2013-02-20
【T.M.Revolution】T.M.R.バージョン15、多彩なアーティストにより人気曲がアップデート!
制作の発表から約3年、待ちに待ったセルフカバーベストアルバムの第二弾『UNDER:COVER 2』がついにリリース。全曲において多彩なアーティストが参加し、実に濃く懐が深く、待った甲斐のある作品に仕上がった。これを聴けば、T.M.R.がまた新たなステージに上がったことを実感するだろう。
【T.M.R.はやっぱりT.M.R.!】
──『UNDER:COVER 2』がついにリリース!
「リリース日が何度も延期になるという憂き目に遭ってきたので、忘れられてないか、ちょっと心配(笑)。でも、やっとみなさんにお届けすることができるので、ホッとしてます。長きに渡った15 周年イヤープロジェクトも、これでようやく完結できます。」
──今作はほぼ全曲でゲストを迎えているわけですが、最初からこういう豪華なものにしようと?
「いえ、最初は何も考えてなかったです(笑)。『UNDER:COVER 2』を出そうという企画が決まり、そうこうしているうちにみなさんから募集したリクエストが集まって。そのリストを眺めながら“さてどうしようかな~”って(笑)。どの曲がくるか分からないことには、やることを決めようがないので。」
──リクエストの結果については、どう感じましたか?
「まめにライヴに来てくれたりとか、ずっと応援してくれているみなさんの思い入れの強い曲が多いかなって思います。」
──実際に最近のライヴでも演奏してる曲が多いのでは?
「去年の夏には全曲マスタリングが終わっていたので、やれる曲からライヴでもどんどんやっていて。『T.M.R. LIVE REVOLUTION’12-15th Anniversary FINAL-』の代々木競技場第一体育館でのステージでは、この中から結構、演ってましたね。」
──全曲でゲストを入れたのはどうしてですか?
「こういう趣向の作品なので、応援してくれてるファンのみなさんが楽しんでくれることはもちろんですが、kz(livetune)やTom-H@ckなどの今の若い子たちが注目しているジャンルのアーティストも参加することで、ここから入って聴き始めてくれる人が増えてくれたらうれしいという気持ちもありました。ゲストは以前からの知り合いもいるし、初めましての方もいて。顔見知りではあっても、一緒に音を出したことのなかった人もいますし、この制作を通じて今後も何か一緒にやれたら面白いんじゃないかという気持ちもあったし。ひとりひとりに、なぜその人を選んだのか理由もあって。この曲をこういうマッチングでやったら、こういう面白いことが起きるんじゃないかと。単純に、この人の作るオケに僕の声が乗ったらどうなるのかな?っていう興味で選んだ人もいます。例えば「vestige - ヴェスティージ-」をアレンジしてくれた松谷 卓くんは、普段インストしか作ったことがなくて、彼がオーケストレーションした曲に歌が乗るのも、これが初めてだったそうです。「vestige - ヴェスティージ-」はもともと大きな世界観を持った曲なので、それをもっと大きく包容力のあるものにしたいと考えて、はなからオーケストラアレンジを希望していたんですけど、マッチングという部分で松谷くんとやったら面白いんじゃないかって。」
──映画音楽を聴くような壮大なものになりましたよね。
「そうですね。松谷くんは普段からNHK のドキュメンタリーとかドラマの劇版とかを手がけてるし、すごく独特な世界観を持っています。そうかと思うと、Tom-H@ckなんかは、そもそもSNSを通じて知り合って、彼の人となりとかも分かってたし、いつか一緒に音を出せたらいいなと話してたんです。それで「Albireo -アルビレオ-」の本来持っているポテンシャルを引き上げてくれる人は誰か?と考えた時、Tom-H@ckくんの音作りがハマりそうな気がして。実際上がってきたものもすごく良かったし。」
──Tom-H@ckさんというと、アニメ『けいおん!』や『涼宮ハルヒの憂鬱』などの曲で有名。アニメの楽しくてポップなアレンジを想像して聴いたら、まったく違ったので面白かったです。また、「INVOKE」をアレンジしたkz(livetune)さんはボカロPとして有名なので、西川さんの声にオートチューンをかけて初音ミクみたいな声にしちゃうのかな?と想像していたんですけど…。
「彼らのような音作りのやり方って、バンドをやってる人間からしたら突っぱねてしまったりしがちなんだけど、もともとT.M.R.ってそんな高尚な信念やフィロソフィーを掲げてやるようなものじゃなく、曲があって僕が歌えばそれはT.M.R.なんだという、結構シンプルなものだと思ってるんです。だからこそ、こういう企画が成立するわけで…kz(livetune)は、「INVOKE」のリリース当時いちリスナーとしてリアルタイムで聴いてくれてたそうなんですよ。今回は当時のリスナーに聴いてもらいたいという想いもあったので、彼ならその想いを一番いいかたちで着地させてくれるんじゃないかと思いました。実は、ぶっちゃけオートチューンもやってみたんですけど、僕の声にはかからなかったんですよ。」
──オートチューンがかからないとは、どういうことですか?
