2013-12-20
【D'ERLANGER】ライヴがなかったらD’ERLANGERというバンドは生きていない
ツアー『D'ERLANGER TOUR 2013 #Sixx』の最終公演をシューティングしたライヴDVD&CD。尋常ではない熱量を持ったアルバム『#Sixx』を携えて行なったツアーだっただけに、当然のように途轍もない衝動が詰まっていた。言い換えればそれはD'ERLANGERの現在のバンド感なのだろう。そのあたりのことをkyo(Vo)に語ってもらった。
──アルバム『#Sixx』を引っ提げてのツアーのファイナル公演を収録した、ライヴCD『#Sixx -Discordantly-』とライヴDVD『#Sixx -Flick-』が発表されたわけですが、まずツアーの感想からうかがいたいのですが。
「アルバムを引っ提げてのツアー自体がすごく久しぶりだったし、ワーナーに移籍したということもあって、感触が違ったというか…とにかく、アルバム自体にすごく初期衝動があったので、ライヴライヴしたツアーでしたね(笑)。本数も多かったし、いい意味でみんなが調子に乗っていく感じが音に表れていたし、そういったところがすごく面白かったです。」
──パッケージされたのは最終日なのですが、そのライヴはいかがでしたか?
「本当に今回のツアーって楽しくて、バンドが転がるように勢い付いてる感じがあったので、最終日を迎えるのが寂しい気持ちもあったんですね。確か、台風が来たんですよ。で、開演時間を遅らせたりして。そういったハプニングもひとつのドラマを作る要因のような気がして、それさえも楽しめました。って言ったら来れなかったお客さんにおこられそうだけど。動員も一番ありましたし、一番大きな場所ですし、お客さんの反応もすごく良かったので、とにかく気持ち良かったです。」
──『#Sixx』の完成形がそこで出来上がる感じもありました?
「うなんですかね? 毎回毎回そう思ってるんですけど、ライヴでやるとまた変わってきたりするので。でも、『#Sixx』のツアーとして、あのアルバムの今のひとつの答えっていうところなんでしょうね。それゆえのライヴCDっていうところにもつながってるんだと思いますし。」
──ライヴDVDを観ていると、最初の音が鳴った時にステージに緊張感が走る瞬間があって、その時点から鳥肌ものでしたよ。
「僕もいつも鳥肌立ってます(笑)。メンバーさえもそういう緊張感を持てる、そういう音の共有の仕方ができるバンドってそういないと思うんですよ。メンバーがそこを楽しんでやっているからこそ、そういうふうに伝わるのかなと思いますね。僕もDVD編集の時に映像を観ていてゾクッとしましたからね。“うわー、この中でよくひと言目が出るね”って思う時もありますよ(笑)。」
──復活の後のD'ERLANGERってライヴDVDをほぼ年1枚のペースで出しているじゃないですか。それだけ充実したライヴができているということでもあるのかなと思うのですが。
「特に今回に関してなんですけど、ワーナーに移籍したということで、ワーナーのスタッフが初めてツアーに付き合ってくれたんですね。で、すごく嬉しいことに、“D'ERLANGERはやっぱライヴだ”と。ライヴのあの感じを伝えたいからCDも出したいっていうふうに言ってくれたんです。それは僕たちが思ってる一番の魅力…D'ERLANGERはライヴで輝くってところが伝わってるっていうことだと思うんです。」
──そう思わせるライヴをやってるということですよね。D'ERLANGERのライヴって独特の緊張感や緊迫感がありますからね。
「そうなんですよねー。突然“そんなことリハでやってなかったじゃない!”っていうこともあったりするし(笑)。ライヴって発表会ではないので、練習通りにできたからうまくいったねっていうものではないと思うんですね。まさにそれがD'ERLANGERのライヴであって…結構リハとかね、あまりやらないんですよ。当日のサウンドチェックも本当に少ないんです。それはなぜかって言うと、その瞬間の音を楽しもうとしてるんだと思うんです。お互いに“何を出す?”って受け止めようとしてるところがあって音になっているので、それがD'ERLANGERというバンドのライヴの音になっているんじゃないかなと思いますね。気持ち良いと“ウオー!”ってなるじゃないですか。そういうものが音に出やすいバンドというか(笑)。」
──確かにD'ERLANGERってそういうバンドですよね。だからなんでしょうけど、D'ERLANGERはインディーズの頃から観てますけど、いつも“今が一番カッコ良い”と思わされるんですよ。それこそセットリストに「LA VIE EN ROSE」とかの昔の代表曲的なものが入ってなくても満足するというか。
「そこはね、メンバーのくせに僕もファン的な目線ですげーなと思ってます(笑)。僕なんかは、もうちょっと昔の曲をやってもいいかなって思うタイプなんですけど…でも、そうなんですよね。今だけできちんと勝負ができる。」
──だからこそ、ライヴ…バンドもそうなんでしょうけど、すごく充実してるんだろうなと。
「そうですね。ベテランと言われるキャリアにはなってますけど、あんまりそういう感覚はないんですよ、自分たちの中では。今の場所にいて、“D'ERLANGERができてるから僕たちはハッピーです”とも思ってないし。もっとD'ERLANGERを届けたいと思うし、D'ERLANGERでもっと大きなステージに立ちたいっていう欲がすごくありますからね。それこそ昔の曲だけでライヴを構成して、そんなに無理のないスケジュールでやっても成り立つんでしょうけど、それだとD'ERLANGERをやる意味がない。だから、決して僕たちは昔作った財産だけで活動してるわけじゃないっていうところが、今回の作品だったり、活動内容に出てるんじゃないかなと思います。…まぁ、こういうことは口にしなくていいんだろうけど(笑)。」
──そんな今回のライヴCDは『#Sixx』の曲順通りに並べていますが、このアルバムの進化系をかたちにしたという感じですか?
