2013-02-19

【ギターウルフ】野獣の震えを感じるか? 剥き出しになった狼の本性

 唯一無二の存在感で世界中のロック野郎を熱狂させるギターウルフ。通算11枚目となるフルアルバムは、燃えたぎる野獣の本性をあらわにした、どこを切っても狼印な意欲作。結成26年目にして爆音魂は衰えることをまったく知らない。


 【野獣のように震えろ! 癒しなんて糞食らえ!】

──フルアルバムとしては2年4カ月振りになりますが、その間にひたすら曲を書き溜めていたのですか?

セイジ「“もっと震えろ!癒しなんて糞食らえ!”っていう。“野獣”というのは、ただ獣のように震えたいと思っただけで。世界のロック界を野獣のようにブルブル戦慄させて震わせたいんだ。この曲が最初にできたわけじゃないけど、これができて、“これだ!今回はこれでいく!”って思ったんだ。」

U.G「曲も3人で一瞬でできて、ライヴでもやってましたね。」

セイジ「いかにも一瞬でできそうな曲だけど(笑)。自分にとっては、こういう勢いだけで展開が少ない曲が理想なんだ。」

──「メソポタミアロンリー」は、古代文明を舞台にしたラブソングのようですね。前ミニアルバム『ジェット サティスファク ション』には「エジプトロック」という曲もありましたが。

セイジ「メソポタミアやエジプトというのが自分のロックの琴線に引っかかるんだ。人がとても取り合わないようなものをロックにしたいという思いがマグマのように渦巻いているから。これもタイトルが最初に出たんだけど、どうなっていくんだろうって自分でも全然見えなくて。この曲に関しては、自分の頭の中にすでにあるものを出すというよりは、その歌のドラマに自分から足を踏み込んでいった感じ。ワクワクしたね。“いったい彼女はどこにいるんだろう?”と現代のモヘンジョダロの市場を彷徨っていると、象形文字で描かれた彼女からのメッセージを見付け、ギルガメッシュという王が君臨してたことを知り、“きっとこいつが彼女を妃にしようとしているに違いない”と、この時代へタイムマシンをブッ飛ばして彼女を救いにいくと。」

──時空を超えたドラマチックなストーリーですね。

セイジ「間奏の不思議な展開はタイムトラベルしてる時の四次元の音を表してる(笑)。ドラえもんがタイムマシンに乗っている時の音に似ているという声もあるけど(笑)。」

──「ガソリン子守歌」は、ザ・ジョン・スペンサー・ブルース・エクスプロージョンとのスプリットEPにも収録されていましたね。

セイジ「これも早い時期にできた曲。田舎で高校生やってた頃、東京に出てきた時のことを考えると夜寝られなくて。根拠のない自信はあるんだけど、“自分には何があるんだろう?”と悶々として。弱肉強食の東京で俺は生きていけるのだろうか。死ぬか生きるかの賭けができるのか。そんな時、自分の中にあるパワー、ガソリンの揺れを感じてようやく眠りに就くことができるんだ。そんな日々のことを歌った曲。「サファイヤCITY」もそう。」

──《恐竜が死んでガソリンになった》という歌詞が、すごい発想だなと。

セイジ「ガソリンは化石燃料だからね。もちろん恐竜だけじゃないけど(笑)。でも、そう感じさせるものがあったんだ。俺に恐竜ほどの爆発力を出せるのか、という焦燥感。東京にずっと住んでる人は分からないだろうけど、はるか遠くの国のように感じていたからね。今はもう忘れちゃったけど、不思議な感覚だった。テレビで『笑っていいとも!』を観てるとアルタ前の風景とか流れるんだけど、“本当にこんな世界が存在するんだろうか”という。東京と南極は同じぐらいの距離感だったからね。東京で何かを成し遂げてやる!という強い思いがあったから、そこまで恐怖感を感じたんだろうけど。」

──サイコホラー的な「幽霊ユー」は?

セイジ「これは今回最初にできた曲。どっかの女の子に“もっといい女になれよ。幽霊みたいな顔してんじゃねえよ!”っていう。一応愛の歌ではあるんだけどね。」

トオル「酷い中傷(笑)。」



 【信長には圧倒的な 野獣バイブレーションを感じる】

──「マグマ信長」は、ギターウルフ歴史シリーズの日本編ですか?これぞまさに戦国ロック!

セイジ「これは屋上で座禅を組んでいて、自分のアンテナにパッと引っかかった時、“何かの間違いじゃないか?”と思って。“これ、曲にしていいのかな?”っていう(笑)。でも、それだけ反発が強いというのは何かあるんだろうと。で、曲にしてみたらすごくカッコ良くなってね。ああいう歌詞は自分の超得意分野でもあって、あっと言う間にできた。日本史は好きだからね。戦国や幕末の本を20代中頃から読み出したんだけど面白いし。」

──天下統一の戦国武将と言えば、他に家康と秀吉がいますが、信長を取り上げたのはなぜですか?

セイジ「信長はまさに“野獣バイブレーター”で、日本中を震わせた圧倒的なパワーを感じさせるんだ。そういう人物だから引っかかったんだと思う。日本の歴史上もっともマグマ的パワーを感じさせる。中世を破壊して近代へと導いた人物なんだ。日本の歴史は信長以前、以後と言われるぐらいに。でも、俺はそんなことまでは考えてなくて、「野獣バイブレーター」を作っていく上で引っかかったキーワードが信長だったということ。きっと信長もブルブル震えたんだろう、と。」

──このタイトルを聞いた時のおふたりの反応は?