「オートチューンって決めた音程になるように無理矢理補正をかけるから、声がひっくり返るみたいな効果が出るんです。つまり、音程をハズさないと効果が出ないという。そういうチャレンジは今回全部の曲でやってるんだけど、そこで分かったのは、カツが乗っても、ハンバーグが乗っても、カレーはカレーだということ。」
──T.M.R.はカレーだと。
「そう。チーズ入れたり、納豆入れたり、曲ごとにいろいろやったんだけど、どうしてもカレーなんです。やっぱりカレーって強いなって、良くも悪くもそれがよく分かった制作でした(笑)」
──でも、それがT.M.R.の良さですからね。
「そうなんですかね。僕にだっていろいろ思うところはあるんです。甘ったるく歌ってみたいとか、ふわっと息の成分たっぷりの声で歌いたいとか。やってみたけど、ダメだったんです(笑)」
【今後のライヴのアレンジは 『UNDER:COVER 2』が基本に】
──逆にVERBALさんがアレンジした「WILD RUSH」は、彼の持ってるカラーと西川さんの声のギャップがハマった。
「VERBAL とやった「WILD RUSH」やUZUMAKI の「LEVEL4」なんかは、前回の『UNDER:COVER』に入っていてもおかしくない曲で、そういう曲はライヴでやってる回数も多いから、すでに何度もブラッシュアップをかけているんです。それだけに、今回はどういうところに落ち着かせるかで悩みましたね。いい意味で一緒にやる人のカラーにも期待していた部分もあったし、結果的にその期待とは違ったところに落ち着いたとしても、それも面白くてアリだと思いました。」
──the GazettE が参加した「SHAKIN' LOVE」は展開が激しくて、思わず土下座しそうになりました(笑)。
「(笑)。the GazettE は一昨年の『イナズマロックフェス』にも出てくれたし、エンジニアがT.M.R.と同じというつながりもあって。UZUMAKIやHOME MADE 家族に対してもそうだけど、せっかく一緒にやるんだから抑えめではなく、音が出た瞬間に彼らの存在感がありありと分かるものにしたいんだと話したんです。the GazettE はいわゆるラウドやスクリームにはない華があって、すでにカラーが確立されてるので、カテゴリーを飛び越えていろんなものを消化できている。だから、あの声は個性的で魅力だし、ああいう声は僕には出せないから、すごくいいなと思って。向こうも、すごく楽しんで臨んでくれていましたね。」
──「蒼い霹靂」に参加した布袋寅泰さんとのつながりは?
「一昨年と去年、続けてイベントでご一緒させていただく機会があって。あと、アレンジを担当した岸 利至くんが布袋さんのトラックメイクをずっとやってるつながりもあったので、岸くんを経由して布袋さんにオファーしたという。布袋さんとのレコーディングは、もちろん予めプランを考えて臨んでいただいたのですが、その場で弾きながら固めていく部分もあって。どんどん完成されていく過程を見るのはすごく面白かったです。」
──個人的に印象に残ってるレコーディングはありましたか?
「そうだな~。デビューシングルの「独裁 -monopolize-」は縁のある方にやってもらったほうが、ファンのみんなも納得してくれるんじゃないかと思って、浅倉大介さんにお願いしたんですけど…“こんな感じで”って向こうからデモが上がってきて、それはもちろん打ち込みだけのものだったんだけど。“じゃあ、あとはこっちでやるから”ってことで、T.M.R. のツアーメンバーからアイデアをもらいながら、ドラム、ベース、ギターのリフやフレーズを考えて乗せたんです。さらに歌入れしてる最中に、何か物足りないってことで、ヒューマンビートボックスが入ったらいいんじゃないかと思い付いて。“今イケてるビートボクサーを誰か知らない?”って知り合いに電話して。聞いた名前をYouTube とかでチェックして、TATSUYA がいいと。」
──もともとの浅倉さんのアレンジには、ヒューマンビートボックスは入ってなかったんですよね。
「マスタリング音源を聴いてびっくりしたんじゃないかな。でも、そういうこともアリなのが『UNDER:COVER』ですから。」
──しかし、こうしたゲスト陣の幅広さは、『イナズマロックフェス』や音楽番組出演などでの交流のたまものですね。
「HOME MADE 家族のMICROなんか、毎年『イナズマロックフェス』にきてくれるし(笑)。あと普段からツアーなどで一緒に音作りをしてくれている、鈴木 覚くんやギターの柴崎 浩くんとは、実際ツアー中に“こんなふうにしようと思ってるんだ”って話をすることもありました。」
──ツアーと言えば、前作の『UNDER:COVER』の収録曲は、以降のライヴではそのアレンジが基本になりました。ということは、『UNDER:COVER 2』の収録曲は、今後ライヴでやる時はこのアレンジでやることに?
「そういうことになります。『UNDER:COVER』の曲は、そのアレンジがスタンダードになって、今やオリジナルのリリース当初のアレンジを知らないファンもたくさんいるくらいで。ラップのパートはどうするんだ?とか、考えることはいっぱいありますけど…う~ん、どうしようかね(笑)。」
──今後も○○周年でこういう作品を?
「ですね。節目でこういうものを作るのは、それまで自分がやってきたことに対する成績表みたいなところもあると思うので。」
──じゃあ、オール5ですか!
「いや、結果的に点数では計れないものだということが、今回改めて分かったという(笑)。でも、旧譜のリメイクという部分では、当時表現し切れなかったことが、今回きちんと消化できたと思うし。音を作る作業を単純に楽しんだものでないと、より遠くには飛ばない…そういう基本を改めて感じた部分もありました。」
──では、20周年に向けての今のお気持ちを。
「ここ3年ほど、ひとつひとつのものをじっくり、きちんとかたちにしてきた感じだったので、今年からは少し無茶したりブッ飛んだことをしたり、攻めの姿勢でいきたいと思っています。そういう気持ちで物作りをしたいなと。相変わらずネットやゲームにもちょくちょく触れてるんですけど、そういうところにも、もっとフックになる部分がきっとたくさんあるはずなんですよね。それをかたちにしていくことで、T.M.R.を聴いたことがない人や触れたことがない人に、もっとアプローチできるんじゃないかと思っています。まあ、不景気な世の中ではありますが、そんな時代だからこそ、楽しみながら前に進めたらと思っています。」
取材:榑林史章
(OKMusic)
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