「ぶっちゃけて言うとですね、これがなぜそうなったかっていうのは僕はあまりよく分かっていないんですよ(笑)。でも、ワーナーのスタッフが感じてくれているD'ERLANGERの魅力っていうのが、同じ曲順にすることによってよく分かるっていうか。ライヴになるとこれだけ魅力が広がる…“やっぱりD'ERLANGERってライヴなんだよ”っていう想いがこういうパッケージになった答えなんじゃないかなと思いますね。CDだけを聴いても『#Sixx』の曲しかないのに、それだけでちゃんと満足して帰れるライヴになっているというか。」
──もともとスタジオ版がすごいエネルギーを持っていただけに、ライヴになるとこれだけ爆発するというのも分かりますしね。
「どんな40代だ!って思いますよね(笑)。スタジオ版の時点ですげーなと思うんですよ、本当に。それをライヴだと超えるわけじゃないですか。すげーなと思いますよ。だって、“酒ばっかり飲んで寝てないでしょ”っていうメンバーもいたりするし(笑)。でも、ライヴだとこうなるんだからすげーなって。それがあるからこの音なんだろうなってのも思いますね。」
──まさしく! では、そんなD'ERLANGERにとってライヴはどういうものですか?
「D'ERLANGERという生命体を生かす上で必要なものですよね。多分ライヴがなかったら新曲も作らないだろうし。呼吸みたいなものなので。ライヴがなかったら、D'ERLANGERをやってないかもしれない。やってないというか、D'ERLANGERというバンドは生きていない。」
──その感触は、今と昔とで違っていたりします?
「あー。実は今回のツアーですごくそれを感じたところがあって。前まではD'ERLANGERのkyoというものを作り込んでいた部分があったのかもしれないです。MCの雰囲気だったり、佇まいだったりとかっていうところを含めて。まぁ、演じようとしないとああはなれないんですけどね。自分で言うのもあれですけど、どっちかって言うと俺、穏やかな性格だし(笑)。でも、必要以上にしなくていいっていうか…なんて言うのかな。今回、すごくナチュラルに楽しんでる自分がいたんですよ。きっと自分のキャリアを振り返った時に、今回のアルバムとツアーはターニングポイントになるんじゃないかなって思うくらい、自分の中で吹っ切れたっていうのも違うし、開き直ったっていうのも違うし、なんか感覚的にふっと変わって、ガシッとハマった部分があるんですよ。それだけツアーが楽しかったんですよね。もうね、地方に行けば行くほど盛り上がるんですよ。やっぱりライヴって盛り上がるとが自分たちも楽しいですからね。」
──ライヴDVDの特典映像で地方の様子がカットインされていくシーンがありましたけど、盛り上がりがハンパないですよね。
「暑苦しいですよね(笑)。あの特典映像を観た時も、そんなに凝った編集じゃないんだけど、ツアーの醍醐味が伝わるような編集だったから、そこにもスタッフのD'ERLANGERに対する愛を感じたし、そういったところで今、バンドもライヴも全部充実してるなって思いますね。」
──今回のライヴCDとDVD作り終えて、今のテンション感はどんな感じですか?
「僕はやってた側なので、改めてCDを聴いて、DVDを観た時に、“D'ERLANGERのkyoというシンガーは充実したツアーをやってたんだな”というふうに思うんですね。それに尽きます。このエネルギーは次に必ずつながりますからね。新曲の話なんて1回もしてないですけど、新しく生まれる曲だったり、新しくするライヴやツアーだったりにどうつながるのかなっていうのが楽しみです。『#Sixx』のひとつの完成形…もしかするとフィニッシュなのかもしれないけど、また始まりでもあるしっていう。そういう作品なのかなと思います。だから、次に自分がどう弾けるのかすごく楽しみ…どんどん頭で考えなくなってるので、そこが楽しみです。」
取材:石田博嗣
(OKMusic)
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