トオル「これこそもう“きたきたきたーっ!!”って(笑)。」

セイジ「俺が“どうかな~”と思ってる時に、ふたりが“きた!”って言ったから“え?きたのか?”と思った(笑)。」

──曲頭で吹いているのはほら貝ですか?

セイジ「戦のイメージ。自分でも吹けるけど、あれは違う人が吹いてる。簡単に音出ないんだけど、一度出るようになれば大丈夫。ツアーでは吹くよ。」

トオル「遅刻するとそれで起こされたりして(笑)。」

セイジ「スタッフが買ってくれたのは小さいんだけど、やっぱりデカいのを探してみようかな。小さいとステージ映えしないし。ちゃんと足軽に持ってきてもらいたいし(笑)。」

──「ロボットマリア」は恋人がロボットという設定の、一風変わったラブソングですね。

セイジ「小惑星探査機のはやぶさが地球に帰ってきた時、朝のニュースでオーストラリアにカプセルを落下させた後、成層圏の中で燃え尽きる最後の映像を見て、“本当に大変だったな!”“大丈夫か寒くないか?”“よく傷だらけになって帰ってきたな”と感情移入してしまって。ただの機械相手にそういう感情を持ったことに自分もびっくりしてしまって。だって、扇風機とかと同じただの機械なのにさ。バイクやいろいろなものに愛着心は持っているけど、はやぶさに対するそれは、さらに一段上のものだった。それがきっかけで“人間は機械に対して愛情を持つことできる”と思ったんだ。かつて手塚治虫が描いていた、人間がロボットを愛することって現実としてあるなって思って、この曲のアイデアが浮かんだ。そう遠くないうちにロボットと結婚して戸籍まで取るような男が出てくるなって。」

──「バッティングセンター」はお受験マシンになった子供の歌ですか?

セイジ「田舎にいると、ガチガチに勉強させられて小学校で受験するなんて信じられなくて。バッティングセンターで球に向かって弾けろ、っていう。ムシャクシャする気持ちを打ちのめせ、と。」

──「サファイヤCITY」は具体的な地名は出てこないものの、ギターウルフではお馴染みのご当地ソングのように感じたのですが。

セイジ「その通り。“サファイヤ”というのは競馬新聞を見てたらそういう名前の馬がいて、そういえば手塚治虫の『リボンの騎士』に出てくる名前だし、幼い頃から知ってる名前だなと。それが幼い頃に見た自分の田舎の島根・松江の景色と重なって。歌詞の“秘密の湖”というのは宍道湖で、“9号線”というのも宍道湖の縁を通っている国道。「ガソリン子守歌」と一緒で、田舎から東京に向かう時に抱いていた、くすぶってる焦燥感を歌っている。まさに中学、高校の頃に持っていた気持ちそのもの。」

──曲調的にも冒険してますよね。ギターウルフでマイナーって初めて聴いた気がします。

セイジ「初めてだね。ギターを持って弾き出した時にたまたまマイナーで弾いてたのかな。何か変な感じだな、と思いつつ。で、自然に合わせていったらこんな曲になった。」

──「ゲロナイト」はタイトル通り、ゲロまみれになって酔っぱらった状態を歌っているんですよね。

セイジ「単純に酔っぱらってる時にそういうことってあるよなっていう。気が付いたら誰もいなくなっていて“畜生、何だよ!”っていう(笑)。《女王陛下のゲロ野郎》という歌詞があったからこの曲は成立したんだ。」

──“ゲロ”という言葉の響きとさわやかなギターのフレーズの対称が印象的です。

セイジ「あれはゲロが光ってるんだよ、ビルとビルの間で(笑)。もう動けなくなって夜を彷徨っている様子。側にいたお姉ちゃんもどっかにいっちゃって、気付かないうちにひとりぼっちになってさ。“酔っぱらっても礼儀作法は一流なのに!”って酔っぱらった頭で考えたりして(笑)。」

トオル「みんな退散してそれを追いかけて(笑)。」

セイジ「実際、俺はあまり吐くことはないけど、ライヴの直前には胃を空っぽにするよ。プロレスラーのように。」

U.G「たまにステージ上で吐くのはやめてほしいですよね~。ライヴ中ずっとその匂いしてるんですよ!」

──連鎖的にゲロナイトにならなければいいですが…(笑)。「地球VSエイリアン」はノリが最高ですね。

トオル「他の曲は歌詞を読んで自分なりに“こういう意味なんだろうな”って解釈するんだけど、この曲だけは歌詞のことをあまり考えてなかったですね。ドラムを叩いていてすごく気持ちいい曲ってこともあると思うけど。踊れる曲ですね。」

セイジ「エイリアンは松江にいる自分、地球が東京。今のギターウルフの立場はまさしく地球だけど。」

──ラストの「女マシンガン」は今でいう肉食女子?

セイジ「PUFFYのために書いた曲で、途中のセリフの部分は女の子バージョンもある。俺たちのは男バージョン。自分の気に入った歌詞を書けたので良かったけどね。要は、女が男に向かって“てめえらもっと強くなれよ”という内容。つまり、“野獣バイブレーターになれ”と。」

──振り返ると、タイトルからしてガツンとくる曲ばかりですね。

セイジ「言葉に気合いを持たせないとガツンとこないんじゃないかな。自分の強い思いが入っていないと、人に伝わらないと思うんだ。」

──3月8日から始まる全国ツアーでは、ライヴ当日に未成年と分かる身分証明証を提示すれば1,000円がキャッシュバックされるとか。その名も“ティーンネイジ・キャッシュバック”という。

セイジ「早く十代を狼化、野獣化させないと、ロックが大変なことになる!」

取材:金澤隆志

(OKMusic)


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