2011-10-20

【lynch.】常に危ないところを 渡ろうかなと思ってますよ

 lynch.にとって、メジャー進出した2011年は、まさに順風満帆だったと言えそうだ。昨今のライヴも説得力十分。最新シングル「MIRRORS」にもポテンシャルの高さが見事に体現されている。

──昨今のライヴの凄まじい勢いをそのまま体現したかのような仕上がりですが、シングル全体としての狙いもありました?

葉月 特にはないですね。激しくて速いというのは大前提だったんですけど、とにかくあのリズムパターン、テンポ感でどうしても次のリード曲はいきたい考えが僕の中にあって。結構、激しい音楽が市民権を得ているような印象があるんですけど、その中で誰もやっていないものといえば、あのパターンかなと。2ビートみたいなものでもなく、いかにもヘヴィですってラウドな感じでもない。速いんだけど、ありきたりじゃない。ひと昔前なら、いっぱいあったと思うんですけどね。例えば95~96年だから…ひと昔前どころじゃなくてふた昔か(笑)。

──なるほど。そんなルーツも自分の中からも沸き上がってきていたと。ドラマーにかかってくるところも大きいですよね。

晁直 まずデモで提示されたものをどう変えていくか、ちょっと苦労もしたんですけど、あのリズムを考えた時、全体的にはセクションの端々に自分的なアレンジを入れるぐらいでいいのかなと。スピード感を押し出すことを念頭に置いてはいましたね。

明徳 僕もデモを聴いた時から、さっき言ってたふた昔前の感じがパッときたので(笑)、最近の主流ではないけど、すごく親しみのあるパターンで取り組みやすかったですね。フレーズはドラムに合わせてっていう感じだったんですけど、曲のテンポが速いから右手がとにかくキツかったです(笑)。

悠介 僕もとりあえず速いなと思ったんですけど(笑)、わりとシンプルなんですよね。そんな中で、まずイントロ部分にカッコ良いリードを付けてほしいというリクエストもあって。それ次第で曲の印象も変わってくるだろうなと思ったんですよ。そこで何パターンか考えて、二転三転しながら今の状態になったんですけど、個人的にはこのリズムにただ寄り添う…地を這うようなギターではなくて、浮遊感を持って、上を行くほうが自分らしいのかなと。だから、グルーブ感は明徳に任せるかたちにして、僕はアルペジオを弾くようにしたり。自然にこういう仕上がりになりましたけど、自分で聴いてもグッとくるものができたと思います。

──こういったアッパーなリズムを軸にしているからこそ、そのような凝った部分を自然に聴かせながら、疾走感を持って全体の流れを生み出しているところがポイントなんでしょうね。

玲央 僕はバンドの中で一番年上なんですけど(笑)、ひと昔、ふた昔前と言っても、逆にこのリズムを今までやってないんですよ。当時、音楽シーンを賑わせていた諸先輩方と同じことをやっちゃダメだ、一緒に見られたくないっていう変な意地で、むしろ避けていた世代なんですね。多分、葉月や明徳の世代には新鮮味があると思うんですけど、僕はどうしても最初、抵抗感が否めなかったのが正直なところなんですよ。往年の先輩とそのフォロワーがやってきたことを、15年後に僕らがまたあえてやるわけじゃないですか。だから、すっごい賭けだと思ってて。ただ、仕上がってみると、自分たちらしい、新しいところに落ち着いて良かったなと、ちょっと安心感もあるんですよ。逆に今のものとして聴かせられるのは、lynch.のバンドとしての力量なのかなと。

葉月 今、僕の中ではこれが一番新しいんですよ。来年、再来年辺りに、このパターンはいっぱい出てくると思うんですね。最近は2ビートが流行ってますけど、僕らが採り入れたのは2~3年前でしたし、そういう流れを読んでやっていくのも好きなんですよ(笑)。一番古いものが一番新しいみたいな…でも、ギリギリでやっていかないと、流行に乗るだけになっちゃうんで、常に危ないところを渡ろうかなと(笑)。

──その意味でも狙い通りの仕上がりなんでしょうね。

葉月 そうですね。ただ、最初はもっと熱い曲なのかなと思ってたんですけど、意外に何か冷たいイメージの曲になって。そこは自分でも楽しかったですね。メロディーは思うままに付けたんですけど、それで一気に全てが逆転した感じがあるんですよ。それをさらに究めようと思って、歌詞を書き始めたんだけど、初めてと言えるぐらい強く季節感を意識した気がしますね。とにかく冬でいきたいなと。冬というのは単純にメロディーからのインスピレーションなんだけど、今回はわりと雰囲気のある言葉を盛りだくさんにしたかったんですよ。例えば、1行目の“魔の夢”なんて言葉、ちょっと前の僕だったら絶対に使いたくなかったんですよね。ビジュアル系っぽいじゃんみたいな感じで(笑)。だけど、最近、いろんなバンドと共演する機会が多くて、ジャンルを超えてやることで、ジャンル分けのくだらなさみたいなことにより明確に気付いたというか。むしろ、こういう言葉を使って書いていたほうが、自分は得意というか、色が出せるタイプだなと思ったんで、そこは正直にいこうかなと思ったんですよ。逆に普通の言葉だけで構成したからロックバンドですとか、雰囲気のある言葉が入っていたらどうだとか…それも違うなと思ってね。

──なぜ“MIRROR”ではなく、“MIRRORS”だったのですか?

葉月 単純には響きですけど、結局、この話のように、人と人が関わる時に、人自体が鏡みたいなものなんじゃないかなって。

玲央 言葉の選び方にしても、サウンドに乗った時にどう聴こえるかということも考慮しながら書いているのが見えるんですよね。でも、葉月は根っからのロマンティストだなと思いますよ。

──本作にはより疾走感に満ちた「THE TRUTH IS INSIDE」や初めてシャッフルのリズムに取り組んだ「DEVI」も収録されますが、間もなく始まる全国ツアーもより楽しみになりますね。

葉月 客観的にこのスケジュールを見て、大きくなったなぁって思うんですよ(笑)。やっぱ名古屋人なんで、Diamond Hallが普通にツアーの真ん中にあることはすごく感慨深いんですね。それと変な話ですけど、チケットの売行きがすごく順調なんですよ。前回からの伸び率が、それこそ倍以上になっているところもあるし。そういう期待の目が感じられるし、単純にそれに恥じないライヴにしなきゃならないなと思ってますね。

取材:土屋京輔

(OKMusic)


シェアしてアーティストの活動を応援しよう!

 ROCK LYRICをフォローする!

フォローすることでROCK LYRICの最新情報を受け取ることが出来ます。

   

  新着ニュース