2013-05-21

【nano.RIPE】夜空に描く春の大三角形

 アニメ『はたらく魔王さま』エンディングテーマ「月花」が好評のnano.RIPEが、同曲を含むシングル「サンカクep」をリリース。シンプルでキャッチーなメロディーが際立った本作について、きみコ(Vo&Gu)に語ってもらった。

──“サンカクep”というタイトルは、どんな意味で?

「今回は、表題曲とかカップリング曲とかいう区別がなく、3曲で一枚の作品にしたくて。それに全部夜のシチュエーションの曲で、“星”や“月”という言葉が出てくるし…ちょうどリリースの時期は、星座の春の大三角形がすごくきれいに見えるのにもかけています。“ep”は雰囲気で、スピッツさんに『99ep』という作品があったな~と (苦笑)。」

──3曲ともギターのササキジュンさんの作曲ですね。

「負けちゃいました(笑)。どれも、私が弾き語りするだけでも成立するような、メロディーで勝負した3曲です。」

──ちょっと新しいnano.RIPEを感じたので、次への道が開けるきっかけになる一枚かもしれませんね。

「ドラマーの青山友樹が正式にメンバーとして加入したこともあって、私自身このシングルから新しいnano.RIPEが始まる気がします。4人組になるのは1年以上振りなので、ここからますます頑張らないと!という一枚ですね。」

──1曲目の「スターチャート」は、nano.RIPEらしいアッパーで前向きな曲だなと思いました。

「実はこの曲、私の中ではすごく悲しい曲のつもりで書いたんです。でも、作ってから時間が経って、昨日リハで歌った時とか、不思議と幸せな曲に感じるようになって…。」

──悲しい歌とは、思いませんでしたけど。

「やっぱりそうなんですか。スタッフもみんな、誰も悲しい歌とは思わなかったみたいで、だからあえて説明も訂正もしてなかったんです。ライヴで歌うたびに、曲に対するイメージが変化していくことはよくありますが、リリース前にこんなにも印象が変わった曲は初めてでしたね。」

──でも曲調自体、決して悲しい方向ではないですよね。

「歌詞を書いたのが、喉の手術をする前後の声を出せなかった時期で、落ち込んでいたのもあったと思うんです。」

──“朝が来たら消えていそうで、消えないように願う”というような歌詞は、歌えなくなるかもという不安の表れ?

「そうです。本当に声が戻ってくるのか? みんなの中から自分が消えてしまっているんじゃないか?…という。明るい曲調に悲しい歌詞を乗せたことで、より悲しさが増して。この歌詞を書いた直後は、あまりに切なくて、まともに歌うと泣いてしまいそうで、なかなか歌うことができませんでした。でも、昨年末の赤坂BLITZや今やっているツアーを通して、気持ちも解釈もどんどん前向きなものに変わっています。」

──2曲目の「月花」は、アニメ『はたらく魔王さま』のエンディングテーマ。ミディアムの曲調は珍しいですね。

「エンディングをやらせていただくこと自体初めてだったし、エンディング曲はしっとりというイメージがあったので、「月花」がぴったりだろうと。アニメ放送直後から“こういう曲も歌うんだ~”みたいな、意外だったという反応をたくさんいただきました。バラードは今までもありましたが、こういうミディアムテンポのやさしい曲は、新しい挑戦でした。」

──包み込むような温かさや、やさしさがある曲ですね。

「ササキジュンから“この曲は暗い歌詞を書かないでくれ!”と釘を刺されたので(笑)、明日に向かって歩き始められるような、やさしい歌詞を書きたいと。まあ、そんなに明るくもないですが、私なりの前向きさを込めたつもりです。」

──“月花”というのは、どういう花ですか?

「造語ですが、月に照らされて咲く花があってもいいなと。」

──なんか、ロマンチックですね。

「ですね(笑) 。あと、RPGゲーム『ドラゴンクエスト5』で“ルラムーン草”というアイテムを取りにいくイベントがあって。そのルラムーン草は、夜にしか咲いていない花で、それを手に入れると“ルーラ”という呪文を覚えて、好きな場所にいくことができるようになるんですね。そこからのインスパイアもあって、気持ちを乗り越えて月花を手に入れることで、自分も旅立つことができるという気持ちも込めています。」

──3曲目の「ツマビクヒトリ」は弾けたビート感というか、リズムや歌い方が特徴的ですね。

「デモを聴いて“こう来たか!”と驚きました。Bメロがすごく歯切れの良い感じだったので、そこでは言葉遊びをしたいと思って、短い言葉で次々と韻を踏んでいく感じにしています。今までは、日常会話で使う言葉でしか歌詞を書かないと決めていたのですが、この曲ではちょっと冒険して、普段は使わない言葉も初めて歌詞として使っています。タイトルの“ツマビクヒトリ”は、最初は仮タイトルだったのですが、メンバーやスタッフからこっちのほうが好きだという意見が多かったので、本タイトルに採用となりました。」

──途中で《海に似た声がこぼれ落ちた》というフレーズがありますが、これは何を比喩しているのですか?

「よくぞ訊いてくれました! スタッフもメンバーも誰も訊いてくれなかったので、説明する機会がなくて。訊いていただいて、ありがとうございます。あの、海って塩辛いじゃないですか。つまり、涙なんです。“海に似た声がこぼれ落ちる=涙がこぼれ落ちる”なんですよ。やっと言えた!(笑)」

──そういう比喩やフレーズは、ノートやネタ帳みたいなものに書き溜めておくのですか?

「ブログに直接書くことが多いです。私のブログは、別名、公開ネタ帳で(笑)、ブログで書いたネタを歌詞に引っ張ってくることがよくあるんです。だから、マメにブログをチェックしてもらえれば、いずれ“あの日のきみコの気持ちが、この歌詞に!”って、曲をより楽しめるようになります。」

──そしてこの夏は、Animelo Summer Live 2013に初出演も決定と。

「名前は知っててもライヴを観たことない人は多いと思うので…。短い時間ですが、nano.RIPEはこうだ!というものを見せつけて、フルスロットルで駆け抜けようと思います!」

取材:榑林史章

(OKMusic)


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