2012-11-20
【Plastic Tree】バンドっぽさはちゃんと出せたと思うし、音の質感や曲の細かい表情も表現できたと思う
美しいのに、どこかコワレてる。悲しいのにイカレてる。ダメダメなくせに狂暴。ノスタルジックなのにプログレッシブ…ニューアルバム『インク』は、Plastic Treeというバンドの持つ多面性を凝縮した万華鏡のような一枚。そんな新作について、有村竜太朗(Vo)と長谷川 正(Ba)に訊いた。
──“インク”というタイトルには、どんな思いが?
有村「デビュー15周年っていうことで、デビューアルバムの『Hide and Seek』を録り直したんですけど、一曲目の「痛い青」っていう曲を一番始めに録ったんですよ。その曲の歌詞にも“インク”って言葉が出てくるんですけど、それで浮かんだっていうのがあって。あとは個人的に長くやってるなーって気付かされることがやっぱり今年は多くて。長くやってる分、物を残すって何だろう、とてもいいことでもあるし、でもなんでなんだろうみたいなことも考えたりして。でも、きっと何かを残さないと気が済まないんだろうなぁ、このバンドは…みたいな意識もあって。そういう、“残す”とか、“記す”とか、曲を書くとか、自分の中でインクっていう言葉につながってて。で、なんとなく。」
──記したり残したりするためのツールでもあるし、今の時代的を考えるとちょっと昔のイメージもある言葉ですね。
有村「うん、僕らはやっぱりアナログ感というか…昭和枯れすすきなんで(笑)。まぁ、そういうのもありますし、自分の思ってるバンドを言い表す言葉のひとつでもあるし、歌詞にもよく出てくるっていうのもあるし。あとはもう直感的に、今回滲むような曲が多かったっていうのもあるし。」
──歌詞を担当した曲には、どんな気持ちを込めましたか?
有村「曲によって違いますよね。でも、自分の中で今回ほど曲によって気持ちが違うのもないなぁと思いますね。「ロールシャッハ」とか、「ライフイズビューティフル」とか、すごく自分の中ではパーソナルだし。「インク」とか、「ピアノブラック」とかは、本当に曲に対して色付けしていくっていうイメージというか。なんかこう、ストーリーを付けていくというか。」
──歌詞にしても楽曲にしても、“職業作家ではなく、アーティストとして作ってるんだな”ってことを今回改めて感じましたが。
有村「そうですね。一生懸命作ったモノなんでCD売れればいいなぁとか、曲いっぱい聴いてほしいなぁっていうのは思いますけど、だけど物作りに関しては…このバンドだからこういう曲をやることに意味があるっていうようなことはいつも考えてるし、バンドのキャリアが長い分、余計考えるかな。意味がないものを作ったって、それは別にこのバンドでやらなくてもいいってことになっちゃうから。意味があるものをちゃんと、今まで以上に作りたいなぁ…みたいな。このアルバムを作ってる時も思ったし、たぶんそれが長くバンドをやらせてもらってる一番大きな理由なのかなって思う。あと、世の中にバンドいっぱいいるし、こういうバンドが一個くらいいてもいいのかなぁとか。変なメイクして、こんな曲やって、なんだこれ?みたいな。自分はそういうの好きでやってるから、そこはもう、天寿を全うしたいかなと(笑)。だから、作品も一曲一曲大事に作っていきたいかなって思います。」
──音作りも凝ってますよね。ゾクゾクするような音や、目眩を感じるような空間的なサウンドメイキングが印象に残ります。
長谷川「実際にどういう音を録りたいのかを自分の中でイメージできるかどうかだと思うんですけど、このバンドに関してはそういうところをすごい大事にしてると思いますね。音の質感というか。この曲にはこういうギターが乗っててほしいとか、この曲にはこういうドラムであってほしいとか。曲にとって意味のある言葉、曲にとって必要なものっていうのをみんなで具体的にイメージしながら作っていくことが多いので。ただプレイしてればいいってもんじゃなくて、ちゃんとそういうふうに聴こえてこないと、みんなでうーんってなっちゃって。まぁ、あんまり音響的なものばっかり追求しても、どんどんバンド感がなくなっていっちゃうし。かといって、バンド感を重視するあまり、一発録りでいいじゃんみたいな感じでやるのも、このバンドにとっては違うんじゃないかと。そこのバランスは今回うまく取れたと思いますね。バンドっぽさはちゃんと出せたと思うし、それだけにとどまらず、ちゃんと曲の細かい表情も表現できてると思う。」
──限定盤には『Hide and Seek(Rebuild)』のCDが同包されますが、デビューアルバムを15年後に全曲録り直すって激レアですね。
有村「そうですね。でも、ただライヴテイクを録りましたみたいな感じになっちゃったら止めようなんて思ってたんですけど、やっててすごくワクワクする感じがあって。作品にもう一回今の命を与えるってすごく楽しかったですね。当時のアレンジとか、発想に驚かされる部分もあったし。あぁ、よくこんな発想あったなぁって思ったりとか、今だったらこうしたいなってところが結構あったり。曲の持ち味自体は変わることなく、今の自分たちっていうのを表現できたのが良かったなぁと思います。」
長谷川「ライヴで聴いてた曲たちとは、今回また違った印象で聴いてもらえると思うんですよね。」
有村「もう、イチから…イチからっていうよりゼロから見直して作ってますからね。キーから何から、テンポから。」
長谷川「ただ、作品自体の魅力は失くさないようにっていうのは気を付けましたね。どんどん手を加えていっちゃうと、曲がもともと持ってた良さがさくなってしまうので、そこだけは絶対崩さないように気を付けました。」
──年末には『Hide and Seek』追懐公演も予定されていますね。
有村「その日は『Hide and Seek』を全曲やるし、それが完全に中心になるので、聴き込んで来ていただければ嬉しいですね。」
──他の3公演、『ゆくプラくるプラ』はどんな内容に?
長谷川「今年の総括です。こういう作品作りを経てきたPlastic Treeというバンドが果たしてどうなっているのか(笑)。」
有村「長いレコーディングの果てに…」
長谷川「すっかりストイックな人たちになってたりして。椅子に座って演奏してたりとか(笑)。」
有村「ぜひ、確かめに来てほしいですね(笑)。」
取材:舟見佳子
(OKMusic)
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