く放り投げたのはマイクスタンドではなくヌイグルミだったが、これもこれでLUNA SEAの「ROSIER」とJ様に対する賛意を込めた美しき伝統芸の継承だったと言えはしまいか。
また、細かい話にはなるがLa'Muccのステージでは敢えてピンスポットを使わない照明方法がとられ、往時のV系バンドたちがよくしていた見せ方を踏襲していたようであったし、今やイヤモニが当たり前の世の中にあって各メンバーが転がし=モニターを足元に置いていただけでなく、雅に至っては当時使っていたというコンパクトエフェクターをそのまま使っていたという徹底ぶり。しかも!
「さぁ、“あの丘”へ行こうじゃないか。我々にも“あの丘”が出てくる曲があるのです。行こう、“あの丘”へ!」(T.I.G)
通称・丘戦争。2017年にDir en greyとPIERROTによる2マンライヴが開催された当時、あらためて脚光を浴びることになったのはV系バンドには丘を題材にした曲が多いという事実だったことは皆様もよく御存知であろう。
「アクロの丘」に「メギドの丘」に「絶望の丘」に「夢見が丘」に「桜舞い散るあの丘で」。
さまざまなバンドが丘ソングを作ってきている中にあって、La'Muccがここで聴かせてくれたのは〈あの丘の奇形児達〉という歌詞を含む「ジレンマ」(ミニアルバム『哀愁』収録)にほかならない。
さすがは31年選手のベテランバンド・La'Mucc。こうしたところまでも抜かりなし。
抜かりなしといえば、この夜は前座を務めたMUCCのYUKKEの誕生日でライヴの途中にはサプライズでバースデーケーキが贈呈される一幕もあった。
プレゼンターとして登壇してくれたのは、なんと一見しただけではわからないほどエレガントゴシックな衣装を着こなしたNOBUYA(ROTTENGRAFFTY)で、このあとその姿のままLa'Muccとともに「娼婦」をセッションしてくれたのだった。
さらに、アンコールでは「蘭鋳」を始めるのかとみせかけて、舞台袖からシャンパンボトルを携えたJIRO (GLAY/CONTRASTZ ) がYUMEの誕生日祝いに駆けつけるという、T.I.Gと雅が仕掛けた驚異的事態も発生。
「もうやだぁー!JIROさんがいる!!こんなことある???っていうか、この見た目じゃない時に会いたかったぁぁ!!!ありがとうございます!!!!」(YUME)
夢幻、とはむしろこのことだったのだろうか?JIROとYUMEはまさかのツインベース体制でGLAYが1996年に発表した「SHUTTER SPEEDSのテーマ」を共演することになったうえ、仕切り直しの「蘭鋳」ではNOBUYAが再登場するなど、アンコールラストの「狂人」までLa'Muccはめくるめくようなひとときを我々に与えてくれたのである。
「みんな、本当に今日はありがとう♪わたしたちLa'Muccは今日のツアーファイナルをもって解散します。
ですけど、みんなの求める声が多かったらまたやるかもしれないので、その時はまた来てね♡」(YUME)
YUKKEが全力で完全プロデュースし、逹瑯とミヤがYUKKEに対する祝意を託す場ともなった[YUKKE(5)46歳 BIRTHDAY LIVE †夢幻†]。
夢のような幻惑の一夜は、こうして漆黒の闇へと溶けていったのだ―
PHOTO:冨田味我
TEXT:杉江由紀
≪MUCCメンバー完全プロデュース生誕公演 2025≫
「YUKKE(5)46歳 BIRTHDAY LIVE †夢幻†」
2025年11月5日(水)CLUB CITTA'
【MUCC SET LIST】
SE ホムラウタ
01. 絶望
02. G.G.
03. ENDER ENDER
04. World's End
05. LIP STICK
06. SANDMAN
07. △(トライアングル)
08. アルファ
09. 茨-イバラ-
10. Mr.Liar
11. Daydream Believer
【La'Mucc SET LIST】
01. 愛の唄
02. Round & Round
03. Violet
04. Eyes
05. マゼンタ
06. 花
07. 狂想曲
08. ジレンマ
09. 娼婦with NOBUYA (ROTTENGRAFFTY)
10. 翼をください
En1. SHUTTER SPEEDSのテーマ with JIRO (GLAY/CONTRASTZ )
En2. 蘭鋳 with NOBUYA (ROTTENGRAFFTY)
En3. 狂⼈
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