2016-06-28
acid android、ワンマン2公演で魅せた濃密な音世界とは
単なる第二弾ではやはりなかった。この4月に2016年の活動を本格的に始動させて約2ヵ月。L'Arc〜en〜Cielのドラマー・yukihiroによるソロ・プロジェクト“acid android”が早くも次なるライヴ「acid android live 2016 #2」を名古屋・東京の2都市にて敢行、まるで趣の異なるステージでその世界観の厚みを見せつけた。
初日となった6月23日は2012年11月以来、実に3年半ぶり、しかも3ピース編成の現体制となって以降まだ2回目の名古屋公演とあって会場のElectric Lady Landには待ち焦がれた期待と緊張感とが交錯した異様な熱気が渦巻いていたが、ひとたびライヴがスタートするや、タイトなバンド・アンサンブルと打ち込みのトラックが絶妙に融け合った現在進行形のacid androidサウンド、端正かつ緻密に構築された音世界に陶然と惹き込まれていくのが目に見えてわかる。
今や激しさに特化せず、むしろ1曲1曲に宿る意志あるいは物語に同化して全身でそれを体現するyukihiroの歌としなやかなパフォーマンスはフロントマンとしての存在感をより鮮烈に印象づけたに違いない。“#1"同様、ドラムに山口大吾(People In The Box)、ギターにKAZUYA(Lillies and Remains)を擁したサポート・メンバーの演奏も前回以上に精緻に噛み合い、力強くyukihiroを支える。
名古屋、東京とセットリストはほぼ同様だが、名古屋公演のみ「purification」が披露された。3年半のブランクを考慮し、より明確に今のモードを標榜する狙いもあったのだろう。ピアノの音色をフィーチャー、ひときわ情感豊かにリアレンジされた音像にyukihiroが求めるacid androidの輪郭の一部を垣間見た。
明けて6月24日、迎えた“#2"の2日目の東京公演、渋谷duo MUSIC EXCHANGEは視覚的要素を大胆に取り入れた実験的かつ創造性に富んだステージで詰めかけた700人を魅了。昨日の名古屋公演とも、生々しい昂揚に包まれた“#1"とも違う、acid androidの音楽表現におけるまた新たな側面が前面に押し出されたライヴとなった。
会場に足を踏み入れればまず入口近くにacid androidをモチーフにしたアートワークが展示されたギャラリー・スペースが目に飛び込んでくる。2階席最前列の柵の下、1階フロアからぎりぎり手の届かない壁部分は黒のビロード布で覆われ、さらに無数のバッヂが飾られており、よく見るとそのひとつ一つにacid androidの楽曲名が記されていた。また、ステージ上には常設のスクリーンを挟んだ両サイドに真紅の幕が帯状に3本ずつ配され、見渡せば空間全体がacid androidをコンセプトにスタイリッシュにまとめあげられている。この時点で今日のライヴがただならないものだろうことをオーディエンスに予感させるが、待ち受けていたものはそうした予想を遥かに上回っていた。
場内が暗転した次の瞬間、同時に真っ直ぐに伸びたトンネルがスクリーンいっぱいに投映され、直後、次々に映像が切り替わってゆく。めまぐるしく視覚を刺激する暗喩的な映像に差し挟まれてyukihiroの横顔や手元が映し出されるたび、フロアは凄まじいどよめきと歓声で沸き返った。映像に並走して流れるacid androidのテクノ・インスト曲「instrument only」(ミニアルバム『code』収録)が熱狂をさらに増幅させる。6分近くにも及ぶオープニングの終盤、山口とKAZUYAがまずステージに登場すると歓声はさらにボリュームを上げ、映像の中のyukihiroがマイクを握るラストシーンと入れ替わるように本人が姿を現わすや、オーディエンスの狂騒は早くも最初のピークに達した。
不穏を秘めた重いディストーションに呼応して鋭い波形が収縮と拡散を繰り返した「double dare」、楽曲から立ちのぼる切々とした願いや揺らいでは千々に乱れる感情が美しくもサイケデリックな色彩に反映した「new song #1」。4月の公演で初披露された「new song #2」ではダイナミックに蠢くアブストラクトなモチーフが曲の持つドラマティックなスケール感を倍増、「the end of sequence code」では幾何学模様の無機質さがより挑発的にオーディエンスを煽るなど、映像とのコラボレーションによって加わる新鮮なイメージにも目をみはらされる。
もちろんacid androidの軸は確固として音楽であり、それだけで十二分に成立し得るものだ。もっと言えば映像やその他のアプローチによって楽曲のポテンシャルが引き出されたり、何かしらの価値が付与されたりするものでは絶対的にないだろう。むしろその音楽が揺るぎないからこそ、それに触発されて生まれた他ジャンルの表現との邂逅がまったく新しい世界を作り上げて、観る者に驚きと感動をもたらすのではないだろうか。acid androidが有する確立された強さを改めて知った夜でもあった。
「let's dance」に始まり、「new song #3」で結んだ全16曲。演奏曲やライヴの流れ自体は“#1"をほぼ踏襲したものだが、アッパーに熱狂を加速させた前半戦、ミディアム・テンポのナンバーを畳み掛けてacid androidの“今"を存分に知らしめた中盤ブロック、怒濤のアグレッシヴ攻勢でフロアを興奮の坩堝と化した後半戦と、ステージ展開はこれまでにも増してメリハリを感じさせるものだった。前半戦の締めである「intertwine」、後半戦の口火を切った「balancing doll」と前回にはなかった楽曲が“#2"ならではのグルーヴを生み出し、「intertwine」では抑制が利いてなお疾走感のある山口のリズム、「balancing doll」ではKAZUYAが刻む骨太なギター・リフがそれぞれに推進力となってフロアを恍惚と踊らせていたのが印象的だ。
終始、前のめりにオーディエンスを圧倒していたyukihiroだが、マイクスタンドを用いて歌に意識を集中させていた中盤ブロックと、寂寥感を滲ませてロマンティシズムを貫いたラストの「new song #3」にこそ本領が発揮されていたと思う。聴かせる姿勢がもっともアグレッシヴに感じられる、それが現在のyukihiroであり、acid androidの真価だ。
「どうもありがとう」
「acid android live 2016 #2」を締めくくるたったひと言が、また次を渇望させる。8月に控えるは“#3"、これを見逃すわけにはいかない。
Photo by 岡田貴之
Text by 本間夕子
■【「acid android live 2016 #2」 6月24日(金) セットリスト】
1.let's dance
2.imagining noises
3.daze
4.gamble
5.intertwine
6.double dare
7.unsaid
8.new song #1
9.swallowtail
10.new song #2
11.balancing doll
12.egotistic ideal
13.the end of sequence code
14.violent parade
15.violator
16.new song #3
■【ライヴ情報】
acid android live 2016 #3「acid android in an alcove vol.8×THE NOVEMBERS PRESENTS 首」
8月11日(木・祝) 川崎club citta'
open 17:00 / start 18:00 close 22:00(予定)
<live act>
acid android、THE NOVEMBERS
<dj act>
石野卓球
<special session>
g:土屋昌巳、vo:KENT(Lillies and Remains)、B:高松浩史(THE NOVEMBERS)、key:TOM(PLASTICZOOMS)、dr:yukihiro
「acid android live 2016 #3」
8月19日(金) 大阪 BIG CAT
open 18:15 / start 19:00
【関連リンク】
acid android オフィシャルHP
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