2012-03-20
【lynch.】劣等感があるからこそ 自分を信じなきゃいけない
6月27日にリリースされる6枚目のアルバム。lynch.が放つ新作『INFERIORITY COMPLEX』は、まさに必然に思える激しさをまとっている。人間の根源を目覚めさせる音とは何なのか? 葉月(Vo)が語る。
──メジャーに移籍してからの1年間、勢いは増す一方でしたが、lynch.とはどんなバンドなのか、改めて語るとすれば?
葉月 何と言ったらいいかな…ロックバンドであることには間違いないんだけど、非常に形容し難いんですよ。本当に聴く人によって意見がまったく違いますしね。最新型のlynch.で言えば、メジャーの中にあって、激しいバンドってイメージを持たれたかったし、そこに焦点を絞って、今回のアルバムも作ってるんです。決してアンダーグラウンド一直線なのではなくてね。
──今までもそういった印象は少なからずあったでしょ?
葉月 あったと思いますね。核になるものは今もそんなに変わってないんですけど、前作『I BELIEVE IN ME』は、その核から遠いところの世界も見せた広いアルバムだったと思うんです。だから、それを散漫だと言う人も当然いたし、なるほどなとも思うんですよ。もちろん、自分たちではそうは思わないですけど。そんな中で、次はどこに焦点を合わせるか。それが“速い”“激しい”“メロディアス”。この3つだったんですね。
──確かに今回の『INFERIORITY COMPLEX』は、その狙い通りのものに受け止められますが、1曲目の「MOMENT」が流れてきただけで、すぐにlynch.の曲であることも分かる。作り手としては、あえて“自分たちらしさ”を考えずとも、自然と生み出せるものなんだとは思いますが…。
葉月 でもね、わりと自分でも分かるんですよ。アルバムが出来上がった時、僕は結構、ファン目線で聴くことが多いので、そこで次の作品のことを考えたりもしますしね。ただ、今回は僕だけで曲を作り込まずに、構成からフレージングから、メンバー5人でアレンジを練った感があるんですよ。その『MOMENT』のド頭のイントロにしても、2ビートに悠介くんのメロウなアルペジオを乗せると、すごくlynch.っぽいなと思ってね。もっとみんなの色を曲に入れたい…それは『I BELIEVE IN ME』の時にわりと強めたところでもあったんですけど、当時はまだ僕がラフなデモを作っていって、フレーズをみんなに考えてもらうというやり方だったんですよ。だけど、今回は曲自体も半分ぐらい(の長さで)しか持っていかなかったんですね。
──そういった取り組み方で臨んだのは、lynch.のあるべき姿が表現されるはずだという確信があってのことですよね?
葉月 そうですね。自分だけでやっていると、突拍子もない意見は出てこないじゃないですか。でも、誰かが言った意見も、それが意味不明に思えるものでも、自分なりに解釈してまとめれば、斬新なものとしてかたちにできる。『THE FATAL HOUR HAS COME』はフレーズが全然変わりましたしね。最初はずっとパワーコードで進んでいく、もっと普通のヘヴィメタルみたいな曲だったんですよ。だけど、一気にアルペジオだらけになって。
──アルバムが仕上がってみて、バンドとして新たな領域に足を踏み入れた感覚を強く実感するものを挙げるとしたら?
葉月 よく言われるのは、『NEW PSYCHO PARALYZE』ですね。こういう飛び跳ねるようなノリは、今まであんまりなかったんで。でも、それはlynch.の中で新しいだけで、例えば“ミクスチャー”って言い方だってできるわけですよ。僕の中で一番、“これはやったぜ!”と思うのは、『EXPERIENCE』ですね。この曲に関しては形容できないというか、相応しいジャンルの名前が僕にも今のところ浮かばない。速くて激しいのに、シャウトがすごく切ないんです。攻撃性というよりは悲痛な叫び。自分でも不思議な感じになったんですよ。
──「INFERIORITY COMPLEX」という曲の母体となるアイディアは、ラストインディーズシングル「JUDGEMENT」の頃に存在していたそうですが、曲名はアルバムタイトルにまでなってますよね。なぜ“劣等感”なる言葉を選んだのでしょう?
葉月 アルバムタイトルというのは意外と単純なところに理由があって、字面と響きなんです。あとは、全曲の歌詞を眺めてみた時に、これが一番共通性のある言葉かなと思ったんですよ。それと説明が難しいんですけど、“I BELIEVE IN ME”と表裏一体みたいなイメージがあるんですね。僕は劣等感を感じ続けながら生きてきたことに最近気付いたんですが、それでも自分を信じることでしか先には進めない。そんな意味でも非常にいいタイトルなのかなと思うところはあって。劣等感があるからこそ信じなきゃいけないし、信じていても、また劣等感が襲ってくることはいくらでもある。その繰り返しなんですよね。でも、今までそこから目を背けてきた部分があったんですよ。lynch.の葉月というキャラとしては一切排除したかったというかね。
──時として自分を鼓舞する言葉は必要になりますからね。間もなく始まる、各地のライヴハウスを回るツアー『THE FATAL EXPERIENCE』もいっそう楽しみになりますよ。
葉月 本当にこのアルバムが似合う会場ばかりだなと思うんですよ。それこそコンサート的じゃなくて、本気のライヴが観られるような。当然、ロックファンにも響いてほしいけど、僕は自分がそうだったように、ロックを知らない子を激しい音楽でどんどんロックに目覚めさせていきたいんです。かなりの本数を回るんで、このツアーで出会う人はいっぱいいるだろうし、その中には、将来、ミュージシャンになりたいと思う人もいるかもしれない。そんな“運命的経験”をいっぱい散りばめられればいいですね。
取材:土屋京輔
(OKMusic)
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