2014-06-23
ふくろうず、過渡期だからこそ生まれた“3人だけの音”
ふくろうずが3年振りのフルアルバム『マジックモーメント』をリリースする。2011年のドラマー脱退により、バンドとしての転機が訪れたという3人が生み出した新たな音作りの手法、そして心境の変化を訊いた。
──昨年の夏にリリースしたミニアルバム『テレフォン No.1』をはさんで3年振りのフルアルバムになりますが、制作環境に変化はありますか?
安西 『テレフォン No.1』の時はドラマーが抜けて3人になった経緯もあって、デモを打ち込みで作って、その後サポートドラマーに叩いてもらったんですが、今回はドラマーは入れず、3人で作ろうという話になって。せっかく3人だけでやるなら生っぽい音にこだわらなくてもいいんじゃないかということで、まずは打ち込み系の「GINGA GO」や「マーベラス!」を最初に作っていきました。
──3人だけでやると決めたのは?
安西 やっぱりドラムの音ってすごく重要なんですけど、僕らはサポートミュージシャンに頼むという経験がほとんどないから、音の仕上がりがなかなか想像できなくて。それで『テレフォン No.1』のデモを作った経験もあったので、今回は3人で頑張ってやってみようかなと。
──「マーベラス!」はいきなりドラムンベースから始まって、これは新機軸だなと思いました
安西 そうですね、これは特にドラマーがいないからこそできた曲だと思います。中盤の展開は、内田が言った“ディズニー”っていうキーワードをヒントにしていて。
──内田さん、ディズニーがお好きなのですか?
内田 いえ、そんなに…。
──(笑)。じゃあ、あくまでも“ディズニー的”な盛り上がりが欲しかったと。
安西 ディズニー音楽って、結構ブッ飛んでるところがあるじゃないですか。僕らはそういうオーバーなものが好きなんですよね。
──確かに「マーベラス!」はいつになくハイテンションですよね。こういうアッパーな曲が多く生まれたのは、内田さんの中で何か変化があったからなのでしょうか?
内田 そうですね…自分としては、今までBPM(1分間に刻む拍の数)110くらいの暗めの曲を作りすぎたと思っていて、今度は違うことをやってみようかなという意識があったと思います。
──シンセ音を多く重ねているのも、鮮やかなサウンドにしたいから?
安西 あぁ、そうですね。シンセの音もやんわり入れるとかじゃなくて、入れるならオーバーに、アゲる要素として入れようと。あとは今回、石井のギターの音が入ることでバンドサウンドらしくなるシーンが多くて。「GINGA GO」のギャーンと鳴るギターなんてすごく彼らしいなと思います。
──ギターの音色で一気にオルタナ色が足されますよね。
石井 そうですね、やっぱり僕のルーツはブランキー(ジェットシティ)やニルヴァーナのような、ストレートなロックなので。
──もっと激しくしたいという欲求もあります?
石井 いやー、そのつもりはなくても、そうなっちゃう傾向はあるかも…(笑)。やっぱりギターを持ったらカッコ良くありたいというか。やりすぎてダメな時もあるけど(笑)。
──「ベッドタウン」のようにセンチメンタルな曲ではギターのリリカルな音が印象的ですが、こういう音色は内田さんの書く曲の心情を読み取りながら決めていくのですか?
石井 そうですね、他の音とのバランスを取りながら。僕はもともと曲を聴く時、歌詞よりも音を聴くタイプなんですよ。だから、以前は内田の書く曲に対して“この歌よく分かんないな”って思うことも多かったけど、最近はちょっとイメージできるようになってきて。
安西 確かに、歌詞を聴いて自然と音を出すようになったかも。それが各自の演奏や音色にも出てる気がしますね。
──内田さんは音の変化、感じます?
内田 うーん、それはよく分かんないけど、みんな歳をとってきたなっていう変化は感じます。
──えっ、それはどんな面で?
内田 私たち、大学の頃からバンドを続けていて、就職したりとか急激な環境の変化はなかったけど、それでも歳をとることで何か少しずつ変わってきたというか…。
──例えば、意志疎通がうまくできるようになったとか?
内田 あ、それは全然ないです(笑)。
──じゃあ、音作りがスムーズになったとか?
内田 それも微妙なとこ(笑)。
石井 あはは。スムーズにはいかないけど、みんなで強行突破するぞ!みたいなムードは生まれたかもね。でも…俺ら歳とった?(笑)
内田 うん、歳とった。目に見えるような大きな変化じゃなくて、小さな積み重ねなんだけど、いろんな変化がメンバー内で起こってる気がする。ここ1~2年の間、すごく濃密な歳の取り方をしてる。
──良い方に変わってるってことですか?
内田 それは10年くらい経たないと分かんないですね。でも、変わったのは必然だと思う。以前のままの関係なら、今回のアルバムはできなかったと思うし。
──バンドとしても過渡期だったということですね。
内田 まさにそうです。ドラマーが抜けてバンドを続けるかどうかも考えたし、大学卒業して時間が経って、周りの友だちの変化とかも感じるし。やっとバンド…というか、“自営業”を続けるってこういうことかな、とかいろいろ考える時期でもあったので。
──この先もずっと音楽を続けていきたいと思いますか?
内田 うーん、そうですね…ちょっと分かんないです。でも、やれることは精一杯やろうと思うようになりました。そういうところが今回のアルバムに出てると思います。
取材:廿楽玲子
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